2023年1月16日月曜日

「働かない○○」と言われるシニア世代の働かせ方、活かし方

「働かないおじさん」が、中高年男性のお荷物社員を指す言葉として、定着してしまった感があります。

大した仕事をせずに会社に居座っているように見える存在が、若手社員の士気を下げていると問題視されますが、当事者となる世代の人たちから直接話を聞いていると、そこまではっきり開き直っている人に出会うことはほとんどありません。多くの人は真面目にきちんと仕事をして、何らかの貢献をしたいと考えています。

そんな本人たちは、自分のスキルの陳腐化や時代遅れ感は認識していて、自分なりに改善する意思はありますが、その一方で、具体的に何をしてよいのかがつかみきれていないところがあります。また、仕事をしたい、貢献したいという気持ちを持っていても、その機会が与えられない、期待もされていないということで、気持ちをなえさせていたりする様子も見られます。

 

このすれ違いを縮めることができれば、働き手と会社の双方にとって好ましいはずですが、そんな状況を整理して書かれている記事が目に留まりました。

ベストセラーとなった「ワークシフト」「リデザイン・ワーク」などの著者であるリンダ・グラットン氏による、「働かないおじさんが即戦力になる一石二鳥の真実」というタイトルの記事です。

 

ここでの指摘は、中高年の働き方が若者重視で逆に画一化してしまっているのではないかというものです。

老いや生産性に関する固定観念にとらわれるあまり、60代以上の人たちの機会を狭めていないかという点と、新しい働き方のモデルでは、20代や30代のニーズや願望ばかりに目を向けているため、50代以上の人たちのニーズや願望を軽んじているのではないかという点を指摘しています。

 

人間の知的スキルには、年齢を重ねるにつれて、長年かけて蓄えられる知見や人的ネットワーク、知識や知恵、戦略である「結晶性知能」と、情報処理や記憶保持、演繹的推論を行う能力である「流動性知能」の二つがあり、どちらに強みを持っているかは、人生を通じてたえず変わり続けるものとしています。

10代後半であれば、計算や物事のパターンを見出したりするスピードが速いかもしれないし、30代であれば、短期記憶が最も強力な時期かもしれません。それが40~50代になると、他者理解の能力が最も高まるそうです。

「人は何歳でもある種のことが上手になりつつあり、ある種のことが下手になりつつあり、ある種のことに関しては伸び悩んでいる。ある年齢ですべて、あるいはほとんどの能力が頂点に達することはないだろう」という指摘がされています。

 

こんなところから、年長の働き手は、職場で自分たちの「結晶性知能」による知恵やノウハウを提供する役割を果たすことができ、経験が少ない若い社員でも、これをいつでも使うことができるようになるため、「若い社員」と「年長の社員」を組み合わせるような仕事のデザインが、最も生産的ではないかと言っています。また、「流動性知能」のスキルを持った若手が不足している業種でも、この年長者の役割は特に大きな価値を持つとしています。

「年長社員に活躍できる場を提供すれば、貴重な戦力になると考えるのは決して絵空事ではなく、彼らは若い人たちにはない知識やスキル、人脈をたくさん持っている」と締めくくられていました。

 

私の同世代は、ちょうど定年に差し掛かる年齢であるため、知人友人の多くが仕事環境の変化に遭遇し始めています。中には仕事をリタイヤする人もいますが、ほとんどの人が仕事を続け、企業勤務であれば元の会社に残る人がほとんどです。

ただし仕事の中身や処遇は千差万別で、まったく条件が変わらず仕事を続ける人がいるかと思えば、給料が下がる、雑務ばかりの仕事になるなど、あまり戦力とは見なしていないような対応も見られます。それでやる気を出せと言われても、やはり難しいものがあるでしょう。

 

年長者の「結晶性知能」をいかに埋もれさせずに活用するかは、これから多くの企業が取り組むべき課題のように感じます。

 

 

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