2018年2月21日水曜日

初心者を教える時ほどプロセスを見なければならない



ある学習指導教室の先生ですが、小学校低学年くらいの子供たちも教えています。この先生はその子供たちが課題をやる時のプロセスをとても良く見ています。
典型的なのは「漢字の書き順」で、これは結果だけ見てもあっているかどうかは絶対わかりません。きちんとその子が作業している様子を見て、違っていたらその場で指摘しなければなりません。
一度言ったからといって頭では理解していても、見ていないとまた自分が楽で慣れた元の間違った書き方に戻ってしまいます。繰り返し指導して直ったことまで確認しなければなりません。

ただし、先生の中にはそこまで細かく見ようとはしない人がいるそうです。理由は単純に面倒だからだろうということです。
子供たちというのは初めは単に間違って覚えているだけで、早いうちに指摘すればすぐに直せますが、それをずっと見逃して癖になって身についてしまうと、そこから直すのは大変になります。ここで、間違っている子供たちが、細かくプロセスを見ない先生につくと、直すことが難しくなる子供が増えてしまうことになります。
直すことに時間がかかるということは、それだけ他のことを学ぶ余裕がなくなるということで、いろいろな意味でどんどん遅れて行ってしまいます。とにかく「初めのうち」に「きちんとプロセスを見ること」が大切だとおっしゃっていました。

これを企業での教育に当てはめてみるとどうでしょうか。たぶん「新人教育」が一番基礎なので、そこでしっかりプロセスをチェックして学ばせるのが一番効率は良いでしょう。
ただ、「新人教育」で教えるよりも、もっと基礎の礼儀や言葉遣いなどの場合、もうすでに間違ったものが身についていると、それを直すのは大変です。だいたい企業の教育担当はこのあたりを嘆くことが多く、「小学校とか家庭とかで、もっと子供の頃から教えておいてほしい」などといいます。

この話は、企業で聞くと「学生のうち」と言い、大学教授に聞くと「高校生以下で」と言い、高校の先生は「中学以下で」、中学では「小学校で」、最後は「家庭で」となっていきます。みんな自分たちのところに来る前にやっておいてほしいということです。

ただ、そうやって人にせいにしていても何も変わりませんから、結局はその時の当事者がやるしかありませんが、やはりここでも「プロセスを見ない指導者」が出てきます。能力があって基礎がすでに身についている人を細かく見続ける必要はありませんが、中には基礎がない人もいます。それは社会人にも当然います。

まっさらな状態で来る人は、きちんとプロセスを見て基礎から教えれば、もちろん能力差はありますが、ある程度効率よく身についていきます。しかし、プロセスを見ないで放置していると、俗にいう「下手を固める」の状態になります。直すのに時間がかかり、場合によっては直せなくなることもあります。

最近思うのは、この「プロセスを見ない指導者」がいろいろなところで増えていることです。これはもちろん会社でも同じです。他人のことにはあまり立ち入らないという個人主義的な感覚のせいかもしれませんが、初心者を教える時ほどプロセスに立ち入って見なければなりません。それができない人は、少なくとも初心者の指導には向いていないということになります。

幼児、新入生、新入社員などの初心者を教えるには、指導者を誰にするかという選択が、実は非常に重要です。プロセスを見る根気がある指導者を選べば、その後のことが効率よく身につくようになります。何事でも指導者の人選は大事です。


2018年2月19日月曜日

「自分の都合」ばかりの人に足りないもの



最近、別々の人から続けて「自分の都合ばかり」と思ってしまうことに遭遇しました。どちらも仕事の話ではありません。

一つは「ある作業をやってほしい」という話でしたが、別に私がやる必要はなく、私にとってプラスになることは何もありません。しいて言えば、この依頼をしてきた相手の機嫌が良くなる程度のことです。
もう一つは、「いつまでに品物を送ってほしい」という期限に関する話でしたが、その品物はまだ私が使っているもので、相手に急いで渡すメリットはありません。

「それくらいやってあげればよい」「心が狭い」と言われるかもしれませんが、どちらの人ともいつもこの調子で、他人に何かしてもらうのは当たり前だという態度で接してきます。自分が何かを返そうという気持ちはなく、たいして感謝されないことがわかっているので、あまり相手にしたくありません。

これが仕事であれば、条件の問題はあったとしても、必ず報酬があり、100%のWin-Loseの関係に陥ることは、ほとんどないと思います。
それでもお互いの力関係が違い過ぎると、一方的なサービス、ディスカウント、その他無理な要求をされることはあります。また、そういう要求をしてくる人は、だいたいいつも同じだったりします。

こういう人たちのことを、よく「相手目線が足りない」といいます。確かにその通りで、相手の立場を考えること、相手の気持ちになることは大事なことです。
ただ、もしかしたらニュアンスは似ているのかもしれませんが、私はこういう人たちを「想像力が足りない」と思っています。

「相手目線」というのは、一般的には相手の立場と自分の立場を置き換えて考えますが、感じ方や判断基準には個人差があり、そこが違っていると、必ずしも相手の気持ちが理解できるわけではないということになります。

これに対して「想像力」は、置き換えるというよりは、相手の立場や気持ちを想像するということになります。自分は違うけど、相手はこう思うのではないか、こう感じるのではないかということに思いを巡らせることができます。

「自分の都合」をしっかり主張することは必要です。しかし、そこに相手に対する「想像力」が働いていなければ、強引に抑え込みでもしない限り、その主張が受け入れられることはありません。
さらにこれを同じ部門やチーム内でおこなわれると、メンバー同士の関係は悪化し、チーム力は大幅にダウンします。

相手に対する「想像力」が欠けていると、駆け引きも協調もうまくできませんから、ビジネスは成功せず、人間関係でも信頼を得られず、結局損をするのは自分です。
相手を尊重する、気遣うといったきれいごとばかりでなく、自分のためにも相手に対する「想像力」を働かせる必要があります。


2018年2月16日金曜日

スポーツに学ぶ「外部要因による有利不利」を減らす工夫



平昌冬季オリンピックが開幕し、連日競技がおこなわれていますが、特に屋外競技では低温と強風の気候のせいで、かなり苦労があるようです。

もともとがそういう気候の土地柄のようですが、スノーボードのある種目では、強風の中で競技が進められ、全25選手中20人が転倒するという状況だったといいます。
陸上競技のように一緒に走った選手の中で順位を決めていくならば、みんな同じ環境なので問題はないでしょうが、冬季五輪の屋外競技は、順番に滑って採点するようなものが多いので、その時の環境に左右される部分が大きくなり、偶然の要素による有利不利が出てきます。

そんなことが気になって、競技の進行の様子を見ていると、どの競技でもやはり一番気にしているのは風の状態で、例えばスキージャンプでは向かい風有利で追い風不利、スタート位置が高いと有利ということがはっきりしているので、それぞれの採点で、有利な条件は減点、不利な条件は加点するルールが決められています。
他でも風の状態を見て競技委員がスタートを待たせたりしていて、極端な有利不利ができるだけなくなるように配慮しています。

これがテニスでは、ニューボールはサーバー有利ということで、ボールを交換するタイミングが決められていますし、用具を使う競技では必ずその規定が決められています。極端な不公平を防ぐということが大きいでしょうが、競技の本質を損なうという懸念もあるでしょう。やはり用具の性能の違いは外部要因の一種といっても良いと思います。

同じように外部要因の違いをどう扱うかという問題は、企業の中でも起こります。多くは社員の評価に関わるところで、例えば営業職であれば地域の違い、顧客の違い、景気動向の違いなどがあります。大口顧客とそうでない顧客、手間がかかる顧客とかからない顧客、顧客が多い地域と少ない地域などの様々な環境があり、営業活動の労力や難易度は大きく違います。たぶん売上目標などで調整したり、その他の部分で配慮したりするのでしょうが、それでも結構大きな有利不利が温存されていたりします。「数字がすべて」といってそんな配慮は一切しないという会社もあります。

全員がまったく同じ環境になることはないので、ある線以上の有利不利は見切るしかなく、それはスポーツでも会社でも同じですが、少し違っていると思うのは、スポーツの世界の方が、勝ち負けやパフォーマンスの有利不利につながる外部要因を、可視化しようという姿勢が強いということです。

確かにスポーツの方が対象が単純で見えやすいということがあるかもしれませんが、先ほどのスキージャンプでも、風には配慮するけれども雪質へのアジャストは選手の責任、それ以外の用具を使う競技でも、基準は決めるがそれに合わせるのは選手の責任など、最も有利不利に影響するものだけを見極めて、それに対する対策を中心にしています。複合する要素をなんでもかんでも調整しようとはしていません。

これに対して企業では、有利不利に影響する要素は認識していても、その中で最も影響が大きなものがどれか、その影響はどのくらいあるのかというところまでは見ていないことがほとんどです。
様々な要素が複雑にからみ合っているとして、一つ一つの要素は見ずに「ここは楽」「ここは大変そう」など、全体を主観的に見ていることが多いです。それは一つ間違うと不公平を助長することになりかねません。

会社での評価で「外部要因の有利不利」を反映しようとしたとき、スポーツの世界でやっているように影響する要因を絞って可視化することは、ずいぶん参考になると思います。
まずは最も影響が大きい要素を定め、その影響がどの程度かを考えることが始まりではないでしょうか。