2015年6月1日月曜日

「みんなそう思っている」と言われたリーダーの思い込み


ある会社の社内ミーティングに、たまたま同席していた時のことです。

仕事の進捗状況の確認をしている際に、リーダーがあるメンバーのことを、かなり厳しい口調で叱責し始めました。私が見ている限りでは、別に仕事上の進捗遅れがある訳でもなく、ごく一般的な話の流れの中からだったので、何がきっかけだったのかがよくわかりませんでしたが、俗にいう、“キレた”に近い様子の言動です。

そして最後に一言、「みんなそう思っているのを、俺が代わりに言っているんだ!」と言います。
私もコンサルタントとして同席している立場上、その場では、「原因はともかく、この場でその言い方は問題だ」ということをリーダーに伝え、後であらためて話を聞いてみることにしました。

リーダーによると、叱責を受けたそのメンバーは、仕事はそれなりにできるものの、先輩や同僚からすると、ちょっと生意気に見える態度や行動を取ることが、よくあるのだそうです。

リーダー自身は当初それほど気にしていませんでしたが、ある日配下のサブリーダーの一人から、「そのメンバーの態度や行動は問題である」「周りのメンバーはみんな自分と同じように、苦々しく思っている」という話をされ、何とかしてほしいと言われたそうです。

そう言われるので、気にして観察していると、確かにそんな様子に見えなくもありません。サブリーダーは相変わらず「アイツは問題だ!」と繰り返し言ってきますし、そういう話を何度も聞いていると、「みんなそう思っている」と言われたこともあって、自分の中でも徐々に問題意識が強くなっていったそうです。
自分がリーダーだからという責任感もあって、冒頭のミーティングでの「みんなの代わりに言っている」という発言になったようでした。

この話を、他のメンバーたちに、あえてストレートに聞いてみました。
するとみんな、“あれはそういうことだったんですね”と言いながらも、
「確かにそういうところはあるけど、別にそれほど気にはならない」
「仕事はちゃんとしてますしね」
「いいんじゃないですか、生意気なところがあるくらいで」
など、“みんながそう思っていた”とは、ちょっと違う状況です。

さらに、
「サブリーダーの○○さんは怒ってましたけどね」
「リーダーからも尋ねられたので、“そんなところはありますね”とは言いましたが、それほど問題とは思っていませんでした」
という話も聞きました。
 
どうも、あるサブリーダーが個人的に抱いていた不満が、“みんなそう思っている”との言葉で増幅されて、リーダーもそう思い込んでしまい、結果的にはピント外れの強い叱責になってしまったようでした。

単にコミュニケーション不足と言ってしまえばその通りですが、特に人間関係にかかわるような話で、この「みんなそう思っている」というような、いかにも世論を背景にしているかのような言い方には注意が必要です。
今回の件でも、リーダーは一応自分なりの情報収集はしたようですが、“信頼しているナンバー2クラス”のサブリーダーからの話を、わりと鵜呑みにして思い込んでしまったことが問題でした。

人のうわさ話のようなことは、こんな仕事上のオフィシャルな場面でも起こります。リーダーの立場として、こういう思い込みに陥らないようなコミュニケーションを、十分に意識していく必要があると思います。


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