2015年9月16日水曜日

株式公開ブームの中で「上場しない有名企業」から感じた信念



今は空前の株式公開ブームなのだそうです。年間の公開件数は5年連続で増加し、昨年は90社に達したそうです。インターネット関連ビジネスを展開するベンチャー企業が、この件数を押し上げているとのことです。

IPO関連のセミナーなどで、こういった株式公開をしたばかり経営者のお話を聞くことがありますが、皆さんがおっしゃるのは、資金調達のメリットともに、会社の認知度向上、社会的責任や社会の公器としての取り組みであり、経済活動を活発化させて、国、地域、顧客、投資家など、すべてのステークホルダーに利益をもたらす一環として、IPOはどうしても必要なことだとおっしゃいます。皆さん立派な経営者ばかりです。

その一方で、上場していない有名企業も存在します。ネットで少し調べただけでも、たくさんの企業名が出て来ます。サントリー、YKK、竹中工務店、JTB、佐川急便、ロッテ、小学館、エースコック、ヤンマー.、ダイソーなど。海外でも、イケア、レゴ、ロレックスなどは非上場企業だそうです。

つい先日も、ソフトバンクの孫社長が、自社買収による非上場化を検討していたが断念したという話題がありました。同社の株価は将来の成長性を十分に織り込んでいないと考えていて、非上場となることで、機動的に事業戦略を進める狙いがあったとのことでした。
 
非上場の有名企業の方からお話をうかがえる機会は、それほど多くはありませんが、それでも何社かの社長の講演などを聞いたことがあります。そこではやはり、株主から経営に口出しをされる、借り入れによる資金調達の方が安上がり、敵対的買収のリスクといった株式公開のデメリットをおっしゃいます。
ただし、企業の社会的な責任に関しては、公開企業と同じように、とても強く意識しています。こちらも立派な経営者の方々ばかりです。

このように、上場、非上場のどちらが良いとか悪いとか、社会的責任を果たしているとかいないとか、一概に言えることではありませんが、最近の風潮として、どちらかといえば、株式公開を目指すことが、企業を発展させるためには当然のことであるような雰囲気があります。
一般の感覚から見ても、有名企業は上場している方が圧倒的に多いことは間違いありませんから、やはり公開によるメリットの方が大きいと捉える経営者の方が多いということなのでしょう。

ただ、私がこの希少価値でもある非上場の有名企業の方々からお話をうかがう中で、どの会社からも共通して受ける印象があります。それは、自分たちの理念やアイデンティティ、存在価値、独自性といったことへの意識が、ものすごく強いということです。

理念や独自性といったことは、公開していようといまいと、どんな会社でも重視していることだと思いますが、そのこだわり具合や社員への浸透度合い、そのための取り組みの徹底度合いといったことが、まったく違うように感じるのです。
皆さんが、自分たちの理念や、事業に対する考え方、行っている取り組みについて、本当に自信満々に語ります。

逆に公開企業なのに、このあたりを語らない会社がありますが、やはり投資家や金融機関といった社外の第三者に、特に資金面での主導権を握られている会社は、あまりはっきりと自分たちの主張をしないように思います。

このところ、上場を利益確保のためだけととらえ、上場によって不正な利益を得ようとする行為を揶揄した「上場ゴール」という言葉があるそうです。
組織作りの考え方はいろいろあったとしても、そんなゆがんだ株式公開だけは、絶対にあってはなりません。

公開企業が増えることで、経済が活性していくならば、それは良いことだと思います。
ただ、あえて株式公開をせずに、自分たちのポリシーを強く持ちながら、自力で成長してきた企業の方にも、私はついついシンパシーを感じてしまいます。


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