2015年9月7日月曜日

「褒めることばかりで良いのか」という疑問に対する一つの答え


人を育てる上で、「褒めることが大切」ということは、多くの人の意識の中で定着が進んできたと思います。またそれと同時に、実際に褒めることの難しさを訴える人も増えてきたように思います。

企業で人材育成にたずさわる人たちや、リーダークラスの人たちが良く言うのは、「褒めることが大切なのはわかるが、それが逆効果になることもあるのではないか」ということです。“褒めて育てる”ということが強調されるあまり、「ただむやみに褒めることで良いのか」という疑問です。

これはウソかホントかわかりませんが、「私を褒めて育てて下さい」と発言した新入社員がいたという話もありました。もしもそんなことがあったとしたら、“これで良いのか・・・”と考えてしまうのは当然だと思います。

そんな悩みに対して、最近見ていたテレビ番組に、このあたりの捉え方のヒントになりそうな話がありました。
「奇跡のレッスン」というNHKの番組で、現在フットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴ氏が、ある少年サッカーチームの指導をしていた中での言葉です。 

ロドリゴ氏は、“どこまで褒めればよいのか?”という問いに対して、

「ルールと規律を持って接すること、褒めるタイミングとバランスが大切であり、褒めすぎても効果はあまりない」
「褒められることが当たり前になると、子供は天狗になりがちなので、そんな様子が見えて性格に変化が現れてきたら、目標を達成したところで褒めることを止める」
「全ての子供は皆、能力も性格も違っているので、それぞれに目を配る事が大切である」
「勇気ある決断をしたらしっかり褒め、それによって子供はまた勇気ある決断をしようとする」
「幼い頃は自信をつけさせる為に、とにかく褒めることを優先するが、11~12歳では次の段階として、間違った判断をした時には失敗の責任も問うようにする」
「それを繰り返すことで、自らがリスクを負って決断すべき場所が理解できるようになっていく」

という話をしていました。

「良い判断を褒めることと、失敗の責任を問うことで、たくさん頭を使わせ、判断力を磨く練習を続けて欲しい」というメッセージがありました。

これらは、企業の人材育成を行う上でも、多くのことが共通していて、活かせる考え方だと思います。
特に「褒めることと責任を問うことのバランス」「すべての人に目を配る」ということは、実際にはなかなかできていないことが多いのではないでしょうか。

企業の人材育成の現場でよく見かけるのは、「ミスや欠点の指摘」「すべての人への画一的な指導」という場面です。これは学校教育の段階から共通しているのかもしれません。

「ミスや欠点の指摘」では、それによって必然的に褒める頻度は減り、そのために判断力を磨くことができず、そうなれば、自分では決められずに何でも指示を求めるようになってしまうでしょう。

「すべての人への画一的な指導」では、能力が高い人はそれを伸ばせず、逆にそれが苦手な人はついて行くことが難しくなります。ある人では才能の芽を摘み、またある人では、苦手意識を植え付けることになってしまうでしょう。

このあたりの課題に対する取り組みは、すでに始めている企業もありますが、それはまだまだ少数派で、なおかつ確信をもって進めているというよりは、いろいろ試行錯誤をしている感じではないかと思います。

企業の人材育成とサッカーの指導とは、違う分野ではあっても、経験豊富な指導者の言葉には、何か共通点があるように思います。
確かに褒めるばかりではダメなことは間違いありませんが、「良いタイミングでしっかり褒める」ということは、あまりできていないのではないでしょうか。
そういう意味では、「意識的に褒める」ということが、まだまだ必要ではないかと思います。


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