2015年9月21日月曜日

人事の問題把握はあいまいになりやすい



私がコンサルタントとして取り組む仕事は、企業の人事戦略や人事施策、人事制度や人材採用を、企業の方々と一体になってご支援することですが、ご依頼をいただくからには、会社としての何らかの課題があるわけです。

例えば「今の人事制度がうまく行っていないので変えたい」などと言われますが、何がどううまく行っていないのかと尋ねたときに出てくるのは、「業績の伸び悩み」「退職者が増えている」「社員のやる気がない」「社員の能力が伸びない」「会社の雰囲気が悪い」などというものが多いです。

そういう状況が起こっているのは間違いないのだと思いますが、ここで挙げられているような内容でみると、“業績”と“退職者数”以外は、数字では表現できない感覚的なものです。
さらに、業績と退職者数に、人事の問題が関わっていることは考えられるとしても、それがどの程度の比率、数で影響しているのかは、やはり同じようにはっきりとは表現できません。

これは私自身がかつて企業の人事部門にいて、自分自身もそうだった経験があるからわかることですが、人事にたずさわる人間というのは、物事を数字ではなく感覚で捉える傾向が、往々にして強いということです。
仕事の対象として、「人」が中心にあり、それは千差万別で一言では言い表せない存在であり、その感覚が染みついているということがあるのではないかと思います。
これは経営者や管理者の中でも、一人ひとりの日常に目が届くような組織規模の場合では、同じようなことがあります。

やる気、能力、雰囲気などは、人事の課題として重要な要素ではあるので、そこに目が行くのは当然ですが、それを表現しようとすると、どうしても主観に陥りがちな部分であり、何か具体的に表現しようとしても、データ自体が整理されていないことも多いと思います。
結果として、人事上の課題に対する問題把握はあいまいになりやすく、効果的とは言えない対策が打ち出されることも少なくありません。

最近の人事の世界的な傾向は、脳科学や心理学、統計学といった科学的知見を活用して、感覚値や経験値で語られていたあいまいな部分を、できるだけ可視化していこうという動きです。
日本でも、一部の企業ではどんどん進んできている動きで、様々なアセスメントツールを使ったり、継続的なアンケート調査や面接調査を行ったり、その他データ収集と整理をしています。これからは意識していく必要がある動きでしょう。
 
ただ、実際にこれに取り組もうとすると、その労力も費用も結構なものになります。
アセスメントツールといっても、結局はいくつかの類型に当てはめて、それに合わせた対処をしていこうということなので、それを鵜呑みにしているだけでは、ただコンサルティング会社を喜ばせるだけでしょうし、大企業のように豊富なスタッフがいなければ、何でもかんでもできる訳ではないでしょう。

人事の問題把握については、あいまいさを排除するための意識を持ちつつ、まず初めは“できそうなことをできる範囲から”という形が良いのではないかと思います。


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