いろいろなところで人手不足の話を聞きますが、それに向けた採用活動を行っても、なかなか思うように人が採れないというのが最近の状況です。
人を雇うということについては、ほとんどの経営者がそれに関する責任というお話をされます。
どんな仕事をどんな会社でするかということは、その人の人生を左右する大きな問題だと思いますし、経営者の側からすれば、人を雇って事業を行うということは、本当に大変なことだと思います。また、ほとんどの経営者がそのことを自覚し、相応の責任感を持って採用活動をします。
ただ、社員を採用するにあたって、そんな責任感は語られても、それが会社にとって相当に大きな投資であるということを、表立っていう人は意外に少ない印象があります。
「採用は投資である」ということに絞って考えると、一人の社員が新卒で入社して定年まで勤める際の生涯賃金が2億円などとと言われますから、一人の社員を採用するということは、2億円の物件を、40年ローンで買っているということになります。
会社の都合で途中解約(解雇)することは原則としてできませんし、途中で売ってお金に替えることもできませんから、人材というのは常に投資と回収のバランスを取っていなければ損を被る可能性が高い、難しい投資物件と言えます。
最近では、3年以内に辞めてしまう新入社員が30%と言われますが、これは新人でもすぐに自分の給料分くらい稼いでくれるような業態でない限り、必ず先行投資をしている分があるはずなので、それが早々に辞めてしまうということは、投資としては確実に失敗しているということです。
ただ、そこまでの意識を持って人材採用を考えている会社は、たぶんそれほど多くないというのが私の印象です。多くの会社では、ある程度はそういうことへの問題意識はあるものの、それほど深刻とはとらえていない感じがします。
そもそも経営者が採用に関与しなくなっていること自体がそうですし、採用担当者でそこまでの意識をしている人が、果たしてどれほどいるのだろうかと思います。
退職者が出たから、人員補充をしなければなどとはいいますが、例えば1年ごとに3人の人が交代で勤務するのと、3年間一人の人が働くことで、投資効率は全く違うということは、あまり言われません。
熟練に時間を要するような仕事は、定着性が高い人でないと、投資としてはリスクが高いということになりますし、すぐに身につけられるような仕事であれば、短期的に投資を回収することが可能ですから、あえてそこにこだわる必要はありません。ただ、投資という意識が念頭になければ、このあたりの線引きは難しいことです。
なぜこんなことを思ったかというと、いろいろな会社で、わりと若手の採用担当者(注:私が見た方がたまたま若かったということで、もちろん年配者でも同じことがあります)が、あの人は良いとかダメだとか、そんなことを言いながら採用する人材をジャッジしている様子を見かけることが多くなったからです。高価な物件の買い物を、ずいぶん安易な買い方をしているように思ってしまったということです。
人材を単純にお金に換算することは難しい面がありますが、相当に高い買い物だということは、もっと意識しても良いのではないかと思います。それが意識されれば、ブラック企業などと言われる社員を粗末にする会社も少なくなるのではないでしょうか。
「人を採用する」ということは、本来はそれほど大変なことなのだと思います。
小笠原さんのブログはいつも貴重な学びを頂きありがとうございます。
返信削除今回はあえて苦言の部類となり申し訳ありません。
※全体の内容としてはもちろん賛成です。
一点、最後のほうの「わりと若手の・・・」という説明が違和感を感じます。
若手だけがダメなのか、ベテランなら全て良い・・・
そう誤解を誘発しかねないようにも思えます。
それは今回のブログに限らず過去にも年代問わない組織改革論などで
問題・改善の切り口を挙げられてますので真意はそうで無いとは
分かりますし、締めの一行にある通り大変な問題だからこそ
伝え方が難しいだろうと思いました。
個人的な見方で感じただけのことかも知れませんが、お伝えさせて頂きます。
これからも応援させて頂きます。
貴重なコメント有り難うございます。確かにおっしゃる通りで、私が見た方がたまたまそうだったというだけで、偏見と捉えられても仕方ない表現だったと反省しております。
削除本文を直してしまうと、せっかくコメントを頂いた意味がなくなってしまうので、本文はそのままに、ちょっと注釈だけ入れさせて頂こうかと思います。ご指摘有り難うございました。
引き続きご愛顧のほど、よろしくお願い致します。