2015年11月2日月曜日

「大卒者3割が3年で離職」の調査結果から見えるいろいろなこと



つい先日、厚生労働省が新卒者の離職に関する調査結果を発表し、大卒で就職後3年以内に仕事を辞めた人の割合が、32・3%だったとのことでした。就職活動当時の景気低迷によって、厳しい雇用環境で希望に合わない就職をしたり、就活中のイメージと入社後の実態の違いに戸惑ったりした人が多かったとみられるという分析がされていました。

ここ何年も同じような率で推移していますが、この分析は確かにその通りで、新卒者が実際に入社して仕事をやってみて、それがどこかは人によって違うでしょうが、「思っていたのと違う」「思っていたより大変」などと、ギャップを感じて辞めたものがほとんどだと思います。
ただ、これを「今の若者はこらえ性がない」などと世代の問題で片付けようとしたり、単なるマッチングの問題として捉えていたりすると、少し見方を誤ってしまうのではないかと思います。

この調査では、他にもいろいろな情報が出ています。
例えば事業所規模別のデータがあり、5人未満の事業所では6割近くが3年以内に辞めてしまっていますが、1000人以上の企業では2割強にとどまっています。大きな会社に入った人の方が辞めないということです。

ここから見れば、ただの仕事上のイメージ違いだけではなく、他の要素もかなり関係していることがうかがえます。
大きい会社だからといって、入社前後での認識ギャップがないはずはありませんし、大企業だから面白い仕事や楽な仕事をしている訳ではありません。

ただ、大きな会社の方が安定感はあるでしょうし、給与を始めとした待遇面も、相対的には良いことが想像できます。適材適所という意味では、新卒者を配置できる仕事の種類は、大企業の方が多いかもしれませんから、イメージギャップを埋めやすい要素はあるかもしれません。

また、産業別の調査データもあり、宿泊・飲食サービス業で53・2%で最も高く、次いで生活関連サービス・娯楽業の48・2%、教育・学習支援業の47・6%と続いていました。どちらかといえば、労働集約型で労働時間の長い業界、ブラック企業が出てきやすい業界のように思います。採用難の業界でもあるので、合わない人を無理して入社させている可能性もあります。

その反対に、製造業、電気・ガス、金融・保険といった業界は、比較的離職率が低くなっています。やはり業界の安定性や労働条件という面が関わっているように思います。

最近行われている離職者対策は、どうもマッチングの部分だけに偏っているように感じています。学生に向けた職業教育や就職支援の充実、インターンシップによる職業体験などですが、今回の調査結果を良く見ていくと、会社側でも処遇や仕事の進め方そのものを見直していかなければ、今の状況は変わっていかないように思います。

これはある建設・工事系の会社ですが、それまでの現場で当然のごとく行なわれていた力仕事の部分を、設備の改善や機器の導入といったことを通じて、少しずつ減らしていく取り組みを行っていました。
その結果、仕事そのものの体力的つらさや危険度を減らすことができ、女性をはじめとした腕力がない人など、それまで現場の仕事に関わることができなかった人たちも活躍できるようになったそうです。たぶん、「思っていたより大変」が少し解決されているのだと思います。

大卒者の離職の問題は、私はマッチングへの取り組みばかりではいけないと思います。


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