2017年11月22日水曜日

副業の容認を阻むのは、実は企業の“やきもち”か?



厚生労働省は、会社員が副業や兼業をしやすくするため、企業が就業規則をつくる際の参考として示している「モデル就業規則」から、副業や兼業を禁止する項目を削除するように見直す方針を固めたとの報道がありました。

副業については、様々な懸念をする声があり、特に大きなものは「長時間労働になるのではないか」とのことだそうで、他にも1社専業が制度の基本的な前提となっているとなっている雇用保険や社会保険などに関することが問題とされています。

企業側が副業容認への課題として挙げているのは、「本業がおろそかになる」「情報漏えいのリスク」「競業、利益相反」といったことで、副業をしている社員の労務管理を誰がやるのか、長時間労働になって本業への気力や体力はそがれないかということが言われています。

こういう話の様子を見ていて私が思うのは、この中での論理的、合理的に解決しなければならない問題は、社会保険関連の制度に関するものだけで、あとはもしかしたら起こるかもしれないことなど、仮定の話への疑心暗鬼や不安、心配がほとんどだということです。

そもそも、すでに副業や兼業をしている人は、それを企業側が把握していないだけで、今でもたくさんいます。長時間労働ということで言えば、確かにアルバイトの掛け持ちなどでそうなっている人の話はありますが、これは副業や兼業の問題というよりは、低賃金や生活費不足ということから起こっている経済的な厳しさゆえの問題です。企業の正社員が取り組もうとするような副業で、そのすべてが長時間労働を助長するとは思えません。自分の体を痛めつけるようなやり方はしないでしょう。

挙げられている企業側の懸念について、もう少しストレートに思ったことを言ってしまうと、確かに未知の取り組みに対する不安はあるでしょうが、「本業がおろそかになる」など、自分たちが第一優先ではなくなることが許容できないという“嫉妬”や“やきもち”のような感情が見えてしまいます。
例えば、彼氏や彼女に二股をかけられていたとか、自分の誘いを断ったのに他の人と会っていたとか、そんなことと同じく感情的に許せない思いを、もっともらしい理由をつけて言っているだけのように思うのです。

実はこの“感情的”というところが大いに曲者で、私は前途多難という感じがしています。感情というのは、外からの刺激があっても、理屈があっていたとしても、なかなか急には変えられないものだからです。政府が様々な旗振りをしていますが、変わっていくまでにはかなりの抵抗があるはずですし、時間もかかるでしょう。

ただ、私は今の状況は、かつて「育児休業」が始まったばかりの頃と似ていると思っています。
当初は制度があっても、会社では周りの社員たちも含めてほとんど理解がなく、それを利用するための心理的な障壁がものすごく高いため、利用率はなかなか上がりませんでした。しかし、現場で実体験を積み重ねていくほどに、徐々に抵抗感がなくなって理解が深まっていきました。

やはり副業や兼業も、会社が初めは嫌々だったとしても、それを経験していくことで問題がない、大丈夫だということがわかってくれば、今のような懸念は言われなくなると思います。

会社があくまで副業や兼業を嫌うのであれば、自社の経営を安定させて、自社だけで社員に十分な報酬を与え続けることを、将来にわたって保証しなければなりませんが、今はそれが難しい世の中です。そうであるならば、副業や兼業をもっと前向きにとらえる必要があるのではないでしょうか。


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