2020年4月16日木曜日

「もしもの時」のための人材育成


新型コロナで、医療関係の人たちに大きな負荷がかかっています。
機器や医療装備の不足があり、これらについては増産や優先支給などの手当てをしていくといわれています。
ただ、例えば医療機器があっても、それを扱えるスタッフがいないなど、人員の問題もクローズアップされています。単なる人手不足だけでなく、専門スキルや経験を持つ医師や看護師の不足があるといいます。

例えば、治療の最終手段になっている人工心肺装置は、全国で1400台ほどあるそうですが、同時に利用できるのは300台ほどではないかといいます。扱うためには専門的な治療経験が必要で、この経験がある医師や看護師が足りないからです。
ある専門医は、最低でも1年以上の経験が必要と言っていましたが、今回の危機に対して、利用経験がある救急医や看護師らを対象にした新たな研修事業を立ち上げて、装置を稼働できる体制強化を図るとのことです。
ベースになる経験を持った医師や看護師であれば、より早く身に着けることは可能でしょうし、少しでも体制強化が進めばよいと思います。

このような人材育成の問題は、多くの企業でも同じようにあります。
今は人材育成や教育の活動は、延期や中止といった形で止まっていますが、これから先、私は取り組みが二極化するのではないかと思っています。今まで以上に人材育成を重視する会社と、逆に人材育成を切り捨てて、スキルを持った人材を採用やスカウトなどで外部から連れてこようとする会社の二つです。

人材開発、育成の危機というのは、これまでも景気後退のたびに起こっています。研修をはじめとした人材育成に関する予算は一番はじめに削減され、取り組みも凍結されます。
人材育成には時間がかかり、やったことが期待通りに身につく保証もありません。さらにせっかく育てた人材が辞めてしまうということもあります。効果がすぐには見えづらく、そういうことにはなかなか投資がしづらいものです。
経済性を優先すると、人材育成や教育は切り捨てられやすく、すでに出来上がった人材を外から連れてくる方が確実であるなどという判断になりがちです。

しかし、そうやって人材を連れてこられる会社はそれでも良いですが、最近はそうとは思えない会社でも、育成よりも出来上がった人材を求める傾向があります。厳密にはそこまで求めている訳ではありませんが、育成には手間をかけずにわりと見切りが早いです。
「人材のレベルが低い」「質が悪い」とは言いますが、「育て方が悪い」「教え方に問題がある」とはあまり言いません。育成がうまくいかないことを人材のせいにしているところがあります。

一方、どんなに業績が苦しくても、人材育成を切り捨てない会社があります。最近はそういう姿勢の会社も増えているように思います。研修スペースやシステム環境など人材育成に関する設備投資、育成や教育にかける時間の多さ、教育内容や教え方など、本当に手間もお金もかけています。
こういう会社は、仮にレベルが高いとは言えない人材であっても、少しでもレベルアップするように手間をかけて教育します。簡単に切り捨てたりしません。

人材を育成せずに外から集めようとする会社は、人材レベルが景気動向に左右されますが、人材育成に熱心な会社にはそのためのノウハウがあり、景気が悪くなっても人材レベルは変わりません。

経験豊富な人材はある日突然湧き出てくる訳ではありません。誰かが場を与えて仕事を教えなければ、経験者は生まれません。先を見据えてそのことに計画的に取り組まなければ、肝心な時に必要な人材が足りなくなります。
AIに奪われる仕事は確かにあっても、人間がやる仕事は絶対になくならないと、今回のことで確信します。

今のような「もしもの時」こそ、最も重要なのが人材であり、こういうときのために、常日頃から人材育成を意識しなければならないのではないでしょうか。


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