2021年11月15日月曜日

「名もなき業務」を軽視すると現場が混乱する

最近は男性の育児参加や家事分担が当たり前になり、率先して取り組む人も増えてきました。「男は仕事で女は家庭」という古い価値観は、好むと好まざるとにかかわらず、もう通用しなくなっています。

 

そんな中で「名もなき家事」という言葉があります。

掃除、洗濯、炊事などの言葉では表せない、すき間にある様々な家事のことで、例としては「脱いだ洗濯物を裏返しから直す」「玄関の靴を揃える、しまう」「トイレットペーパーを交換する」「シャンプーを詰め替える」「コップ、空き缶、ペットボトルを洗う、片付ける」「排水溝のごみや髪の毛を取る」「ごみの分別」など、ものすごく細かい家事ですが、家族の誰かが必ずやらなければならないことで、挙げればきりがありません。そして、この「名もなき家事」を担っているのは、圧倒的に女性の場合が多いそうです。

 

確かイクメンを推進する団体で活動している男性だったと思いますが、自分の家でこの「名もなき家事」をリストにして夫婦での分担を調べたところ、7割以上を妻が行っていたことが分かり、細かい仕事に気づいていなかった自分を反省したという話がありました。

 

同じような話は会社にもあります。「名もなき業務」といってもよい、すき間に埋もれた小さな仕事です。

これはいくつもの会社で見かけたことですが、あまり目立たない社員や評価がそれほど高くない社員からの退職希望であったり、業務上の異動であったりというときに、その上司や部門長が「業務上は特に問題ない」と言っていたにもかかわらず、実際に業務から外れると全く現場が回らなくなってしまうようなことがあります。こういった時に大きく影響していると思われるのが、この「名もなき業務」です。

 

ある会社で、周りからは「仕事ができない」とお荷物のように言われたり、担当業務を「誰でもできる」などと見下されたりしていた社員が、家庭の事情で退職することになりました。周りの社員たちは「別にいなくなっても問題ない」などと言い、当然ですが自分たちの業務にあまり関係があるとは思っていません。

本人は業務をしっかり引き継いだ上で退職しようとするのに、周りの人たちは重要なこととは考えていないのか、あまりきちんと話を聞いていない様子です。

 

そんな状況のままでこの人が退職したのち、現場の業務は徐々に混乱し始めます。「ファイルの在り場所がわからない」「資料がそろわない」「事前のデータ更新がされていない」など、発生する問題は様々です。

それぞれは決して難しい仕事ではありませんが、退職した社員は「関係先に資料を催促して期限までに揃える」「ばらばらに集まってくるデータファイルを整理して格納する」「紙資料を確実にファイリングする」など、あまり表には出ないが自分の仕事を確実にこなし、みんなの作業が進めやすくなる環境づくりをいろいろやっていたことがわかってきました。

「この話は誰に」ということをよく知っていて、問い合わせや確認を効率よくやっていたことや、関係先から必要な情報を期限までに集めることが、実は結構大変だったことが明らかになってきます。

 

その後、あらためてこの退職した社員と相談し、家庭の事情と折り合うような形で、当面パートタイムで仕事に復帰してもらうことになりました。この人の仕事を「誰でもできる」などという人は、もう一人もいません。

 

「辞めても問題ない」「現場は十分回る」と言っていたのに、実際にはそうではないケースはどの会社でもあり、その一因には周囲からあまり見えていない「名もなき業務」の存在があります。

一見「その人がいなくてもできる」「誰でもできる」ように見えても、もっと詳細を見極めなければ実態がどうなのかはわかりません。

「名もなき業務」をはじめとした小さな仕事を軽視すると、自分たちが痛い目を見る可能性があります。注意しなければなりません。

 

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