2022年2月7日月曜日

「ワークライフバランス」で「報酬」のことに配慮しているか

少し前の2019年の資料ですが、「各国駐在員が働きたい国ランキング」という英金融HSBCホールディングスによる調査があり、そこで日本は調査対象の33カ国の中で32位だったという結果がありました。

上位は1位からスイス、シンガポール、カナダ、スペイン、ニュージーランドの順、日本の一つ下の最下位はブラジル、ちょっと民主的でなかったり、治安が良くなかったりするイメージがあるサウジアラビアや南アフリカといった国も日本より上位ということで、日本人としてはまったくうれしくない結果です。

似たような調査は他にもありますが、「旅行先」「移住先」といったものでは日本が上位に来ることはあるものの、「働く場所」となるとほとんどの調査で日本は下位に位置付けられています。

 

前述の「働きたい国ランキング」の分析として挙げられていたのは、上位の国の共通点として一つは「賃金が高い国」、もう一つは「ワークライフバランスが優れている国」で、日本はそのどちらも順位が低く、他にも子供の教育などの子育て環境が劣っていると評価されていました。

賃金が高ければ、多少仕事がきつくても人気は高くなり、一方ワークライフバランスで上位となっている国でも賃金は平均以上の水準であり、結局は賃金が低ければ不人気になるとされていました。

 

ここ最近の日本では、「働き方改革」などの取り組みがされていますが、ここでは職場環境の整備やワークライフバランスを重視する動きが中心です。特に残業削減をはじめとした長時間労働対策には、かなりの力点が置かれています。

そのこと自体は必要なことで間違った方向とは思いませんが、問題と思うのは、それを進める中で「報酬」とのバランスがきちんと考慮されているのかということです。残業削減が進めば進むほど、会社にとってはコスト削減、生産性向上となりますが、今まで残業していた人たちは、報酬が減るということになります。

 

残業対策に取り組む現場の話は数多く耳にし、それなりに効果が上がっている話もよく聞きますが、同時に「やればやるほど社員の報酬は下がってしまう」という矛盾の声もありました。

過剰な労働時間が減るのは良いことですし、時間の余裕は心の余裕につながり、健康の上でも好ましく、可処分時間が増えるメリットは本当にたくさんありますが、それに合わせて受け取る賃金も減り、仕事量は変わらないとなると、社員の立場では喜んでばかりいられません。

 

ある会社では、残業削減を行う代わりに、そこで浮いた人件費は賞与原資に組み込んで、すべて社員に還元することを事前に宣言したというところがありました。ワークライフバランスと社員の報酬の関係をきちんと理解して配慮したということですが、こういう会社は決して多くはありません。

 

日本の場合、法律的な問題もあって労働時間と賃金のつながりが強く、時間が減ると報酬もその分減ってしまうことが多くなります。派遣、パート、アルバイト、その他非正規で働く人は、時給制が圧倒的に多いので、なおさら時短は収入減に直結します。

 

「ワークライフバランス」は重要ですが、それと合わせた「報酬」とのバランスに、もっと配慮する必要があります。

 

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