2014年7月30日水曜日

自称「現場主義」のマネージャーは本当に現場主義なのか


日本企業の強みは「現場力」にあると、よく言われます。経営面の弱さの裏返しと言えなくもないですが、海外企業に比べても、現場の強さではまだまだ優位性を保っている部分がたくさんあると思います。

経営者やマネージャークラスの人でも、「現場主義」とおっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。現場を回り、現場の人と直接コミュニケーションを取り、そこで得た情報を経営判断やマネジメントに活かそうとします。
私自身の企業勤務の時代も、自分の心がけとしては現場を重視していたつもりです。ただ、それが本当の意味で「現場主義」と言えるものだったのかどうか、ちょっと疑問に感じることがありました。

それはある記事で読んだ、靴修理チェーン「ミスターミニット」を展開する会社で、入社わずか1年3カ月の28歳の若さで就任した社長のお話からです。

この方は社内のポジションを徐々に上げながらも、とにかく一貫した「現場主義」にこだわり、店舗に毎日通って、お客様に一番近い従業員一人ひとりに話を聞き、ビジョンと戦略を語って実際の仕組みを変えていく、「棚がほしい」と言われればその場で注文し、「必要な機械がない」と言うならすぐに導入する、「店舗が使いにくい」との声があればすぐさま改装する、ということを実行していったそうです。

「お客様に満足してもらうから売上が上がる。そのためには、従業員が楽しく働いて、いいサービスを展開すること。お客様に一番近いのは現場の人間なので、コミュニケーションするとどちらのニーズもくみ取ることができるので、そこに光を当てて、リソースをかけて、サービスとして展開できる形にして、全店に広げていくプロセスを回すことが自分の仕事だと思っている」ということでした。

この話を読んだとき、少なくとも私自身の場合、現場主義とは言いながら、ここまで明確に現場のニーズをくみ上げて、それに対応していたかと言えば、決してそうではなかったと思います。
「今は難しい」と先送りしたり、「工夫すれば対応できる」と現場側を説得したり諭したり、悪く言えば丸め込んだりしていたことがあります。

たぶん、「現場主義」と言っている経営者やマネージャーの方々も、多くの人にそんな経験があるのではないかと思います。
「俺たちの頃はもっとひどかった」とか「それは現場のわがままだ」とか、その他いろいろな理屈を言いながら“現状を変えない”という対応をしていることがあるのではないでしょうか。
現場からの話は聞いていたとしても、その意見や要望の一つ一つをきちんと取り上げて対処していたかというと、決してそうではなかったのではないかと思います。

この社長ほどの徹底した現場主義に対しては、「うちの会社では無理」とあきらめたり、「これが良いやり方とは思わない」と反発したりする考え方もあるでしょう。
ただ、このお話から、自称「現場主義」と言っている経営者やマネージャーは、はたして本当に現場主義なのかということを、少し考えさせられてしまいました。

「現場主義」というのは、実は軽々しく口にできない、なかなか難しいことなのかもしれません。

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