2015年12月4日金曜日

「向いていない仕事」をやり続けた人



仕事には、その人によっての向き不向きがあります。会社の中では「適正配置」などといって、その人にできるだけ向いている仕事を与えようと考えるのが一般的だと思います。

「向いていること」というのは、言い換えるとその人が「得意なこと」です。できるだけ多くの人が「向いていること」「得意なこと」に取り組んだ方が、生産性は間違いなく高まります。
 こんなことから、採用、配属、昇格といった場面で様々な適性テストを実施したり、効果的な能力向上を見据えた教育研修などを行います。

私も今まで、適性テストの結果というものは、膨大な人数のものを見てきました。そういう中では、ご本人がやりたいと言っている仕事や周りがやらせたいと考えている仕事と、それに対する適性判断の間には、もちろん差はあるものの、まったくかけ離れていてかすってもいないなどというようなことはほとんどありません。

本人がやりたいことは、自分で興味があることでしょうし、周りがやらせたいことも、何らかの適性があるように見えていることでしょうから、この適性判断と実際にやっている仕事が大きくかい離していることは少なく、テスト結果でベストではなくても、ベターとされたいくつかの仕事の中に、実際にかかわっている仕事が含まれていることがほとんどだと思います。

ただ、つい先日ある企業の採用面接をお手伝いした時、私自身も今までで初めてかもしれないという経験をしました。

応募者はその業務をもう20年近く担当しているベテランで、それなりの経歴をお持ちの方したが、お話を聞いていると、これまでの経験に自信がなさそうで、自分でも未だに「向いていない」などと言っています。何よりも強く感じたのは、仕事は仕事と割り切っているというか、とにかく仕事に対する受け身の姿勢が強いということでした。
はじめは単に職業意識が低いだけなのか、もしくは共稼ぎの様子だったので、必ずしも自分の仕事に生活がかかっていないというようなことか、そんな理由を考えていました。

の会社では、中途採用の候補者にも適性テストを行うこととしていますが、この人のテスト結果を見たとき、面接で感じたことの理由がわかったという気がしました。実際にやっている仕事とテスト結果の上での業務適性の間に、まったくと言ってよいほど接点がなかったのです。

つまり「向いていない仕事」をかれこれ20年以上やり続けているということになりますが、その結果として起こっていたことは、受け身の姿勢が強い、仕事は仕事と割り切っている、キャリアアップ意識が薄くなってしまっているということでした。

押しが弱くてNoと言えそうにないご本人と、その仕事の人手が足りなかったらしい会社の事情と、その後ほどほどにどうにかなってきてしまったという偶然の要素が相まって、ほぼ「向いていない仕事」をやり続けるという、めったに起こらない状況になってしまったわけですが、その結果はどう見ても関係する全員が不幸であるように思います。

これを変えるために考えられる方法はただ一つ、本人にあらためて「向いている仕事」を任せるということだと思います。
「今さらそんなこと」と思う人が多いのかもしれません。ただ、「向いていること」は「得意なこと」です。手遅れということは私は絶対に無いと思います。


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