2015年12月2日水曜日

「会社での評価」だけでは見えないこと



ある会社の若手社員が、相談したいことがあるというので聞いてみると、その社員の直属の課長についての話でした。

「リーダーシップもないし、能力も低いし、あんな人が課長ではやってられない」などと言います。
言われている課長は、確かに社内での評価はあまり高くなく、「できない人」としてときどき話題に挙がってしまう人です。

少し控えめなところがあるためか、コミュニケーションの頻度が少ない、指示がはっきりしない、判断が遅い、というようなことがあります。
仕事そのものは丁寧ではありますが、それよりは「遅い」と言われることの方が多いようです。

相談に来た若手社員は相当頭に来ていたのか、「あんな人は会社に存在する価値がない!」などと人格否定のようなことまで言うので、その言動を諭しながら、いくつか自分から働きかける方法などをアドバイスしてその場は終わりました。

その後のある日、この会社のレクレーションとして、日帰り旅行のイベントがありました。希望者は家族も参加することができるのですが、例の課長は家族そろって参加していました。お子さんは幼稚園か小学校低学年ぐらいの男の子が二人、なかなか元気な子供たちです。

そこで何となく目に入ってきた様子を見ていると、この課長のお父さんぶりがなかなか良い感じなのです。やんちゃな男の子たちを頭ごなしに叱らず、しかし言うべきことは厳しく言います。
子供たちにとっては、家族の中で何をやっても一番うまいのはお父さんですから、お父さんと一緒に、いろいろ教えてもらいながら遊んでいるのはとても楽しそうです。まさに家族のリーダーです。

実はこの様子を、先日相談しに来た若手社員も一緒に見ていました。そこで一言、「課長って、いいお父さんですね」と言っていました。そのあとの「会社でもああならいいのに・・」は余計なひと言でしたが、それでも少し課長の見方が変わった様子でした。

私も見ていて思ったのは、ああやって子供と根気良く接することができるのは、課長の穏やかさと粘り強さがあるからでしょうし、相手の感情を尊重する姿勢があるからだと思います。
そんな部分が会社では、部下も含めた相手への遠慮につながり、「はっきりしない」「判断しない」「遅い」などという評価になっているように思います。

その後、この課長の会社での様子は相変わらずですが、その一方で、相談しに来た例の若手社員は、課長への接し方が少し変わったように感じます。相変わらずきついことは言いますが、以前のような人格否定のような言動はなくなり、とげとげしさは消えました。たぶん課長の少し違って一面を見たことで、課長が取る行動の理由が何となくわかり、それに対する処し方ができるようになって来たのだと思います。

やっぱり力不足の課長には、もっと頑張ってもらわなければなりません。ただ、会社という枠組みの中で起こることが人間のすべてではないですし、そこでは見えないこともたくさんあります。

もしも食糧危機になったとして、強権をふるっていた上司の畑には作物ができず、ダメ扱いされていた部下の畑が豊作になるかもしれません。環境が変われば力関係が変わることもあります。

会社での評価は、その人の一部だけのことです。もっと他の部分も見ていくことができれば、何か違う活かし方が見えてくることもあるかもしれません。

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