2016年4月20日水曜日

「褒めて育てる」の弊害という話



「褒めて育てるのが一番」ということが広まったのは、もう10年以上前になると思います。
ここ最近では「褒めて育てるなんて甘い」などと否定的な捉え方をする人は、さすがにほとんどいなくなりましたが、そもそも日本人は感情表現が控えめの傾向にあるためか、今でも「何をどう褒めればよいのかわからない」など、部下や他人を褒めること自体が苦手という人は、今でもいます。

 しかし、このところは多くの書籍やコラムで、「褒めて育てることの弊害」という話を数多く見かけるようになりました。
10年ほど前までは、アメリカでも「褒めて伸ばす方が自信もつくので一番よい」とされることがことが多く、日本でも同じことが言われていましたが、最新の研究では、そのやり方では良くないということが分かってきて、方針は修正されつつあるのだそうです。

ある記事によると、ただやみくもに褒められて育った人は、「自信のようなもの」は身につけますが、それはプライドばかりを高めた尊大な自信であり、何かことが起こると、パニックに陥ってしまうのだそうです。

また、アドラー心理学の視点から書かれた記事によると、「褒めることは相手の自律心を阻害し、褒められることに依存する人間をつくり出してしまうことになる」と捉えているそうで、「褒められたい」と思うことは依存で自律性を欠いた状態であり、人を褒めるということは、その人の自律性を奪うことになるのだそうです。

人が自信を持って行動するのは「上から評価して褒められたとき」のではなく、「横から勇気づけられたとき」であり、こうした感情を何度も受け取ることによってのみ、人間は自律的に成長していくことができるのだそうです。

最新の研究では、自信は本人による「行動と失敗」によって作られることが分かっているそうで、行動しながら小さな失敗を繰り返すことで、失敗への免疫がつき、後に大きなリスクを前にしたときでも冷静に対処できる「本当の自信」が身に付くのだそうです。

ですから育成する側は、単に相手を褒めるだけでなく、本人が自ら行動するように仕向けることが大事になります。
ただ褒めるのはもう古く、本人が行動し、失敗も経験できるように仕向けることが、本当の自信を身につけさせる正しい方法だということです。

このような話は、実は褒めて育てるということが広まり始めたころ、多くの会社の経営者やマネージャー達が言っていたことと、実はあまり変わりがないように思います。
当時出てきた話では、「そんなに褒めたってつけあがるだけ」「褒めるばかりの甘やかしでは成長しない」といったことでしたが、今となって同じようなことが言われ始めています。
当時の現場で指導的な立場にいた人たちが、肌感覚で感じていたことは実は正しかったということなのだと思います。

私も、人材育成に関する研修や指導をする際には、褒めることの大事さは語りつつも、褒めることはできるだけ具体的に褒め、叱るべきことも遠慮せずに具体的に叱るということを強調しています。それが実際の現場感覚には最も合っていると思うからです。

 こんな理論の変遷を聞いていると、現場感覚というのは、あながち間違っていないということを思っているところです。


3 件のコメント:

  1. 褒めること自体が、上から目線。褒めることの本質がしっかりと伝わっていないため、使い方を間違ってるように感じるなあ。褒めて育てること自体は何も間違ってないように思うけど、褒め方、褒める使い方を間違ってたら、本末転倒になるんでしょうね。
    褒めるは、上から目線ではなく、存在そのものを認めるってことかなあと思うんですけど……「褒めて育てる」のではなく、「認めて育てる」というほうがニュアンスとしては近いのでは……?

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  2. 褒めること自体が、上から目線。褒めることの本質がしっかりと伝わっていないため、使い方を間違ってるように感じるなあ。褒めて育てること自体は何も間違ってないように思うけど、褒め方、褒める使い方を間違ってたら、本末転倒になるんでしょうね。
    褒めるは、上から目線ではなく、存在そのものを認めるってことかなあと思うんですけど……「褒めて育てる」のではなく、「認めて育てる」というほうがニュアンスとしては近いのでは……?

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    1. コメント有難うございます。おっしゃる通り褒めて育てること自体は間違っていないことは私も同感です。褒める、叱るの適切なバランスは3:1というロサダの法則などもありますし、ただ褒め過ぎNGではダメで、そういうことを理解した上での褒め方、叱り方なのだと思います。
      「認めて育てる」は的を得た良い言い方ですね。参考にさせて頂きます。有難うございました。

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