2020年3月19日木曜日

ルーズにしていると損が降りかかる仕組みを作る


いろいろな会社にうかがっていると、意外にルーズな場面が多いことに気づきます。
遅刻や理由が怪しい欠勤のようなわかりやすいものばかりでなく、社内提出物の期限を守らない、ミーティングの開始時間になっても集まらない、整理整頓がない、紙や備品の無駄遣い、経費の無駄遣い、その他挙げればキリがありません。
こういうルーズさを改善する取り組みはどこの会社でもやりますが、ある時期は良くなってもなかなか定着せず、しばらくすると元に戻ってしまうことが多いものです。

ただ、ある会社でこんなことがありました。
その会社では、週一回月曜日の朝一番で、部長以上の幹部20数名が集まる定例ミーティングをおこなっていました。1時間程度で終わる情報共有の連絡会でしたが、週初めの朝ということもあり、遅刻して来たり、なんだかんだと理由をつけて欠席する者が多数いることが問題となっていました。
総務部門が事務局となっていて、それまでもいろいろ働きかけをしていましたが、ルーズさは一向に改善されません。

ある時、この会議の主催と司会を、社長自身がやると言い出しました。会議に限らず様々なルーズさが社内に広がっていて、そのことに危機感を持ったようです。

そして会議の初日にやったことは、開始時間に会議室の鍵を閉めて入れなくすることからでした。当然ですが、遅刻者は会議に参加できません。
そこで社長がこんな宣言をします。「これからは遅れての参加や、代理出席は認めない」「会議の出欠状況は記録を取る」「毎週のことなので議事録は作らない」と言います。そして、「出席できなかった者は、自分で他の出席者から情報を取るように」「宿題や課題があればその場で伝える」とのことです。
要はその場にいなければ、自分の仕事に大きく差し障りが出るのです。

病欠の時はどうする、電車遅延はどうするなど、多くの不満が出されますが、社長は聞く耳を持ちません。最後に「悪いのは今までルーズさを許していた会社であり、それを改善するための運用だ」と言いました。ただし裏には「ルーズな振る舞いを続けた自業自得」とのニュアンスを含んでいます。

結構な強権を振るったイメージで、反発や逆効果が心配されますが、この会議がその後どうなったかというと、実は多くのことが良い方向に変わりました。
まず、社長が会議を仕切るようになったことで、それまでの形式的な報告会ではなくなりました。実務的なやり取りや情報共有が増え、それに基づく指示や報告がリアルタイムでされるようになりました。率直な意見を言い合える雰囲気もあります。

鍵を閉めて遅刻を許さないのは変わりませんが、出席しないと自分が取り残されて困るので、全員が必ず時間通りに出席するようになりました。その後病欠の場合のみ、課長の代理出席が認められるようになりましたが、電車遅延は認められません。出席できなかった部長は、他の部長に話を聞きに行って情報収集をしなければなりません。
出欠は確かに記録していますが、それを使って評価したり批判したりということはありません。ただ、「出席しなければ」という心理が強く働くようになったのは間違いありません。よくある「顧客対応」を理由にした欠席はほとんどありません。
そこから徐々に、会社全体のルーズな雰囲気は一掃されていきました。

自分に損が降りかかってくる仕組みというと、評価制度を思い浮かべる人は多いですが、そこであり得る損は、給与や賞与などの金銭面と役職など組織上の地位です。多くは半年に一回くらいの頻度であり、降格して職務権限がなくなるようなことでもない限り、自分の仕事上で直接の影響はありません。
しかしこの会議の場合、ルーズにすると参加できないペナルティーがあり、それが自分の目の前の仕事に悪影響を及ぼします。
自分の怠慢が、すぐ自分に損として返ってくる仕組みになっているのです。会議の中身を意味があるものに変えたことや、社長のリーダーシップも大きいでしょう。

意識の啓蒙や心掛けだけでは、なかなか人の行動は変わりません。
「ルーズにしていると損が降りかかる仕組みを作る」というのは、組織改革の手段の一つになります。工夫次第で意外に効果的なことが、いろいろ考えられるのではないでしょうか。


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