2021年3月1日月曜日

自分の代わりになる人

たまたまですが、いくつかの会社で並行して、「業務の属人化を解消する」というテーマでの組織改革を支援しています。同じような課題を持つ会社が多いということでしょう。

 

どの会社も中小規模の会社なので、人材豊富できっちり業務分担が決められるような会社ではありません。優秀で処理能力が高いような人がいると、ついついその人任せになってしまいがちな環境にある会社ばかりです。

みんなが「それではまずい」という問題意識を持ち、その人がいないと仕事が回らないといったことがないように、それぞれのマネージャーは業務分担を見直し、業務引き継ぎや人材育成を進めています。「誰かが休むと仕事が止まる」という危うい状況は、ずいぶんと緩和されつつあります。

 

ただ、そうやってメンバーたちの仕事はうまく調整しているのに、マネージャー自身の仕事を肩代わりできる人は、今のところどの会社にもほとんどいない状況です。

どのマネージャーも、配下のメンバーたちの仕事については複数担当制、マルチ化、多能化を進めることができるのに、自分のこととなるとどうも話が違ってきます。あからさまに「任せられない」とは言いませんが、自分の代わりになる人についてはどうも特別な意識があるようです。

 

リーダークラスの人で「自分の代わりの人」の必要性を理解して、具体的に動いている人を見ていると、私の周りに限って言えば、そのほとんどはオーナー経営者が次世代に経営をつなごうとしている場合です。

それ以外のリーダー、マネージャーという人たちは、自分自身の異動や退職といったことでもない限り、自分から進んで「自分の代わりの人」を作ることはあまりしませんし、これが経営者の場合でも、具体的に次が見えていないとなかなか引き継ぎは行われません。「この人」と決めて引き継ごうとしたけれども、結局うまくいかなかったという話もよく聞きます。

 

リーダー、マネージャーが「自分の代わりの人」を作ろう、見つけようとしないのは、いくつか理由があります。

私が見ている中では大きく二つのことがあり、一つは自分のやり方にこだわりがあって、その大部分を踏襲してくれないと「代わりにならない」と見ている場合と、もう一つは潜在的なものや無意識なものも含めて、どこかに自分の存在感を失いたくない気持ちがあり、あえて「自分の代わりはいない」という状態にしている場合です。特に「いてくれないと困る」と言われたい気持ちは、多くの人の心のどこかにあるようです。

 

最近目にした記事で、お笑い芸人のカズレーザーさんが「自分の代わりなんていくらでもいる」と語っているものがありました。「スティーブジョブズでさえ代えが効いて、アップルは今でも伸びているのだから、自分の代えなんていくらでもいる」「自分の代わりはいないなどと考えて、執着して場所を譲らないのが一番良くない」と言っていました。

 

長期休暇制度がある会社で休暇から復帰した管理職が、自分がいなくてさぞかし困っていただろうと思って出社したら、何事もなかったかのように仕事が回っていてショックを受けたという話があります。しかしそれが組織というものです。誰か人員が欠けてそれを放っておいたとしても、ほぼ間違いなく代わりの人が出てきて、またそれなりに仕事が回るようになります。

しかし、そのことを認めたがらずに仕事をブラックボックス化して、自分の存在意義を示したがる人は、年齢や性別を問わず大勢います。私と同じコンサルタントの中にも、教えれば済むことを抱え込んで立場を維持しようとしている人がいます。そういう気持ちもわからなくはないですが、その姿勢は自分にとっても周りにとっても、決して良いことではありません。

 

組織をまとめる立場の人ほど、きちんと「自分の代わり」を事前に想定して準備しておいた方が、リスクが減ってより強い組織になることは間違いありません。

リーダーは「自分の代わりになる人」を、もっと意識して作っていかなければなりません。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿