2021年3月4日木曜日

「社会人の基本」をやらないベテラン

最近いろいろな会社から続けて聞くことがあった、社員の人材育成に関する話です。

それぞれの会社のマネージャーたちが、異口同音に「社会人の基本ができていない人にどう対処すればよいのか」という悩みをぶつけてきます。

 

聞けば確かに「社会人の基本」と言える内容で、例えば「挨拶をしない」「報告をしない」「指示したことを忘れる」「何度注意しても間違える」「言われたことをやらない」などといったことが挙がり、どんなに注意や指導をしてもそれが繰り返されるそうです。しかもその対象の多くが、40代、50代といったベテラン社員たちです。

指導するマネージャーたちは、「直らなければ言い続けるしかない」と根気よく対応していた様子がわかります。しかし、結果としてほとんど改善されないようです。「さすがにもう無理」「あきらめていいのだろうか」と困った様子が明らかです。

 

こればかりは私にも明確な回答はありません。私と同世代のような社員が「しつけ」に近いことができずにマネージャーたちを悩ませているのは、さすがに嘆かわしい思いがします。「マネージャーの責任として投げ出さずに取り組もう」などとは、あまりにもきれいごと過ぎて言えません。

 

このことについてこれが正解とは決して思いませんが、私が話したのは「そういう能力の社員だとして扱うしかない」ということでした。ベテランの方が伸びしろが少ないと考えれば、なおさらそのように見るしかありません。

確かに言われていることは「社会人の基本」にあたることであり、正直いってできて当たり前、やって当然と思うことで、ある程度の経験者となればなおさらですが、それが反発なのか、もしくはやる気がないのか、そうではなく本当に忘れているのか、もしくはできないのかによって事情は大きく異なります。前者は感情の問題であり、後者は能力の問題だからです。やればできるけどやらないのか、やろうとしてもできないのかという違いです。

 

そして、このどちらに当てはまったとしても、結果として「できない」「やらない」といったことであれば、それはそういう能力の人だという前提のもとで、業務指示をするしかありません。報告がなかったり遅れたりしても影響が少ない仕事を与えるしかありませんし、大事な顧客を任せたりすることも難しいでしょう。

「こんな基本的なことくらいできて当然」と思いたくなりますが、そういう感情は抑えて「その人の能力レベルはそのくらい」と考えるのです。能力に見合った仕事を与えて、その成果に見合った評価をするという基本的なマネジメントに立ち返ることです。

 

もしも社員自身は「気にいらないからやらない」などと考えていたとしても、そういうことを続けているといつの間にかその手抜き状態が実力になっていたりします。しつけのたぐいは、年令が上がるほど改善しづらくなるところもあります。

 

「社会人の基本」と言われるようなことでも、その人が何歳であっても、それができない人はいます。それがその人の能力だからです。

そう考えると、少しは気が落ち着いて、やるべきことも見えてくるのではないでしょうか。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿