2022年11月28日月曜日

「マッチョな職場」が生産性を損なうという話

 「マッチョな職場、つらくないですか?」という新聞記事がありました。

弱みを見せたら負け、仕事が最優先で長時間労働は当たり前、競争を好み勝つことを最優先するといったマッチョイズム(男らしさの規範)の強い職場が、逆に生産性を損ねているのではないかという指摘です。

 

生産性や創造性は、多様性がある環境下で生まれるものであり、同じような価値観を持った人ばかりが集まって、どんなに議論しても生まれるものではありません。

「自分らしさ」という自尊感情から自己肯定感などが高まり、それによって組織内のコミュニケーションがしやすくなり、イノベーションというのはそんな中から生まれるものですが、マッチョイズムはどちらかといえばこの「自分らしさ」を阻むものです。

 

日本の職場では正社員や管理職ともに男性比率が高く、昔ながらの「男らしさ」という規範も合わさって、マッチョな組織文化になりがちなところがあるとのことです。

最近でこそ「心理的安全性」など、組織内の対人関係におびえることなく、自由に意見がいえる職場環境の重要性が言われるようになり、実際に取り組む企業も出てきています。しかし、実際の現場を見ていると、到底そこには達していない企業がまだまだたくさんあります。先進的と評判の大企業であっても、そのような側面を見かけます。

 

この記事では、特に日本の管理職の課題は、男性的な価値観と関連していることが多いと言っています。負けを認めるわけにはいかないので助けを求めず、その結果としてメンタルダウンなどの不健全な状態に陥ったりします。セクハラやパワハラといった問題は、男性が引き起こすことの方が多いでしょう。本人としては無理しながら頑張っているのでしょうが、結果的に組織全体のパフォーマンスは下がり、生産性も損なっています。

記事ではこの対策として、評価などを気にせずフラットに相談することができる仕組み作りが必要と言っています。確かにその通りですが、誰でも相談できる環境は、そう簡単に作り出せるものではありません。中小企業のように人員が限られた組織では特にそうです。

 

この「マッチョな職場」の対極はどこにあるのかを考えたとき、ふと思い出したところが二つあります。

一つはある広告関連の企業ですが、社長も含めた社員7、8人が全員女性の会社です。創業メンバー3人と後から入った数人での構成ですが、特徴は全員あまり上昇志向がないことです。売上目標はありますが、「みんながほどほどに生活できればいい」という感じであまり達成にこだわっていません。それよりは「こんなサービスがあったら便利だよね」とか「このクライアントの期待には応えなければ」とか、そんなことの優先度が高いようです。社員同士は年齢が近いこともあって、みんなよく話をしていますし、ギスギスした感じがなく穏やかなので、対人関係の遠慮はなさそうです。また売上にこだわっていないといいながら、顧客からの評判は良く当面の業績は順調な様子でした。

女性が集まることに対して、特有の陰湿さなどを言う人がいますが、女性ばかりの会社だとこんな感じになるのだと、とても印象に残りました。

 

もう一つは近所の飲食店で、典型的な家族経営の店です。お父さん、お母さん、おばあちゃんに息子、ときどき娘が手伝いに来る感じですが、本当の家族ですからお互いに遠慮はありませんし、競争も必要ありません。たぶん弱みも知っているし、地雷さえ踏まなければ何でも言い合える関係です。まさにマッチョとは無縁です。

 

これらはもちろん事業規模も違うし、社会的な立場も違っていますが、「組織」で「ビジネス」をしていることに変わりはありません。

ただ楽して仕事しようとするのは好ましいとは言えなくても、仕事を続けていくうえで、健康で穏やかに働くことは大事です。そこに果たして「マッチョさ」は必要なのかと考えてしまいます。

 

 

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