2013年10月8日火曜日

先人も意識していた知識や技術の伝承


先ごろ伊勢神宮で行われた式年遷宮(しきねんせんぐう)について聞いたお話で、私がとても印象に残ったことです。

式年遷宮というのは、1300年間に渡って続けられている20年に一度の大祭で、社殿をすべて造り替え、殿内の神宝などを新調して、御神体を新宮へ移す一連の儀式をいい、先日行われたのは“遷御の儀”といって、そのクライマックスにあたるものだそうです。

この“社殿を定期的に造り替える理由”には、神宮の永遠性を示すなどの宗教的な意味とともに、実は建築様式の保存や建替え技術の伝承を行うという意味もあるということだそうで、さらに儀式がなぜ20年間隔かというと、やはり宗教的な意味のほかに、当時の人の寿命や実働年数から考えると、20年に一度の遷宮であれば、少なくとも二度は遷宮に携わることができるので、二度経験すれば技術の伝承を行うことができるということがあるのだそうです。

ここに私が印象深く、なおかつ感心した理由があるのですが、こんないにしえの頃からずっと先の時代を見据えて、いかに技術を伝承していくかを工夫し、それを1300年という長きに渡って、今の時代まで実践し続けているということです。

これは以前お話をうかがった、創業100年を越える日本の老舗、長寿企業の話とも共通していて、
・創業者の理念を、誰でもわかる簡単な言葉や言い方で脈々と伝えている。
・100年先を見て、次の世代にどうやって引き継ぐかを常に考えている経営している。

ということを、皆さん意識的に続けていらっしゃり、それが理念や技術の伝承につながっています。

もう一つ、1300年続けてこられた上で大事な点は、「定期的な大祭という実践の場の中に、技術伝承が考慮されて含まれていた」ということではないかと思います。これは、「どんなに練習を積んでいても、試合に出て実戦で使わなければ身に付かない」ということと同じ気がします。

最近日本企業では、団塊世代の退職に伴う技術伝承の問題が言われ、それに起因するような事象も出てきていますが、考えてみればほんのここ2、30年程度のことです。これは先人たちの取り組みからすれば、伝えようという意識も仕組みも実践も、すべて足りなかったということだと思います。
さらに実践の場ということで考えると、最近の企業内の技術伝承は、必ずしも本番の試合ではなく、どうも練習試合止まりのレベルが多くなっているような気がします。

理念であっても技術であっても、それを伝承するには実践経験が必要であり、その実践の場というのは、かなり意図的に作らなければならないのではないかと思います。また、これを実際に工夫して取り組んでいる企業もたくさんあります。

やはり、技術伝承のためには「いかに実践の場を作るか」、そして「それをいかに継続するか」が重要なのだと思います。


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