2014年3月10日月曜日

動機づけにつながりづらくなっている「お金」という要素


多くの企業で、今はちょうど給与改定の季節です。私もそれに向けて、いくつかの企業支援をさせて頂いています。今年は政治からの賃上げ要請もあり、かなり久しぶりにベースアップが実現しそうな企業がいくつもありそうです。

経営者の立場からすれば、経費をいかに有効活用するかは至上命題で、賃上げをするからには、それが生産性アップや業績アップにつながることを望むのは当然です。
成果に見合った報酬を具体化した一例が成果主義であった訳ですが、最近の傾向として、成果と報酬をリンクさせることが、必ずしもその人の動機づけ、モチベーションにはつながりづらくなってきています。「お金がすべてではない」という話です。

私が接する経営者の方々だけでなく、多くの経営者は、成果を上げた人の給与がアップすることで、その人が「よし!さらに給与が上がるようにこれからも頑張ろう!」と思うことを期待するようですが、最近の思考は必ずしもそうではないことが多いように感じます。
もちろん給与アップは肯定的にとらえますが、そこから先のことは、どちらかといえば別問題です。

心理学の一説で、人間の欲求は不足しているものを補いたいと思う「欠乏動機」と、さらに自己実現を目指したいという「成長動機」の大きく二つに分類されていますが、給与というのは、この「成長動機」にはつながりづらいと言われています。金銭的な報酬には、もともとそういう傾向があると言われているものの、最近はその傾向が強まっていて、どちらかと言えば「欠乏動機」になってきていると言われます。

どういうことかというと、給与アップによって増すやる気というのは、あったとしてもごく短期間の一時的なものであり、あまり継続するものではありません。すぐに現状に慣れてしまい、それが既得権の当たり前のことになってしまいます。
一方で、給与ダウンや現状維持により、やる気を無くしてしまうということは往々にしてあります。その恨みは意外にしぶとく、人の心理の中にいつまでも残ります。

給与が上がったからと言って、それが確実にやる気につながるとはいえず、一方で給与が下がったりしようものなら、それは確実にやる気の低下につながります。
これは給与という「お金」の要素が、限りなく「欠乏動機」と化しているということです。

実は経営者の場合は、金銭的な上昇志向を持っていることが多いので、ご自身の経験と照らしたときにこういう心情をあまり理解できず、また昨今の会社の制度も、こういう前提では考えられていないことがほとんどです。

「せっかく給与を上げてやったのに社員から不満を言われた」という愚痴をお聞きすることもよくありますが、「お金」という要素が、必ずしも動機づけにつながりづらくなっているということは頭においておく必要があると思います。

最近のモチベーションの源泉は、個人の主観による部分が多くなってきています。この良し悪しは別にして、会社の仕組みとしてもマネジメントの手法としても、その対応は考えて行かなければならないだろうと思います。


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