2014年3月17日月曜日

良いことばかりではない「人前で褒めること」


最近は「褒めて育てる」ということがよく言われるので、それが苦手ではあってもできるだけ褒めることを心掛けている人が増えてきたように思います。

褒め方というのはなかなか難しいもので、それに関する書籍や「良い褒め方」のような情報がたくさん出ていますが、そんな中の一つに、「褒めるときはできるだけ人前で」というものがありました。

人間が持つ「承認欲求」を満たす事ができて動機づけにつながりやすく、それと同時に上司としての褒める基準や価値観を、部下に伝えることができるからだそうです。褒められなかった人の対抗心を刺激するということもあるのでしょう。

ただ、私が現場でいろいろな人たちに接している中での実感として、人前で褒めることには、少々気遣いが必要な場面が増えていると感じています。どちらかといえば、人前で褒めない方が良い比率が多くなっているように思います。

どういうことかというと、一人を呼んで褒めていれば、その人が上げた成果や行動を、“絶対評価”で認めていることになりますが、これを人前で行ったときには、その場にいる他の人との“相対評価”に変わってしまうということです。褒められた人の行為そのものを褒めているというより、他人との比較による差、優劣を基に褒めていることになってしまいます。

誰かを人前で褒めれば、褒められたその人を見ている周りの人が存在する訳ですが、人間というのは、そもそもが他人との差に敏感な生き物です。

他人と比較され、相手が持ち上げられることで起こる感情というのは、私が思いつくだけでも「羨望」「対抗心」「劣等感」「ねたみ」「不公平感(ひいき)」「あきらめ」など、必ずしも前向きなものばかりではありません。いや、どちらかと言えば、「対抗心」以外は、前向きに何か行動しようという感情ではありません。

そうなると、人前で褒めることが効果的な事柄というのは、ある条件に限られてくると思います。その条件は、“誰でも褒められる可能性”があって、“その基準が公平である”ということになるでしょう。

こう考えると、褒めるときにはその対象者を個別に呼んで褒めた方が良いということが、圧倒的に多いのではないかと思います。

褒める大事さばかりが強調されるあまり、褒めることで天狗になったり調子に乗っているように見えてしまう場合もありますから、「本当に褒めることで成長するのか」と疑問を持っている人もいると思います。ただ、その原因の中には、「褒め方」に関する問題も潜んでいるのではないかと思います。

褒められる人がいる反対側で、プレッシャーを感じたり、傷ついたり、マイナス思考に陥ったりという人もいます。

他人と比較されることやライバル関係をエネルギーにして出世したような人ほど、他人との比較を公にしたがる傾向があります。でもこれは、必ずしも万人のモチベーションにはつながらないということは、十分に意識をしておく必要があると思います。


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