2020年11月16日月曜日

現場が「変わる必要がある」と思わないから変わらない

ある会社で、その将来に危機感を持って、組織風土改革を進めなければならないとして様々な取り組みをしていますが、なかなか成果が出ないと悩んでいます。

 

危機感を持っているとはいうものの、会社の業績自体はそれなりに伸びてきており、斜陽産業という業界でもないので、これまでの延長線上で将来像を描くことは十分にできます。

確かに安心の明るい未来というほどではありませんが、それはどの会社でも同じことで、この会社が特に危ういというわけではありません。今の段階で直面している大きな問題はなさそうです。

それでもこの会社の経営陣は、新たなビジネスを模索しなければならない、そのための人材獲得や育成を進めなければならない、そんな変化に対応できるように組織風土を変えていかなければならないという感覚を強く持っています。

 

ただ、そこでの社員との温度差は、どうもかなり大きいようです。部長クラス以上の管理職ですら、経営陣からいろいろ言われることに最低限の行動だけはするものの、本音では今のままでいくとまずいとは思っていない様子があります。

現場社員の意識改革によって組織風土改革を進めようと、外部のコンサルティングを受けたり、研修を実施したり、社内活動による取り組みをしたり、会社としてはいろいろな工夫をしていますが、なかなか芽が出るものがありません。

 

こういう話は私の経験上でもときどき聞くことがありますが、その理由は単純で「当事者の社員は変わる必要が無いと思っているから変わらない」ということです。

多少制度や評価が変わっても、部署異動などがあったとしても、仕事内容はあまり変わらず、要求される能力も変わらず、結果もそこそこ出ていて、それなりの報酬が得られているとなれば、そもそも変わることへの必然性はありません。逆に今のままの形を続けていた方が、個人的な安心、安全は保たれそうだと思うでしょう。そういう中でいくら危機感をあおっても、社員には切迫感も必要性もありませんから、風土改革は進まなくても当然です。

 

組織風土改革は、ただ「変わりましょう」「変化が必要です」とふれまわるだけでは難しく、例えば会社が取り組む事業自体が変わった、要求される仕事内容が変わった、資格を持っていないと仕事ができなくなったなど、実務上で具体的に変わらなければならない状況が、自分に降りかかってきて初めて動き始めるものです。

 

危機感を共有することも大事で、もし業績悪化が明らかならば、自分の報酬にも直接影響が出てきますから、そういう身近な変化で危機感は共有されます。そこまででなくても、会社が具体的な危機を提示して発信し続けると、社員の意識は変わらざるを得なくなります。

要は、先に身近な変化を起こすことが、組織風土改革につながっていくのであって、変化が起こる前に風土を変えようとしても、それは難しいということです。

 

外資系企業では、様々な場面で「変化することに慣れている」と感じることがあります。社長が変わるとすべての仕事の進め方が変わるとか、上司が変わると部門運営のしかたが全然変わるとか、日常的にいろいろな変化が起こって、自分たちもそれについていくことが当たり前になっている様子から、そういうように見えるのではないかと思います。

 

人間をはじめとした生き物は、変わる必要がなければ自分から変わろうとはしないものです。その方が生き延びられる確率が高いからで、変化をする時は自分の生存が脅かされるような環境変化が起こった場合に限られます。

組織風土改革は、それ自体を目的化するのではなく、改革が必要と感じる変化を起こすことから始めることが大切ではないでしょうか。

 

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