2020年11月23日月曜日

必ずしも同じではない「決断の速さ」と「実行するまでの速さ」

変化が激しく、何事でもスピード感が大事だといわれる時代ですが、このあたりはその企業の体質によって、結構差があるところです。

「決断の速さ」という点でいえば、やはりオーナーシップが強い企業、ワンマンや少数の実力者で組織運営がされているような企業の方が速い傾向があります。基本的には個人の判断で、承認プロセスがありませんから、何か承認してほしいことがあるときに、社員たちは「社長をOKさせるにはどうするか」といったことを考えます。周りの人たちの意見を固めて、社長に納得させるという手段を取ることがありますが、これも承認プロセスというほどではなく、大企業のそれに比べれば決断のスピードは圧倒的に速いでしょう。そのかわり、議論の余地がない決定事項が、上から降りてくることもよくあるでしょう。

 

ただ、決断が速ければその先も早いかというと、必ずしもそういうことはありません。トップダウンで決定事項が指示されるような時ほど、それを実行するまでには時間がかかることがあります。断する際に、現場の実情が考慮されていない場合が結構あるからです。これはわからなくても仕方がないときもありますし、強引すぎると思われるときもあります。

 

何か施策を進めるとき、全体のスピード感を高めるには、「決断の速さ」だけでなく、「実行するまでの速さ」も重要になります。そのトータルが「施策のスピード感」になる訳ですが、どうも決断の速さ」ばかりが取り上げられることが多いのが気になります。

決断するうえでの判断材料には、それを実施するまでにはどのくらいの時間と労力がかかるのかも考えなければなりませんし、さらに定着するまでにかかる時間というものもあります。

うまくいかない施策というのは、だいたいがこの実施するまでの時間と労力を低く見積もっていて、決断後は「これくらいできるだろう」「頑張れ」「サボるな」などと、尻を叩いたりハッパをかけたりすることに終始しています。優れたリーダーは、自分が決断しなければならない時に、この「実行するまでの速さ」までを的確に考えて決断しています。そこで、自分の決断を速めるためには、日頃から現場の様子を知り、意見を聞き、情報を集めておかなければなりません。そのための仕組みや場の設定、個人的な信頼関係も含めたコミュニケーションが必要です。

 

なぜあらためてこんなことを思ったかというと、昨今のコロナ禍で出てくる国の政策が、どうもこの「実行するまでの速さ」に関する意識が薄いような印象を受けているからです。いろいろな努力はされていて、難しい事情がいろいろあるのはわかりますが、表面的に見えるのは、その時点の状況判断だけで施策を決断し、ただ「急げ急げ」と尻を叩くものの物理的にどうしようもないだけの時間がかかってしまって、トータルで見た「施策のスピード感」はどんどん失われているとの印象です。

また、途中で状況が変わってしまうというようなこともあり、そこで一度始めたことをやめる決断というのは一層難しく、いろいろなことがうまく進んでいないように見えます。

こんな様子は、会社の中での意思決定の場面でも、わりとよく見かけるものです。「見通しが甘い」「想像力が足りない」との批判はその通りですが、多くの難しさがあることも確かでしょう。

 

「決断の速さ」ばかりに目を向けてこだわるのではなく、そこからの準備を含めた「実行するまでの速さ」をトータルで見た「施策のスピード感」という視点で考えなければ、有効な施策は打ち出せません。

決断には時間がかかっても、決まった後に実行するまでが速いという、現場力が高い会社もあります。こういう会社で見たスピード感は、トータルでとても速いと感じます。

いろいろな場面での決断の様子を見ていて、そこではもっと全体像を意識することが必要だと思います。

 

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