2018年7月20日金曜日

「決めつけ」で起こるギャップが大きくなっている


ある会社の社長から、「最近の若い人は社員旅行とか嫌がるんだよね?」と聞かれました。
確かにメディアなどを通じての情報では、そういう人が増えているとか、実際に若手社員と話していても、そういう話はあります。

ただ、私の知っている会社では、今でも社員旅行をおこなっているところがたくさんあります。社員からの希望で数年前から始めたとか、業績次第で何年かに一度は海外に行っているとか、社員旅行に積極的な様子です。平均年齢がかなり若い会社もありますから、一概に「若い人が社員旅行を嫌がる」という訳ではありません。

「会社での飲み会」でも同じような話があります。そんな機会はほとんどないという会社がある一方、何らかの食事会、飲み会イベントを頻繁におこなっている会社があります。
私があるバーで出会った大学生は、もちろん友達とチェーン店の居酒屋にも行くけれども、何となく落ち着かず、お酒もおいしくないと感じるそうです。バイト代で月一回くらい、自分が飲みたいお酒を飲みにその店に来るそうです。周りの年上の人たちがいろいろ教えてくれるので楽しいといいます。

車に関する話もそうです。若い人が車に興味を持たなくなったと言われ、確かにそういう面はありますが、これは維持費があまりに高いので、そこまでして乗るかと言われると優先順位が下がってしまうとか、そんな経済事情も影響しています。レンタカーやカーシェアリングが普及して、あえて所有する必要がない状況もあります。
反対に、相変わらず「この車に乗りたい」と興味を持つ人はいますし、先日会った若者は、旧車と言われる古めの車に興味があると言っていました。

このように、「若い人は○○」とステレオタイプで決めつけてしまうと、実はそこから外れている人も大勢いて、なおかつそのギャップは、以前よりも大きくなっている感じがします。
一言でいえば「志向の多様化」ですが、ここをとらえておかないと、間違い方の度合いがどんどん大きくなるのが昨今の状況です。
これは、会社の人事施策の背景として、よく考えておかなければなりません。

いろいろな志向の人がいるからと言って、では昔のように「社員旅行」や「社員飲み会」といった会社行事をどんどんやればよいかというと、それらをうまくやっている会社には、私が見ていて必ず持っている共通点があります。それは「無理強い」や「強制」がないということです。さらにいえば、人間関係が良い意味でフラットです。上下関係の中で、責任に大きさに違いはありますが、理不尽な服従を求めません。

例えば、昔の社員旅行は、温泉に一泊するような宴会旅行が典型でした。この段階で、お酒が飲めない人は絶対に楽しくないですし、泊りとなると、子育て中の女性社員などは参加が難しくなります。
さらに、新入社員や若手社員はだいたいお世話係として雑用をまかされます。遊びに行ってもこき使われるのでは、あまり楽しくないでしょう。社長や役員クラスは、さすがに目いっぱい羽目を外すわけにもいかないので、一番気楽に楽しめるのは、部課長クラスの中高年社員で、しかも男性ということになります。
その当時は、人員構成や社員の意識として、これでよかったのかもしれませんが、少なくとも「参加した人みんなが平等に楽しめる」というフォーマットではありません。普通に考えれば参加したくない人が出てくるのは当然で、それを「会社行事だから参加しろ」というのは、無理強いや強制以外の何物でもありません。上下関係の露骨な押し付けも、行きたくないと思う大きな要素です。

今の時代に社員旅行をうまく活用している会社は、「参加者みんなが楽しめるにはどうしたらよいか」を、常に考えています。
これは食事会や飲み会でも同じで、社員が喜んで参加するような会社は、無理強いや強制をせず、参加した人がみんな同じように楽しめるように、お店の場所や食事の内容、日時の設定や雰囲気づくりに配慮しています。
参加者みんなが「良かった」「楽しかった」というから、次の機会が作れるのです。

いずれにしても、志向や趣味が多様化している今の時代で、ステレオタイプの「決めつけ」をしていると、勝手な自粛で機会損失していたり、配慮しているつもりが神経を逆なでしていたり、間違いの度合いが増幅しがちになっています。

こういう配慮ができるか否かも、俗に言われるダイバーシティ(多様な人材活用)の一環といえるのではないでしょうか。


0 件のコメント:

コメントを投稿