2020年8月3日月曜日

自称「裏切られやすい人」の話を聞いて感じたこと


以前、私の仕事とは関係がない場で紹介された知人ですが、その人の仕事の話を聞いていると、ご本人曰く「周りに集まってくる人から裏切られたり騙されたりしやすい」と言います。だから「人付き合いは慎重にするように心がけている」そうで、実際いくつかのトラブルも抱えているようです。仕事上の約束不履行のような話です。

ここまでの話では、何となく同情してしまうところですが、もう少し具体的に聞いてみると、実はこの知人の側に、大きな問題があるように思われました。
それは、本人は「約束」といっていることが、どうも先方からの社交辞令だったり、善意のサービスだったりするものを、自分に都合よく拡大解釈して、「話が違う」と言っている様子だったからです。

契約書のような書面があるわけでもなく、たぶん相手からは「話が具体的に進めば」「こんな構想もある」という仮定の話だったり、「前向きに検討します」「是非お手伝いさせてください」のような時間を置こうとする言葉だったり、「今度ご一緒に」といった社交辞令の言葉だったりするものを、本人は「仕事が決まった」「契約できる」「支援が受けられる」など、既定事実のように思いこんでいる感じなのです。そして、自分の思い通りに物事が進まなかったり、途中で話が頓挫したりすると、「裏切られた」と思っているようなのです。
そうなると、この人は決して「裏切られやすい人」ではなく、「裏切られたと勝手に思い込んでいる人」ということです。

そういう自分の一方的な「裏切られた」という思い込みが大きいとすると、この人の場合は、コミュニケーション上で最も重要な「相手との距離感」に問題があることになります。
「相手との距離感」をネットでちょっと調べてみると、たくさんのノウハウや考え方の情報があり、そのことにかかわる発達障害などもあるようでした。
そもそも他人との間で、誰にでも当てはまるちょうどよい距離感は存在しません。相手との関係によって千差万別で、正解はあって無いようなものです。それほど「相手との距離感」の取り方には難しさがある証拠であり、誰でも何らかの難しさを経験したことがあるでしょう。

いろいろ見ていく中で参考になったのは、特に職場やビジネス上の関係では、社交辞令や上辺の関係の比率がかなり高いという話でした。距離が近いようでも意外に離れているということです。そうなると、他人が自分の希望を一方的に叶えてくれるような、都合が良いことは、ほとんど期待できないと考えた方が良いでしょう。
そもそも他人に期待をしなければ、「裏切られる」ということは起こりませんし、本当にだます気満々で悪意を持って近づいてくる人さえ排除できれば、裏切られたり騙されたりすることはほぼありません。
ビジネス上の「相手との距離感」はそういうものだと理解していれば、自分から「裏切られやすい」などと思うことはないでしょう。

「相手との距離感」の取り方はうまいに越したことはありませんが、そのためにはコミュニケーション能力の有無が大きく、習得や改善には結構時間がかかったり、それが能力的に難しかったりする場合も出てきます。
その一方、ビジネス上の関係では、「他人に期待しないこと」を基本に置くようにすれば、それ自体は思考パターンの変化なので、気持ちの切り替えさえできればすぐに変えることができます。
「相手との距離感」に悩むことも、少しは減らすことができるでしょう。

この知人の言う「裏切られやすい」という話には、「相手との距離感」を見誤りやすい本人のコミュニケーション能力不足の問題がありました。
時間がかかってもコミュニケーション能力向上に取り組む必要はありますが、「他人に依存する」「過度に期待する」という思考を抑えれば、対人関係の悩みと被害者意識はずいぶん少なくなるのではないでしょうか。


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