2020年8月6日木曜日

「理想の上司」よりも、できる範囲の「良い上司」を目指す

ここ最近、たまたまですが、「理想の上司」という調査結果がいくつも目につきました。こんなにいろいろあるのだという感じです。

よくあるのは、「上司にしたい有名人」のランキングで、共通しているのは人当たりがよさそうだったり、面白かったり、どちらかといえば話しやすそうな、それでいて自分の意見ははっきり言ってくれそうな人たちです。怖そう、寡黙そう、決めつけられそうといった感じの人は一人もいないので、今求められているのは、そういう対応ができる上司なのでしょう。

上司のあるべき姿でよく言われるのは、聞く姿勢の話です。

穏やかさがあり、話をよく聞いてくれる「聞き上手」であり、意見をよく聞いたうえで、押し付けでないアドバイスをしてくれる人などと言います。

かつては、先頭に立ってどんどん引っ張るような、いかにもリーダーという人が理想の上司像に挙げられることもありましたが、今はそういうタイプはあまり好まれないようです。

しかし、今でも「リーダーは先頭に立つもの」と思い込んでいる人はいて、そこから生まれるギャップが、俗にいうパワハラ問題などを引き起こしていると感じます。

 

リーダーシップスタイルとして、この前者を「サーバント(支援)型」、後者を支配型」とする分け方があります。そして、最近望ましいとされるのは、「サーバント型」です。

これは、価値観の多様化や、デジタル技術の進歩に対して、過去からの積み重ねでは新しい発想が生まれにくく、上司の経験に基づいた指示・命令では対応できない課題が増えてきたことなどが、その要因とされています。上司には自分の経験にこだわらずに、若手からの発想を引き出すような姿勢が求められ、そんな「理想の上司」の特性には、この「サーバント型リーダーシップ」の要素が数多く含まれています。

 

ただ、そんなに都合良く、理想的な上司ばかりが世の中にいるわけではありません。上司の側だって、わかっていてもなかなかできないということはたくさんあるでしょう。特に見た目の雰囲気や人当たり、その他性格的なものは、努力しても変えられるものではありません。できないことはできないとして、その他のことで補完するしかありません。

部下が「理想の上司」を求めるのは勝手ですが、それはあくまで理想だということを理解しなければなりません。

 

これはある人の上司の話ですが、あまり喜怒哀楽を表情に出すことがなく、どちらかというと冷たい感じに見える人だそうで、実際に話していても淡々としていて、見た雰囲気のままだそうです。

よく「褒めて育てる」などと言いますが、この上司から褒められた記憶はないそうで、話しかけるのもちょっと勇気がいる感じだそうです。前述の「理想の上司」とは、ちょっとかけ離れた人です。

 

ただ、この部下の人が言うには、上司に報告したり相談したりすると、それがなぜうまくいったか、なぜダメだったのかを、上司の知見に基づいてとても論理的に説明してくれるそうです。そこでは「私ならこうする」などの意見も言ってくれます。ただし、とらえ方としてはとにかくダメ出しをされている感覚だそうで、この上司と仕事をし始めた最初の頃は、気持ちがへこむことばかりだったそうです。

 

そんな中、ある仕事が最終的にうまくいかず、落ち込んでいる中で嫌々報告しに行ったとき、いつもと同じく淡々と論理的に分析され、「こうすべきだったのではないか」と意見を言われ、最後に一言だけ「まあ次だね」と言われたそうです。何かその一言が、自分を応援してくれているような気がして、少し気が晴れたそうです。

「理想の上司」には当てはまらない部分が多い上司ですが、部下は「仕事のことでは、とても勉強になる」と言っています。

 

よく言われる部下指導の心得として、「ネガティブなこと」はあくまで論理的に説明し、「ポジティブなこと」は感情を交えて伝えるというものがあります。例えば、ダメだしするのは感情にとらわれずに論理的に説明し、最後に「期待しているよ」「君ならできるよ」などと前向きな感情を伝えるというようなことです。

前述の上司も、もう少し感情を伝えることができれば、「理想の上司」に近づくのでしょうが、たぶん感情表現は苦手な人なのでしょう。照れくさいのかもしれませんし、すごくドライなだけかもしれません。それでも部下からは「良い上司」として認められています。

 

「理想の上司」は話半分で、部下に対して自分ができる範囲の「良い上司」を目指すことが、現実的でより良い取り組みではないかと思います。

 

 

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