2016年1月6日水曜日

「全額会社負担」が効果的ではなくなってしまうこと



少し前のことですが、ある会社が久しぶり社員旅行を実施するということで、その場に参加させて頂いたことがあります。

その会社では、かつては社員から会費を集め、費用の一部を会社が補助する形で様々なイベントを実施していましたが、会社の業績上の問題などがあって、様々な行事は一時中断することとなっていました。
その後徐々に業績も持ち直し、あらためて会社行事を復活させようということで、会社の旅行を企画したということでした。

社員旅行自体は久しぶりの実施ということもあって、それなりに盛り上がり、みんなが楽しむことができたようでしたが、その中でちょっと気になる言葉を耳にしました。
それは一部の社員が言っていた、「昔の方が豪華だった」「会社はケチっている」という話です。

社長をはじめ、会社側としては、「これまで社員には頑張ってもらっていたので、少しでもそれに報いたい」「できるだけみんなで楽しんでもらいたい」「それをこれからの活力にしてほしい」などという思いがあり、今までやむなく中止していた社員旅行を復活させることで、社員のみんなが少しでも喜んでくれればと考えていました。
この思いに対して、ほとんどの社員はその気持ちに素直に感謝していましたが、一部にはそうでない人もいたということです。

これと同じような話は、私の経験上では、いろいろな会社で何度もあります。会社としては、相当に頑張っての負担であるにもかかわらず、社員はそこに有難さや感謝の気持ちなどはあまり持っておらず、逆に不平不満を言っているような場合です。

実は同じようなことは海外の企業でもあり、例えばシリコンバレーの有名IT企業では、社員食堂でのランチの無料提供をしているところがいくつもありますが、これを「おいしくない」と批判するような社員がいるそうです。

これらに共通することは二つあります。
一つは、始めの頃はありがたみを感じていたことでも、それが継続されて当たり前になってくると既得権益になってしまうということ。もう一つは、自分が一切お金を出さないとなると、既得権益の感覚が強まるということです。
 
 ある会社では、全額会社持ちの豪華な宴会をやったのに、社員は当たり前のように飲み食いをして、何のお礼もなく帰ってしまったと社長が嘆いていたことがありました。
 その後この会社では、金銭的には社員負担と会社負担のバランスをとりながら、行事の企画自体は社員に任せる形をとったところ、既得権を主張するような物言いは一切なくなっていきました。

 これはあくまで私の経験上ですが、「全額会社負担」だからといって、余計に社員から感謝されることはありません。また、それを定常的に行うほどに既得権益になってしまい、効果は薄れます。
これを防ぐには、ある程度の費用を出させるかわりに企画内容を任せたり、会社補助を定常的に決めないことで既得権にならないようにしたり、方法はいろいろ考えられます。

かかる費用をただ会社が全部負担したからといって、みんなが喜ぶわけではありません。せっかく用意した会社の予算です。効果的に使うにはそれなりの演出も必要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿