2012年8月17日金曜日

帰属意識

以前、あるIT関連企業に属しているコーチングの専門家の方とお話しした時のことです。

某大手食品飲料メーカーで、全社的にコーチングの手法を取り入れ、社長から率先して研修を受けるなどトップから率先して取り組んでいる企業があるそうです。今の環境下でも堅調な業績の超有名企業ですが、その方曰く、「このような会社の取り組みが確実に業績向上に貢献している」とのことでした。

しかし同時に、「自分の会社で同じ事をやっても、これほど浸透して良い結果にはならないと思う」ともおっしゃっていました。その方がいろいろな話を聞く中で、一番感じた違いというのは「会社への帰属意識」だそうで、その某大手企業では、自分の会社や作っている製品など、自社が大好きな人がとても多く、帰属意識が高いと感じたそうです。

これに対して、特に受託ビジネス中心のIT企業というのは、一般的に客先での作業が多かったり、少人数のプロジェクト制だったりと、会社とのつながりが希薄になりがちな業務形態が多いので、会社への帰属意識は下がりこそすれども、高まる要素は少ないという環境です。
こんな中で、仮に同じようにコーチングの手法を入れようとしても、なかなか定着せずに同じような成果を得ることは難しいと思う、とその方はおっしゃっていました。

私も「他社の成功事例を持ち込んだからといって、必ずうまくいくとは限らない」に関しては全く同感で、その要素として「帰属意識」の問題があるというのは、それなりに納得がいく部分です。帰属意識が低い状況では、会社主体の取り組みに積極的にかかわろうとするはずも無いでしょう。

「帰属意識」というのは、言い換えれば「愛社精神」とも言え、人の心の中での感じ方の問題なので、何に魅かれるかは人それぞれ、周りからコントロールするのは難しい部分です。
関係する要素として、事業内容、職場環境、人間関係、給与などの処遇、自社のブランドイメージ、社会的ステータス、その他考えられることはそれこそ際限なくありますが、「帰属意識」を高めていくには、これらすべてに関して原理原則に則って少しずつ向上させていくしかありません。

ただ、私は「帰属意識の落差」という問題も感じています。みんな初めは「この会社なら・・・」と思って入社するはずなのに、それが入社後に大きく落ちてしまうというケースです。

私の経験では、この場合、採用活動の進め方に問題があることが多いと感じます。入社前の情報提供が不足していたり不適切だったり、自社の価値観に共感してくれるか、入社後のイメージ違いが許容できるかどうかなどの、自社との相性の判断が甘かったり、「この仕事に就けられる」などと目先の皮算用で判断して本来の資質を見誤っていたり、いろいろなケースがありますが、やはり入り口はとても重要です。

やはり人間は感情の動物であり、感情にはすべての事柄が影響しますから、もしかすると採用活動を見直すことで、会社への帰属意識が高まり、様々な施策の効果が得られやすくなったりするかもしれません。

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