2020年1月16日木曜日

「終身雇用見直し」は「会社の既得権」も見直さなければならない


ここ最近、経済団体トップや経営者から、「終身雇用」や「年功賃金」はもう限界で継続できないとする発言が続いています。
特に中高年層の社員に対して、「貢献度よりも高い賃金を払い続けることはできない」「貢献度の低い社員を抱え続けることはできない」と言っています。

企業として、今の経営環境の厳しさからすれば、そういう流れは仕方がないでしょうし、貢献と賃金が一致しないような仕組みは、特に優秀な若者にとっては好ましいものではありません。また、グローバル化が進む中では、人事制度も世界標準に合わせていかなければ、海外人材を取り込むことも難しいでしょう。

ただ、この「終身雇用見直し」について、「今まで会社が社員を守ってきた」という文脈だけで語るのは、私は大きな違和感があります。「終身雇用」を維持してきたのは、決して社員だけを思って尽くしていたわけではなく、それが会社にとっても都合が良い側面がいろいろあったからです。

例えば、「終身雇用」と「年功賃金」は、働き手にとっては将来に渡って生活が保障される安心感がありますが、賃金支払いは「後払い型」とされています。若いうちは安い賃金で働く代わりに、子供の教育などで生活費負担が増える中高年に、賃金が上がっていくという仕組みで、会社は社員に先に借りを作っている形になります。

会社側から「終身雇用」を放棄するということは、「今までの借りはなかったこと」と踏み倒すようなもので、特に若い頃の借りをこれから返してもらうはずの40代、50代という人たちにとって、急なゲームチェンジは理不尽そのものです。何かしらの配慮は必要でしょう。

また、社内の人事異動について、今の日本の判例では、会社側が大きな裁量を持っています。多くの社員が社内ゼネラリストとして扱われ、配属、勤務地、仕事内容など会社に指示に従わざるを得ませんが、それは「将来まで生活の面倒は見るから、そのかわり多少のことは我慢してね」という前提の話があります。
専門性が失われるような職種変更や、生活基盤を揺るがすような勤務地変更は、「終身雇用」で将来まで生活の保障があるから受け入れられるのであり、ここにも長期にわたる貸し借りの関係があります。
もし「終身雇用見直し」を言うのであれば、これら会社側の裁量も見直さなければならないはずです。

さらに、副業禁止は「全部面倒を見るから会社の仕事に集中しろ」ということですが、それができないならば、禁止を言う資格はありません。「過重労働を助長する」などという会社側からの指摘は、確かにそういう問題はあるにしろ、私は言えない立場からの負け犬の遠吠えのように聞こえてしまいます。

長期雇用によって、社員はあまり学ばなくても仕事に支障はありませんでしたが、会社側も教育投資を抑えることができていたはずです。
これからはお互いにそうはいきませんが、社外で学ぼうとする社員に良い顔をしない会社は、今でも思った以上に多いです。ある社会人大学で聞いたことですが、学生の7割近くは「知らせるといろいろ面倒」という理由で、会社に内緒で受講しているそうです。

「終身雇用見直し」は、これから間違いなく進むでしょうが、それが前提で成り立っている「会社の既得権」も、同じように見直さなければなりません。どんなことでもそうですが、お互い様であることに気づき、ウィンウィンを考えなければ成り立たないことがたくさんあります。


2020年1月13日月曜日

シニア男性の「マウンティング」で思ったこと


「マウンティング」という言葉を、最近よく聞きます。本来の意味は、動物が自分の優位性を表すために相手に馬乗りになる様子ですが、人間関係では、自分の方が立場が上だという主張やアピールすることをいいます。
他人と比較をして少しでも“自分が上である”ということを確認して優越感を持ち、自尊心を満たす行為です。

ここ最近、自分の身近で「マウンティング」のような態度に出会う頻度が増えた気がします。相手は私と同世代か、それ以上のシニア男性がほとんどです。気のせいかもしれませんが、そんな印象を持つことがここ数年で急に増えました。

よくあるのは、私の仕事にからんで「人事の仕事は自分もやってきた」とか「人事は経験があるから難しさがわかる」などと言ってきて、その裏側には「自分だってそれなりに知っているぞ」「対等レベルで話せるぞ」と張り合うニュアンスが含まれていることです。他にも「昔の自分たちの方が優れていた」とか、自慢話のようなものもあります。

最近何か変化があったのかと考えて思い当たるのは、接する人たちの年齢層の変化です。単純に自分も年を取っているので、それに合わせて周囲の人も年齢が高くなってきますが、それまで接することがあまりなかった役職を降りた人や定年で仕事を離れた人、引退した人が増えて、それに伴って様子が変わってきたように思います。

「マウンティング」をする理由は、他人との比較で“自分が上”と確認することで優越感を持ち、自尊心や承認欲求を満たすためだといわれます。自信がない、見下されたくないという気持ちを覆い隠すためだともいいます。
これらは自尊心が満たされていない裏返しの行動とも言えますが、確かにそうなってしまうような要素はたくさんあります。仕事で中心から外されていくような状況はそうですし、家庭での状況は人によって違いますが、仕事と会社にどっぷりつかっていた人ほど、家では居場所が見つけられないような話もよく聞きます。
いろいろ考えると、「マウンティング」でもしていないと、精神的なバランスが取れない人が大勢いるのかもしれません。

そんな「マウンティング」の様子を見ながら気になるのは、70歳定年とか、シニアの就業機会を増やすとか、働き続けることを要求していながら、その気持ちを阻害する仕組みがたくさんあることです。シニア男性を一律に社会から切り離していく仕組みが、未だにいろいろ機能しています。
例えば、役職定年では一定の年齢でその人の能力に関係なく肩書がなくなりますし、ある年齢を超えると、仕事を頑張っても頑張らなくても給料は切り下げられます。そのうち定年になって、仕事は続けられても給料はさらに下がります。期待されるよりは、「早く辞めろ」という追い出し圧力の方が強まります。
ここから生まれる「働かないオジサン」は、もちろん本人の姿勢にも問題はありますが、会社がそうなるように仕向けているところもあります。

「マウンティング」の行動を一切しない人の方が、もちろん圧倒的に多いですが、そういう人たちは、自分が生き生きと気持ちよく過ごせる場所を、何か必ず持っています。会社に依存せずに仕事を続けている人や、自分なりのコミュニティの中で趣味やボランティアに取り組む人など、自尊心も承認欲求も満たされている人たちです。

無用な「マウンティング」をすることを、私は反面教師として絶対しないようにと心がけていますが、そうなってしまう人の気持ちもわからなくはありません。
これからシニアの活躍を求めるならば、もう少し考え直さなければならないことがあります。シニア男性の「マウンティング」の姿を見ていると、よけいに思います。


2020年1月9日木曜日

私が見てきた「育てられないリーダー」の6パターン

いろいろな会社でときどき聞くことですが、「あの人(リーダー)は人を育てられない」という話があります。「部下をつぶす」とか「部下がすぐ辞めてしまう」などと言われていることもありますが、そういうリーダーたちの様子を見ていると、いくつかの共通パターンがあります。
あくまで私の経験上なので、学術的なエビデンスなどはありませんが、思ったことを6つ列挙してみました。

1.褒められない人
人材育成では「褒めること」が大事だと言われるようになってから、ずいぶん時間が経ちますが、やはりなかなかできないリーダーが多いようです。
ただ、最近はまったく褒めないわけではなく、自分なりの部下の良いところを見つけて褒めようとはしているのですが、多くの場合で「それ以上のダメ出し」とセットになっています。褒めることはおまけで、主題はダメ出しになっています。
この場合、リーダーの方は「自分は結構褒めている」と思っていますが、部下の方はまったく褒められたと思っていないので、自己肯定感が生まれずやる気も失っていって、結果的に成長できない状況に陥ってしまいます。

2.怖い人
威圧的な態度や言動をする人、感情的に怒ったりする人のことで、部下からすればできるだけ接点を減らして会話したくない人です。これは「厳しい人」とは違います。
「厳しさ」とは、会社であれば高い目標レベルの要求や困難な取り組みが本来であるのに対し、「怖さ」というのは単なる恐怖心です。
私の知人で、とても物腰が柔らかくて腰が低いリーダーがいますが、部下への要求レベルは高いです。部下のレベルに合わせて、ちょっと頑張らないと届かない目標を常に設定して、押したり引いたりしながら、その達成を支援する感じですが、本当の「厳しさ」とはこういうことです。
接し方のキツさや威圧することを「厳しさ」と勘違いしている人は、今でも意外にいます。それでは人は育たないでしょう。

3.結果主義の人
これは業種や仕事のスタイルによっては許されることもありますが、多くの場合で「結果しか見ない」というリーダーのもとでは、あまり人は育ちません。
例えば、個人で仕事が完結する営業職などでは、純粋な結果主義の方が公正に評価できる場合があります。ただし、そういう場合は、個々の社員が個人事業主的な考え方で、スキルアップは自己責任と考えているので、そもそも他人を育てようという文化ではありません。
やはり組織やチームで動く環境の中であれば、人材開発、部下育成は必須であり、そこでは結果だけでなく、途中のプロセスも評価しなければなりません。育成で重要なのは「良いプロセスを身に着けること」です。

4.世話好きな人
「世話好き」は一見すると良さそうな気がしますが、言い方を変えると「何でもやってあげてしまう人」です。私が見てきた中では女性のリーダーに多かったですが、「仕方がないなあ」などと言いながら、仕事を引き取って自分でやってしまうのです。要は「任せない」「権限委譲しない」という状態で、部下は過保護にされた子供のようなものです。それではやはり成長は遅くなります。
ただし、このタイプのリーダーは、本人が気づくことで劇的に改善します。「まず任せてみる」「最後までやらせてみる」ということができるようになると、もともとの「世話好き」というという特性が活きてきます。
人材育成では、やはり本人にやらせることが大事です。

5.他人の成長に興味がない人
結果主義と近いかもしれませんが、部下育成自体に興味がないリーダーは、少ないながらも存在します。それで許される組織はあるでしょうが、多くの会社では「リーダーに不向きな人」となるのではないでしょうか。

6.自分基準の人
自分の能力を基準に相手を指導しようとする人で、「なぜこんなことができない」「これくらい常識」というのが口癖のような人です。自分基準なので、自分が得意なことには厳しく、不得意なことは甘くなったり無視したりすることがあります。
仕事ができるリーダーに多いですが、「名選手は名コーチにあらず」ということになるのでしょう。
相手への寛容さと、その人のレベルに合わせた指導が必要でしょう。

最後に、この6パターンに合致するリーダーは、たいがい無意識か、場合によっては良かれと思ってやっています。自ら気づくのは難しいので、周りの誰かに確認してみると良いでしょう。

いずれにしても、人材開発、育成は本当に永遠のテーマです。