2017年5月26日金曜日

「シニアの横柄」が誰でも起こる老化現象ならば、会社で考えなければならないこと



これは、決してシニアを悪くいうつもりではなく、幅広い年齢層の人がお互いハッピーに働くためには、必要かもしれないと思ったことです。
ある会社のマネージャーですが、配下にいる50代半ばの契約社員の男性に手を焼いています。
この契約社員が担当している業務は、比較的定型的でルーチンなものなので、よほどのトラブルでもない限りはただ進み具合だけをチェックしておけばよく、マネージャーとしての日常的な指示はいりません。

問題なのは、月次の報告資料や申請書、精算書のたぐいの事務的な書類など、会社所定の事務処理をなかなかやらないのだそうです。「こんなものは不要だ」「面倒だ」「別に精算してくれなくてかまわない」など、ああだこうだと理屈を言ってきます。
「こんな人は放っておけばよい」という考え方もありますが、会社のルールとしてはそう簡単に割り切ることもできません。最終的には何とか書類を書かせて終わりますが、翌月にもまた同じことを繰り返します。

毎月のよけいなやり取りでマネージャーは憂鬱な気分になり、「そもそもなぜこの程度のことを嫌がるのかの理由がわからない」と言っています。私もそう思います。

こういう行動の理由を考えてみると、もしかするとこういう態度を取ることでマネージャーにかまってほしいのかもしれませんし、年とともに事務処理がおっくうになってきて、本音でやりたくないと抵抗しているのかもしれません。

「シニアの横柄」というのは、老化現象の一つとして、「理性が欠如していく」という脳そのものの問題もあるようで、年齢とともに理性をつかさどる前頭葉の機能、感情を制御する機能が落ちていき、それまでは脳の機能で抑えていた、性格的にわがままな部分が表に出てきてしまうということもあると聞きます。

少し前の新聞記事に、「シニア層の横柄な態度に憤り」というものがあり、そこでは深夜の居酒屋でシニアのグループがグラスを割ってしまい、破片を拾っていると客の女性から「早くふいてちょうだい」と居丈高にせかされ、謝罪の言葉はまったくなかったという話がありました。
鉄道で暴れたり、店員に切れて暴言を吐いたり、ちょっとしたことも待てないといったシニア層の行動は、確かによく目にします。私自身も気をつけなければと常に思っていますが、年とともにこうなってしまうのだろうかと不安にも思います。

ただ、こういうことはみんなに起こることで、これからもまだまだ高齢化が進み、生涯現役のようなシニア層が増えてくると考えると、この人たちとも何とか付き合っていかなければなりません。それは会社の中でも同じことです。

何か良い対応の仕方がないかと、いろいろ調べてみましたが、「根気よく相手の求めていることをやっていくしかない」などとありました。無用に感情を刺激せず、根気よくコミュニケーションをとっていくということのようです。確かにそれが一番なのかもしれません。

ただ、会社においては、そこまで手をかける時間の余裕はありません。納得せずに怒りを持っていたとしても、なるべきことはやってもらわなければなりません。
そんな中で私が最近感じているのは、ことシニアに対しては、今までよりも「性悪説」の発想を強めた仕組みづくりをしていかなければならないのではないかということです。
あくまで組織のルールとして、本人が納得したかどうかにかかわらず、決められたことはやってもらうということで、マネージャーが「そもそも論」を吹きかけられることも、納得するまで説明する必要もなくなります。実際にこういうスタンスを取る企業も出始めています。

「性悪説」を取らずに済むならそれに越したことはありませんが、「シニアの横柄」が誰にでも起こりうる、老化に伴う必然ならば、それに見合った対応は考えていかなければなりません。
「シニア活用」が言われる企業においては、特にそうだと思います。


2017年5月24日水曜日

短所を“直す”のではなく“行動を足していく”



よく長所と短所は裏表の関係だと言われます。
例えば、長所は「慎重」だが、短所は「作業が遅い」だったり、長所は「集中力」だが、短所は「視野が狭い」だったりしますが、結局は同じ特性を違う視点から見ているということでしょう。

特に日本の場合は、長所よりも短所に注目しがちなところがあります。ミスを減らす、不備や不具合をなくすなど、短所や欠点を少しでも減らそうと、様々な努力をします。

ただ、長所と短所が裏表ということからすると、短所を直せば当然その裏側にある長所も消えてしまいます。また、「短所を直す」というのは「苦手なことに取り組む」ということなので、どうしても時間がかかります。欠点の指摘、要はダメ出しからのスタートなので、あまりうれしい気持ちにはなりません。気持ちが乗りにくいので、取り組むスピードは更に遅くなりがちです。

こんなことから、あまり短所にとらわれ過ぎず、「長所を伸ばす」ということを中心にしようとか、「褒めて育てる」ということが言われています。実行されている様子を見ていると、確かにそちらの方が効果的に見え、一理あると思います。
その一方、短所にあえて目をつぶり、放置してしまっている感覚は、どうしても拭えません。

私がこんなことを思っている中、ある人から次のようなことを言われました。
「短所を直すと長所も減る」
「直すのではなくて、行動を足していけばよい」

「短所を直す」と考えると、どうしても「○○をしない」「○○に気を付ける」「○○をやめる」など、行動を抑制することが多くなります。全体の行動量が減っていき、それに合わせて長所にあたる部分も減っていってしまいます。

これを、例えば「慎重」が長所であったならば、それがプラスに働くような行動、取り組みを増やしていくということです。
スピード優先の仕事であれば、「慎重」という特性は「作業が遅い」となってしまいますが、「行動を足していく」という考え方をすれば、「慎重」ということが長所として評価される行動を増やしていくということになります。
行動の総量が増えて、さらにその増えた分が長所として見られるのであれば、短所の部分は相対的に見えなくなっていきます。

またこれは、本人がそういう努力をすることも必要ですが、上司をはじめとした周りの人が「適材適所」を考えることも重要になってきます。
ある会社では、営業職ではなかなか成果が出せなかった人を、営業管理強化という名目で、営業部門のバックオフィスに配置転換をしたことがありました。

「口べた」「人見知り」「交渉や駆け引きが苦手」という、およそ営業職には向いてなさそうな人でしたが、配置転換したことで、「緻密な細かい作業が得意」という長所が活かされ、部内のスケジュール管理や各種のデータ収集と取りまとめ、営業資料の作成などがスムーズになり、全体の売り上げアップにつながったということです。

苦手な営業で苦労していた経験から、例えばどんな営業資料があれば説明がしやすいかというような発想があり、その後様々な管理資料や営業資料がどんどんプラスして整理されていったそうです。
まさに「行動を足していく」を実践したといえるでしょう。

長所と短所の関係をみたとき、この「行動を足していく」という考え方は、私は理解しやすく効果もあるものだと思います。


2017年5月22日月曜日

「給与の見える化」や「360度評価」が難しかったこと



「同僚の給与を“見える化”したら、社内はどうなるか?」というコラム記事を見ました。

情報通信業のGMOインターネットでは、給与額の枠とリンクしている「等級ランクの公開」をしているそうです。
同社の人事評価では、6段階の等級とその中にランクがあり、この等級とランクごとに給与額の枠が定められており、自己目標の達成度に応じて給与が決定する仕組みとのことです。

この等級ランクを決めるのが、他部署を含めた、業務に関わる人たちによる匿名の「360度評価」で、会社の人事部は「等級に値する仕事をしているかどうか、保身的な低い目標が減り、次に自分は何をすべきかを考えて目標を立て、自分の立場に責任をもちながら仕事に取り組むようになった」と評価しています。
「360度評価の公平な評価によって不満がなくなった」
「給与額がオープンになったことで、仕事に責任を持つようになった」
という効果があったとのことです。

人事施策というのは、明暗の両面が考えられ、特に悪影響を懸念して躊躇することも多いですが、こういう成功事例ということのは参考になることです。

ただ、私が今まで見てきた「給与見える化」や「360度評価」は、必ずしもこんな好ましい状況ではなく、どちらかといえば失敗と言ってもよいものでした。

まず「給与の見える化」ですが、厳密には給与額を明らかにしたということではなく、「等級ランクの公開」ということでした。ただ、給与額のレンジは当然わかりますから、おおむね推測ができるということでは、「給与の見える化」と言ってもよいものです。

ここで起こったことは、とにかく“上司不満”と“評価結果への不信”の増幅ということでした。
この会社では、従来からの組織風土として、どちらかといえば情報格差や権威を使ってマネジメントしようとする管理職が多く、上司と部下の距離感も近いとはいえなかったため、これを打破するための制度改革ということでした。
しかし、蓋を開けてみると、そもそもの不振や不満の度合いが高く、なおかつ表に出ずに潜在化していたこともあり、「等級ランクの公開」がさらにそれらを増幅、爆発させてしまったということでした。
私にはこれらをどうやって修正、収束させていくかという相談でしたが、一度公開したものをまた元に戻すのでは、さらに不満が膨らみますから、評価制度の見直しやマネージャー教育などの施策をしながら、良い方向に向かうまでには数年の期間が必要でした。

もう一つ、「360度評価」については、ある会社がどうしてもやりたいということで、テスト的に実施したということがありました。わりとおとなしい性格の管理職が多く、自分の役割認識が薄いため、これを刺激したいという意図がありました。
そこで出てきた結果は、ある部分では人気投票、ある部分では一方的なダメ出し、またある部分ではちょっと高めの無難な採点など、あまり有用とは言えない評価でした。
評価項目や評価基準といったものは一応準備されていましたが、やはり他人を評価する経験が少ない一般社員に、ごく簡単なレクチャーだけで実施してしまったという問題がありました。
私がかかわったのは、ちょうどこの後のタイミングです。

このまま続けていけば、慣れで多少は改善される部分もあったでしょうが、「360度評価」の場合は、間で板挟みになる管理職へのプレッシャーが大きすぎるという課題もあり、ここでの導入は見送って、職制や部署をまたがって構成する「三者面談」の導入など、コミュニケーション強化の施策に方向転換をしました。

このように、同じような組み合わせで同じような施策を取ったとしても、その効果の出方は正反対になることがあります。
記事で紹介されていた成功例も、企業スペックを見るとわりと平均年齢が若いIT業界の会社ということで、その風土にうまくはまったということでしょう。他の要因も当然あると思います。

組織改革を進める上で、新しい取り組みをしなければ何も変わりませんが、自社に合わない取り組みでは、せっかくの苦労も台無しになります。
自社の状況をいかに見極めるかは、とても重要なことです。