2018年6月20日水曜日

「とりあえず3年」と考えることのリスク


最近は転職が一般的になりましたが、やはり短期間で会社を辞めてしまうのは、世間的にはあまり良いこととは思ってもらえません。転職回数が多かったり前職の在職期間が短かったりすることは、転職が当たり前の今でも、あまりプラスに見られないことの方が多いでしょう。

新入社員などであれば、「この仕事は嫌だ、向いていない」と思って転職を考えたとしても、「とりあえず3年」などとアドバイスをする先輩がほとんどかもしれません。それくらいの見極め期間がなければ、自分に合ったものを見つけることはできないし、初めは嫌だと思っても、やっているうちには実は向いていたなんてこともあるかもしれません。
私もあくまで一般論として聞かれれば、たぶん似たようなことを言います。

ただ、最近はこの「とりあえず3年」に代表されるような、「今の職場で様子を見よう」という行動が、逆にリスクになってしまうケースが増えています。勤続の長さがデメリットになってしまうことがあるのです。

ある大企業の若手社員が言っていたのは、「仕事を身につける速度が遅いのではないか」「仕事の範囲が狭いのではないか」という危惧でした。
確かに良い先輩はたくさんいるし、親切に教えてくれるし、会社全体の体制も整っているとは思うものの、自分と同年代で起業した社長や、ベンチャー企業で何でもかんでもやらなければならない友人たちを見ていると、自分のやっている仕事のレベルはそれに比べて低く、社内でしか通用しない狭い範囲のことではないかと思ってしまうようです。

実際に自分の周りを見ていても、10歳近く年上の先輩なのに、やっている仕事は今の自分と大差がなく、このまま会社に居続けて、自分が世間一般からどんどん遅れてしまうのが心配とのことでした。

この人は結局転職することを決断し、その転職先は今までの会社の100分の1にも満たない規模の会社でしたが、本人はそれまでにないイキイキした様子で仕事をしています。水を得た魚というのは、こういうことを言うのでしょう。前の会社によほどの閉塞感があったのでしょう。

この人が、もしも「とりあえず3年」と考えて行動を思いとどまっていたとしたら、たぶんその3年は、進歩がほとんど望めない無駄な時間になっていた可能性が大きいです。なぜかというと、この会社の上の世代の社員の仕事ぶりを見れば、人材を塩漬けにする傾向の強さが明らかだからです。

年齢構成がいびつな組織、仕事のやり方が古い組織、パワハラ傾向がある組織では、スキルアップの停滞が起こりやすく、社内価値重視のローカルな仕事の進め方によって、長く勤めるほど世間一般から離れてしまい、自分のキャリアへのリスクが増えていきます。こういう場合は「とりあえず3年」などと考えず、一刻も早く転職した方が自分のためになります。

最近、いろいろな人の話を聞いていて思うのは、世間で名の知れた歴史ある有名企業の方が、実は仕事の進め方の古さや非効率が多いことです。
古さというのは「ペーパーレスが進んでいない」「ITを活用しない」「手続き重視でスピードが遅い」などですが、それはその環境で働く人のスキル習得の機会を奪っているとも言えます。

「とりあえず3年」は、一般論としては確かにそうですが、それがリスクになるような会社が増えていることも事実です。
社会人人生が、仮に定年までの40数年とすると、3年というのはその一割近くにあたるわけで、決して小さな比率ではありません。
今の場所に居続けるリスクも、冷静に考えなければならない時代になっています。

2018年6月18日月曜日

「年配言葉なら許されるのか?」という指摘への納得


ある新聞の投書欄で、「年配言葉ならば許されるの?」という中学生からの投稿を目にしました。
「ヤバい」「ムカつく」など、いわゆる若者言葉を「言葉の乱れ」などという指摘がされますが、この投稿者は若者に通じない「年配言葉」というものがあり、それが不親切だという提起をしています。

「年配言葉」と言っているのは、一昔前のギャグ、最近あまり使わない古い言い回しなど、もっとわかりやすい別の言葉があるにもかかわらず、あえてその言葉を使って、それを若者が理解できないと、「こんなことも分からないのか」という言葉を浴びせるそうです。
確かに若者が無教養なのかもしれないけれども、同じ世代でしか伝わらないような言葉は、その人たちが批判している若者言葉と同じではないかと指摘しています。
世代の違いを批判するのでなく、もっとお互いの言葉の使い方を考えてみてはどうかと述べていました。

こういう話を聞いて、私はまったくその通りだと思います。
コミュニケーションというのは、相手の考えを理解し、自分の考えを相手に理解してもらうことですから、お互いが理解し合えるように歩み寄ることが必要で、「理解できない相手が悪い」などと、どちらかを一方的に批判するのは的はずれです。
世代の違いを批判するのは、だいたいが年長者から年下への批判ですが、それは何の解決にもつながりません。

同じような話は、会社の中でも本当にたくさんあり、例えばビジネスマナーなどでも論争になることがあります。

私自身を含めた周りでよくあるのは、「電話」にまつわる話です。
誰でも携帯電話を持つようになり、本当にいつでもどこでも電話がつながる環境ですが、だからといって、そんなにいつでも電話に出られる状態とは限りません。

私の場合は顧客へのコンサルティング、講演、研修、その合間の交通機関での移動、その他ミーティングなど、電話に出られない、かけられないタイミングが非常に多くなります。自分が主体で話さなければならない最中に、電話応対で割り込むことはできませんし、それをやってしまっては、目の前の相手に対して、とても失礼なことだと思っています。
電話のために中座したり、ところ構わず声を出して話すのも、あまり好ましい光景とは思いません。

逆にショートメールなどであれば、短時間の割り込みで対応できるので、その方が早く要件が済んで効率的なことが多いですし、やり取りをした記録が残ることも間違いを減らす上ではメリットです。個人的には備忘録の意味でも、文字でのやり取りが好ましいです。

最近は多くの人がそういうことを理解した対応をしてくれますが、そんな中でもいまだに電話偏重という人がいます。どう考えても電話で話さずに済む要件なのに、たぶんテキストをタイピングするのが面倒とか、そういう理由で電話をしてきます。
どちらかというと、やはり年配の人の方が多く、業界による違いもあります。

一昔前であれば、直接話すことが礼儀やマナーとして正しい、良いコミュニケーションだという考え方がありましたが、今は電話が「相手の時間を奪う行為」という考え方があります。相手の状況を問わずに割り込み、それにかかり切りにならざるを得ないからで、「電話野郎」などという言葉で批判する人もいます。

このように、言葉使い、マナー、コミュニケーションの方法などは、時代とともにどんどん変化していきます。
そして、その時点で「正しい」とされるものはありますが、例えば200年前の日常会話がたぶん今の世の中では通じないように、何が正しいのかという基準も、時代とともに変わっていきます。

そう考えれば、自分が「正しい」という前提による一方的な相手批判は、やはりあまり適切とはいえません。
投書した中学生が言うように、もっとお互いが考える必要があるのではないでしょうか。

2018年6月15日金曜日

気弱な人でも陥ってしまうパワハラの話


パワハラに関する問題を、特に最近は多くの会社で耳にします。
これはパワハラ行為自体が増えている、エスカレートしているというよりは、以前に比べて「自分がいやだ」と感じることに対して、ハッキリと声を上げる人が増えているためだと思われます。
逆にパワハラ行為をしてしまう加害者側の意識は、「これくらい・・・」「昔は・・・」の言い分に代表されるように、この変化について来られない結果のように感じます。

パワハラ問題を起こしてしまう人を見ていると、強引、強気、不遜、威張る、見下す、自己中心、攻撃的、権威的など、見るからにいかにもパワハラ体質という人は確かにいる一方で、一見するとそこからはまったく縁遠く見える、気弱そうな人も混じっています。

これはあくまで私の印象ですが、問題を起こす人はこの両者に二極化していて、「いかにも」という人だけでなく、「そうは見えない」というタイプの人も、結構な比率があるように感じます。
つまり、もともとの素養というよりは、立場、環境、責任などの後天的な外部要因が、そういう行動につながってしまっているのではないかということです。

ある会社であったのは、やや気弱なおとなしい性格で、どちらかというと自分に自信がないタイプながら、もろもろの事情で管理職に指名され、会社からはいろいろキツイ目標やノルマを課され、そのプレッシャーから、部下にそのまま強引な要求をしていた人がいました。

会社からこのマネージャーへの要求自体がパワハラ的だったということもありますが、要は他人をリードすることが苦手な人材に、無理やりその役割を与えて過度なプレッシャーをかけたために、そういう行動に陥ってしまったようでした。

「部下に無理な要求はしたくない」「でも立場上言わなければならない」。そんな環境に追い込まれて、それでもとにかく上から言われたことを部下にやってもらわなければという焦りがあり、さらに本人は自信がない、どう伝えればよいかもわからないということから、権威を使って無理して強い態度に出るしかなかったということでした。
言ってしまえば、その人の資質が適材適所に全く反していたことが問題の発端だった訳ですが、最近は人手不足、さらにマネージャー不足の傾向から、こういうケースはどんな会社でも多かれ少なかれあります。

ここで共通するのは、「過度なプレッシャー」「フォローの欠如」「一方的な丸投げの連鎖」です。
個人のキャラクターに起因するパワハラは確かに数多くありますが、心の余裕が持てない職場環境、組織の中に「課題をみんなで解決しよう」という姿勢や、お互いの立場を考えて協力する体制が欠けていることから生まれるパワハラがあります。

一番の問題は、もちろんパワハラ行為をしてしまう本人ですが、組織としての取り組みや職場風土の面から改善できることがあります。
つい個人の問題としてとらえがちですが、周りも当事者意識をもって考えることが必要ではないでしょうか。