2019年4月25日木曜日

これからのリーダーに必要な「いつでも機嫌が良い」という資質


ある会社の課長さんのお話です。40代後半くらいの男性ですが、いつお会いしてもとにかく機嫌がいい人です。

ただ明るいというのは違いますし、はしゃいでいるとかにぎやかとか、そういう感じでもありません。ただ、怒っていたり、強い口調で誰かを責めたり、何かブスっとして無口だったりという姿を見たことがありません。
良い意味で感情の起伏が少なく、いつも穏やかで、喜怒哀楽の「怒」はなくて、「哀」はきっとあるのでしょうが人前では見せないという感じです。決して優等生ではなく、人並みに遊び、あまり大きな声では言えませんが、こっそりサボったりもします。
当然のことだと思いますが、周りとの人間関係は良好で、彼のことを悪く言う人をまだ見たことがありません。
仕事の上では、エース格とまでは言えないものの、それなりに目標を達成し、真面目に課長の役割を全うし、部下たちからも信頼されています。

そんな彼に対して、会社や上司からの評価として言われているのは、いつも「厳しさが足りない」です。「毅然とした態度ができない」「叱れない」「命令できない」「甘い」などという指摘もされています。 
特に直属の上司が、昔ながらの体育会的な発想の人で、「リーダーがそれではダメだ!」と、よく発破をかけられています。

ただ、私はこの課長に対するそれらの指摘について、そういう考え方があるのは否定しませんが、賛同はしていません。
例えば、彼が課長という立場で会社指示を部下に伝えるとき、一方的に押しつける言い方はしません。できるだけ納得を得られるように、場合によっては個別に伝えようとしています。事情をよく説明し、意見や反論があればよく聞き、意識のすり合わせをおこないます。多少時間がかかっても、そこは手を抜きません。

また、実際に部下との間で、そこまで意見が対立することもありません。仕事でもプライベートでも、どんなことでも感情的にならずにきちんと相手の話を聞き、信頼を積み重ねてきているので、何かよほどのことがあっても「まあ課長が言うなら」と、部下の側からも歩み寄ってきます。
つまり、強い口調や命令、強制が必要でない関係を築いているから、見た目の「厳しさ」はいらないのです。にもかかわらず、それが「リーダーらしくない」というのは、画一的なボス型のリーダー像の押しつけです。

最近はずいぶん減りましたが、いつも「不機嫌そう」「怖そう」「威圧的」な雰囲気の社長や管理職を、まだまだ見かけることがあります。何となく近寄りづらいし、話しかけづらいですが、それがリーダーらしい威厳だという人がいます。
ただ、それはサル山のボスザルのように、相手を威圧して支配する原始的な組織であればいざ知らず、近寄りづらい、話しかけづらいなどというのは、自分に入ってくる情報が少なくなるということです。今のように変化の激しい時代で、得られる情報が少なければ判断を誤る可能性は高まり、それはリーダーとしての役割が果たせないことでもあります。

私はこれからのリーダーに必要な資質として、「機嫌が良い人」であることは重要だと思っています。誰ともオープンに接することができれば、情報が集まり、判断が正確にでき、早く納得が得られ、合わせて行動も早まるなど、個人としても組織としても、数多くのメリットがあります。いつも機嫌良くいるためには、何事にもカリカリ、イライラせずに、自分の心を整える能力が必要です。

ちなみに、40歳を過ぎた男性は、本人が普通にしているつもりでも、周りから見ると不機嫌に見えてしまうそうです。年を取るほど、意識的に機嫌を良くしていなければなりません。
この課長のように、「いつでも機嫌が良くいられる人」を、私はリーダーとして見習いたいと思います。


2019年4月22日月曜日

「自分の意思」で決められないから満足しない


今年のゴールデンウイークは、新天皇の即位に伴って10連休となりますが、時事通信が実施した「10連休に関する世論調査」によれば、4割が「うれしくない」と回答したとのことです。
「とてもうれしい」「まあうれしい」の合計36.5%に対し、「全くうれしくない」「あまりうれしくない」の合計は41.0%で、「関心がない」という回答も21.1%あったそうです。

年齢別では働き盛りの30歳代、40歳代に「うれしくない」の回答が多かったとのことで、「今後も国が主導して長い連休をつくるべきか」との問いには、「そう思う」の29.9%に対して、「そう思わない」が66.8%と、否定的な回答が多数を占めました。

うれしいと感じない理由には、「仕事を休めそうにない」「仕事に支障がある」といった答えが多かったようですが、「休めそうにない」は“休みたいけど休めない”ということ、「仕事に支障がある」は“休みたくないのに休まされる”ということで、思っていることは正反対です。ただ、どちらも自分の意思に反しているから「うれしくない」と言っています。

仕事内容によって、どうしても休めない人はいるので、それは仕方がありません。そうでなければ、この連休は前から決まっていたことなので、仕事は前もって調整すれば良いし、うれしくないなどと言わずに楽しめば良いと思うのですが、そう思えない気持ちもわからなくはありません。自分の意思に反することを強制されれば、それがどんなことであっても、前向きにとらえるのは難しいでしょう。
休日、休暇のように、本来は働く人にとってメリットであるはずのことでも、自分の意思で決められないと不満に思ってしまいます。

先日、こんな話もありました。
インデペンデント・コントラクター協会といって、「期限付きで専門性の高い仕事」を「雇用契約ではなく業務単位の請負契約」で、「複数の企業」と活動する「独立・自立した個人」の団体の会合で、今の仕事のやり方で何が好ましいかという問いに対して、「納得できない仕事をやらない自由があること」といった人がいました。

その場にいた多くの人が同意していましたが、それは私も同じで、企業勤めの人が不本意な仕事や一方的な異動命令、嫌な上司や顧客などの愚痴を言っているのを聞いていて、もっと自分でどうにかすれば良いのにと思う反面、雇われていればそう簡単に「自分の意思で」とはいかないのだろうとも思います。日本のようにまだ転職にハードルがある社会では、なおさらそうせざるを得ないでしょう。
「日本人の仕事への熱意は世界最低水準」という調査結果がありましたが、これは仕事の上でも「自分の意思」では決められず、会社からの強制の多いことが一因ではないでしょうか。

最近の組織・人事マネジメントの世界では、この「自分の意思」を尊重しようという流れがあります。社内フリーエージェントや公募、勤務地限定のような制度はそうですし、育成の場では簡単に答えを与えずに、一緒に考えて本人に答えを出させる方法がとられます。
上司と部下間で、目標設定やフィードバックを頻繁に行って、やる気を高めようという取り組みでも、「自分の意思」で目標を決定することが重視されます。

企業の中で「自分の意思」を尊重することは、これまでと同じ発想ではなかなか難しいですが、良い成果を得るためには一律もしくは一方的な指示、命令、強制だけでは立ち行かなくなっています。

海外の人は「仕事」の反対は「遊び」というのに対し、多くの日本人は「仕事」の反対は「休み」というと聞いたことがあります。にもかかわらず、「連休がうれしくない」などという話を聞いて、相変わらず休み方が下手だと思いながら、やはり「自分の意思」で決められていないから不満を持っていることも感じます。
休みでも仕事でもそれ以外でも、もっとお互いの事情を考慮し合って、「自分の意思」で決めて納得し合える社会になれば良いと思います。

2019年4月18日木曜日

“思い込み”で減らせない「無駄な会議」


「働き方改革」が言われ、様々な業務効率化が進められる中で、特に「会議」はやり玉にあがります。

グローバル企業を対象にしたある調査では、管理職の1週間の平均労働時間は46時間で、そのうち会議で23時間、メールやオンラインのチャットで10時間を使っていたそうです。じっくり考えたりできるのは、1週間で13時間しかないということですから、それでは仕事がはかどらないことでしょう。

会社によって実態に差はあるでしょうが、会議時間を短縮しようという話は当然の成り行きで、その取り組みは多くの会社でおこなわれています。よく聞くのは会議資料の簡素化や会議時間の制限といったことで、A4用紙1枚でパワポ禁止とか、60分以上の会議禁止、1週間の総会議時間数の制限、会議室予約の時間制限などの対策がありました。他にも着席しない会議で時間短縮を図ろうとしたり、テレビ会議で場所の移動を省いたりといったものもありました。
いずれも「“まず時間を制限すること”で無駄を減らそう」という発想です。

また他の調査では、こんな情報もありました。社内会議について、会社業績との関連を調べたものです。
1日の会議回数は平均1.4回でしたが、業績が上がっている会社は1.7回と、積極的に会議をしている様子があります。ただ、業績が下がっている会社は2.0回と、それよりさらに回数が多いようです。
1回の会議時間を見ると、平均68.2分に対して、業績が上がっている会社は67.2分と少し短く、業績が下がっている会社は79.5分と、平均よりも10分以上長くなっています。
大きく違うのは会議の内容で、業績が上がっている会社では「意思決定」「問題解決」「アイデア出し」といった目的の会議が多いのに対し、業績が下がっている会社では「情報共有、報告の会議」が最も多くなっています。
会議をやらないという会社もありましたが、ここでも業績が下がっている会社の比率が高くなっています。

つまり、会議は一定程度必要ですが、業績の下がっている会社は“目的のはっきりしない会議”を長時間おこなっていて、反対に業績の上がっている会社は、何かを決める、議論するといった“目的のある会議”を一定時間でけじめをつけておこなっています。
ここからすると、ただ会議時間を制限して「会議をやらない」というだけでは、業績低下の可能性もあるということで、会議の中身をよく吟味しなければなりません。

ここで「会議の中身を吟味しなさい」というと、そこにはかなりの難しさがあります。
社内会議というのは、大体誰かリーダーやマネージャーが仕切っていますが、本人たちがそれを無駄だと思うことはほとんどありません。無駄に気づいていないことも、自分たちのやっていることが無駄とは認めたくないということもあります。
参加者である部下やメンバーたちは、今までを当たり前に受け入れていて、無駄かどうかを考えること自体やめてしまっています。
こんなことから、当事者に「会議の中身を吟味しなさい」と言っても、時間や回数はほとんど減らせません。会社から指示する時間制限の取り組みばかりが多くなってしまうのは、仕方ない面があります。

ただ、意外に効果があるのか、少し手前みそになりますが、私たちのようなコンサルタントなど、社外の第三者からの指摘です。
私もいろいろな会社で数多くのミーティングや社内会議に参加しますが、「この会議は何の目的?」「この人数が集まる必要は?」などと尋ねると、実ははっきり答えてもらえないことがよくあります。そうなると皆さん急にいろいろ考え始めて、実際にコミュニケーション手段を変えて会議自体をやめたり、出席者を絞り込んだり、テーマを見直したりします。
意義を見失っているような会議はどこでもありますが、そういうものだと洗脳された思い込みが、客観的な視点からの一言で解けるのでしょう。

会社の仕組みの中には、なぜそうなっているのかが説明できなくなっているのに、「今まで通り」といって、ただ惰性で続けていることがたくさんあります。これは自力ではなかなか変えられません。

会議の効率化などを進めるには、「これが当たり前」「やるのが当然」といった、自分たちの思い込みから解放されることが、一番大事なように思います。