2019年4月4日木曜日

「根気の続かない人」と「融通が利かない人」


人事のご支援をしていると、特に中小規模の会社ほど、社員個人の評価が話題になることがあります。
どちらかと言えば、良い話よりは「困った」「どう処遇すればよいか」などという良くない話の方が多く、その人への対応についての、愚痴レベルの話から具体策まで様々です。

そんな中、数年前ですが、ある会社でこんなことがありました。
一人のマネージャーですが、身軽に様々な行動はするものの、周りの評価としては「最後までやり遂げない人」だといいます。新しいことにいろいろ手をつけるのですが、どれも中途半端で、大体が未完で終わってしまうそうです。
初めのうちは行動的ですが、徐々に対応が鈍くなり、きちんとケジメがつく前に根気が尽きてしまうようです。部下や周りの人に「後はよろしく」「任せた」などと言って、手を引いてしまいます。
会社としては、いろいろ指導してきたようですが、なかなか改善には至りません。

そんなマネージャーなので、重要な仕事や大きな部署は任せられません。組織変更で新たに異動した部署は、管理部門の比較的安定した業務の担当で、配下には中堅クラスの男性1名、シニアで短時間勤務の女性が1名という合計3名の体制です。

さらに、この配下の男性社員も、社内ではちょっと扱いに悩んでいる人材です。周囲の評価は「融通が利かない人」で、事務処理能力は高いものの、とにかく何か新しいことが苦手だそうです。変化を嫌がり、新しいことを極力避け、今までの仕事のやり方に強くこだわるので、今までの上司たちは、みんな手を焼いてきたそうです。

そんな問題の二人が同じ部署になったわけですが、会社としては意図的で、言い方は悪いですが「対外的な問題にならない業務で、問題児を一か所にまとめてしまおう」という発想だったようです。

しかし、そこで思いがけない化学反応が起こります。「最後までやり遂げない」マネージャーですが、その反面、新しいことへの好奇心は常に旺盛」です。新たな部署になり、既存の事務処理の流れがいろいろ気になったらしく、どんどん改善提案を出していきます。

また、「根気の続かない人」ですが、これも「根気が続いているうちはとても熱心」です。その配下にいるのは、とにかく新しいことが苦手で「融通が利かない」部下ですが、このマネージャーは自分の好奇心にまかせて事細かに指示をします。普通はあまりに細かい指示は嫌がられるものですが、この部下にとっての細かい指示は、とりあえずやることが決められていて、作業自体が見通せるので、逆に好ましいことでした。

そして、マネージャーの根気が続かなくなり、「後はよろしく」と言い出す頃になると、今度はこの部下の「融通が利かない」ところが長所になってきます。「決まったことを決められた通りに、確実に遂行、継続する」という面が活かせるのです。新たなやり方は確立し、あとは細かい工夫をしながら、コンスタントに作業を続けることが重要になるので、「融通が利かない」のは都合が良いことです。「根気が続かない」マネージャーは、すでに手を引いていてほぼ口出しをしないので、この部下は自分のペースで仕事ができます。

ちょっと計算外の偶然ではありますが、ここでの教訓は「短所は長所の裏返しであること」と、「個人の特性をうまく組み合わせれば組織の機能は上がる」ということです。
ちょっとお荷物扱いの社員の場合、どうしても排除の論理が先に立ちますが、その人の短所として見えていることは、使い方次第で長所になります。さらに、他の人との組み合わせ方次第で、長所の比率が増します。

今はちょうど異動の季節ですが、人材の組み合わせを工夫すると、人の悩みは意外に解決できることがあります。

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