2017年5月31日水曜日

つまずき気味の「プレミアムフライデー」をこれからどうするか



それなりのふれ込みで始まった「プレミアムフライデー」ですが、始まってから数回の今の段階で、もうすでに失速気味の感じがしています。

いろいろな企業で働いている人に幅広く聞いても、実際に利用したという人は少数派で、それも初回か2回目だけ、以降はあったことすら忘れていると言っています。

最も直近に、ジャストシステムが実施した調査の結果を見てみると、「プレミアムフライデー」を知っている人のうち、「月末という条件を変えた方がいい」という人が56.4%、「15時という条件を変えた方がいい」という人が51.0%、「金曜日という条件を変えた方がいい」という人が38.8%ということでした。

私の周りでは、天の声で一斉に実施するようなやり方自体を批判する人もいました。確かに同じ会社の同じ部門の中であっても、忙しい時期はその人その人によって違います。これを全社、全国レベルで合わせようとしても、そこにはかなりの無理があります。

ただその一方、日本では相変わらず有給休暇の消化率が伸びず、その理由には「自分だけ休むことへの後ろめたさ」があります。これが大企業であればまだましですが、一人一人の持ち場が広い中小企業となると、「休むな」という無言の圧力は、未だあちこちにあります。
そうなると、国の施策で一斉にやらなければ物事が進まないという考え方には理解できるところもあります。

ただ、やはり調査結果を見た通り、今の実施のしかたにはかなりの問題を含んでいます。仮にこのまま続けても、私は定着せずに終わってしまうと思います。

なぜ今のような実施のしかたになったのか、何か調査などがされた上でのことなのか、私はそのあたりの経緯をよく知らないので、その点は何とも言えません。
ただ、見ていて一つだけわかるのは、この実施方法では「レジャーに都合がいい日」という考え方が先に立っていて、「仕事を切り上げやすい日」という発想がほとんど感じられないということです。月末もしくは月初で、しかも毎月のこととなると、いくら早く帰ろうと考えても、そう簡単にはいかない人が大勢いるでしょう。

金曜日というのは、有休をとったり、宴会などがあったり、確かにレジャーに使われる機会は多いです。きっと昔からの「花金」の発想もあったでしょうが、有休や宴会はそこまで年中のことではないでしょうし、普通の宴会や食事会などは、仕事終わりの夜の時間帯ですから、日常の仕事のリズムの中で行われることです。休前日ということでは、その日のうちに仕事を終わらせておきたい人もいるでしょう。

例えば、企業の「ノー残業デー」といったものは、水曜日など週半ばのことが比較的多いですが、これは休日と休日の真ん中で、最も「仕事を切り上げやすい日」だろうということが、この日に当てられている一番の理由です。
この強制度は会社によってまちまちですが、それぞれの社員は「ノー残業デー」に対応するために、仕事を別の日にずらすなどしながら調整しています。やはり、あくまで「仕事が優先」ということです。

私はやはり「月末」「毎月」「金曜」「15時」といったところは、一度考え直した方が良いと思っています。また、今のうちに見直さなければ、「プレミアムフライデー」は完全に廃れてみんなの意識から消えてしまい、もう一度やり直すことが一層難しくなります。

今の段階で「こうすれば絶対に良い」というものは見当たりません。ただ、いろいろな要素を見直しながら利用状況を見ていけば、必ずどこかに良い落としどころがあるはずです。

「プレミアムフライデー」は、せっかく意図をもって始めた取り組みです。もっと柔軟に考え直していく必要があると思います。


2017年5月29日月曜日

「熱意ある社員は6%のみ」という調査結果をどう見るか



世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップ社が、2016年に各国の企業を対象に実施した「従業員エンゲージメント(仕事への熱意度)調査」によると、日本は「熱意ある社員」の割合が6%しかなかったという記事が話題になっています。

この数字は米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだったということです。
「やる気のない社員」は70%、さらに、企業内に問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%に達していたということです。

私が目にする範囲での反応を見ていると、これを問題視する人がいる一方、今の企業の姿勢や仕事環境を考えればこんなものだという冷めた意見も多いように感じます。

私はこの「熱意」ということが、一体何を指しているのかが今一つ良く分からず、調査の内容などを少し調べてみました。

そこから見ていくと、この調査は「従業員エンゲージメント調査」ということですが、この“エンゲージメント”という言葉を日本語で「熱意」「やる気」と表現しています。

「従業員エンゲージメント」という意味を調べると、“従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲”とされています。どちらかというと、会社に対する信頼や愛着をもとにして、そこから生まれてくる働く意欲というニュアンスでしょう。一言でいうと、確かに「熱意」「やる気」とは言えますが、もう少しいろいろな前提があった上での意欲という感じがします。

また、他国の結果と合わせてみると、例えば韓国、中国、香港、台湾といった東アジアの近隣国は、日本の状況とほとんど変わりません。ここから見ると、この数字には国民性や地域柄という要素が含まれていると考えられます。
これは私の個人的な感覚ですが、日本人に「やる気があるか」と尋ねて、本音で「やる気満々」と答えるのは、しいていえば新入社員くらいで、多くの人は「やる気がないわけではないけど、熱意があるかと聞かれると、そこまでは言い切れない」という感じではないでしょうか。

さらに、日本では「熱意ある社員」が6%でしたが、全体平均でも13%ほどということで、そもそもこういう人は、世界的に見ても少ないということはわかります。

他にも調査対象の雇用環境や賃金の状況などは各国でばらつきがあるでしょうから、この調査結果をもって、日本のビジネスパーソンが「熱意がない」「やる気がない」と決めつけてしまうのは、少し状況を見誤ってしまう可能性があると思います。

ただ、国民性の違いがあるとは言っても、米国では32%の人が「熱意がある」と答えています。やはり日本の低さは際立ちますし、これは確実に日々の仕事ぶりや生産性に跳ね返ってきます。

もちろん企業側の問題は大きいですし、実際おかしな扱いをされたような話もたくさんありますが、だからといって、冷めて惰性で面白くないと思いながら仕事をし続けて、それで一番マイナスを被るのは、結局は自分自身です。

「熱意」や「やる気」というのは、他人にどうこうしてもらうものというよりは、まずは自分の心持ち次第です。どんなに小さなことでも、何か仕事に自分なりの面白さ、楽しさを見つけることが、初めの一歩ではないかと思います。   


2017年5月26日金曜日

「シニアの横柄」が誰でも起こる老化現象ならば、会社で考えなければならないこと



これは、決してシニアを悪くいうつもりではなく、幅広い年齢層の人がお互いハッピーに働くためには、必要かもしれないと思ったことです。
ある会社のマネージャーですが、配下にいる50代半ばの契約社員の男性に手を焼いています。
この契約社員が担当している業務は、比較的定型的でルーチンなものなので、よほどのトラブルでもない限りはただ進み具合だけをチェックしておけばよく、マネージャーとしての日常的な指示はいりません。

問題なのは、月次の報告資料や申請書、精算書のたぐいの事務的な書類など、会社所定の事務処理をなかなかやらないのだそうです。「こんなものは不要だ」「面倒だ」「別に精算してくれなくてかまわない」など、ああだこうだと理屈を言ってきます。
「こんな人は放っておけばよい」という考え方もありますが、会社のルールとしてはそう簡単に割り切ることもできません。最終的には何とか書類を書かせて終わりますが、翌月にもまた同じことを繰り返します。

毎月のよけいなやり取りでマネージャーは憂鬱な気分になり、「そもそもなぜこの程度のことを嫌がるのかの理由がわからない」と言っています。私もそう思います。

こういう行動の理由を考えてみると、もしかするとこういう態度を取ることでマネージャーにかまってほしいのかもしれませんし、年とともに事務処理がおっくうになってきて、本音でやりたくないと抵抗しているのかもしれません。

「シニアの横柄」というのは、老化現象の一つとして、「理性が欠如していく」という脳そのものの問題もあるようで、年齢とともに理性をつかさどる前頭葉の機能、感情を制御する機能が落ちていき、それまでは脳の機能で抑えていた、性格的にわがままな部分が表に出てきてしまうということもあると聞きます。

少し前の新聞記事に、「シニア層の横柄な態度に憤り」というものがあり、そこでは深夜の居酒屋でシニアのグループがグラスを割ってしまい、破片を拾っていると客の女性から「早くふいてちょうだい」と居丈高にせかされ、謝罪の言葉はまったくなかったという話がありました。
鉄道で暴れたり、店員に切れて暴言を吐いたり、ちょっとしたことも待てないといったシニア層の行動は、確かによく目にします。私自身も気をつけなければと常に思っていますが、年とともにこうなってしまうのだろうかと不安にも思います。

ただ、こういうことはみんなに起こることで、これからもまだまだ高齢化が進み、生涯現役のようなシニア層が増えてくると考えると、この人たちとも何とか付き合っていかなければなりません。それは会社の中でも同じことです。

何か良い対応の仕方がないかと、いろいろ調べてみましたが、「根気よく相手の求めていることをやっていくしかない」などとありました。無用に感情を刺激せず、根気よくコミュニケーションをとっていくということのようです。確かにそれが一番なのかもしれません。

ただ、会社においては、そこまで手をかける時間の余裕はありません。納得せずに怒りを持っていたとしても、なるべきことはやってもらわなければなりません。
そんな中で私が最近感じているのは、ことシニアに対しては、今までよりも「性悪説」の発想を強めた仕組みづくりをしていかなければならないのではないかということです。
あくまで組織のルールとして、本人が納得したかどうかにかかわらず、決められたことはやってもらうということで、マネージャーが「そもそも論」を吹きかけられることも、納得するまで説明する必要もなくなります。実際にこういうスタンスを取る企業も出始めています。

「性悪説」を取らずに済むならそれに越したことはありませんが、「シニアの横柄」が誰にでも起こりうる、老化に伴う必然ならば、それに見合った対応は考えていかなければなりません。
「シニア活用」が言われる企業においては、特にそうだと思います。