2018年3月30日金曜日

「アイツは使えない」が口癖の部長が上司に言われた一言


ある会社でのことですが、とにかく自分の部下にちょっとミスや思い通りにならないことがあると、「アイツは使えない」と口癖のように言う部長がいました。
仕事はそれなりにできる人で、だから部長にまでなったのだと思いますが、部下からの評判は当然良くありません。しかし、そんなことは意に介せず、この部長は相変わらず「コイツはダメだ」「アイツは使えない」と繰り返していました。

そんなある日、この部長は新たに自分の上司になった上席の役員から呼び出されます。そこで言われたのは「君はマネジメント能力がない」ということでした。日頃の行動や態度がこの役員の耳に入り、観察もされていたようで、「部下を批判するばかりで能力を伸ばそうとしないのはマネージャーとして職務怠慢だ」と言われてしまいます。さらに最後の一言は「使えないのは自分だね」の言葉でした。

自分の口癖を上司から投げかけられ、部長はずいぶんあわてて反省もしたようですが、部下たちからの信頼が急に回復するはずもありません。その後の仕事もずいぶん苦労して、結局は左遷と言われても仕方がないような部署異動を強いられることとなってしまいました。自分の振る舞いが結局自分に返ってきてしまったという話です。

ここで、この部長がいう「アイツは使えない」という口癖の背景を考えてみると、部長には「私は使える人間だ」という自負があったことは間違いありません。その前提があった上で、相手を見下した態度につながっていました。

しかし、間違ってはいけないのは、「私は使える人間だ」というのは、自分では決められないものだということです。そもそも評価というのは他人が決めることなのです。
つまり、この部長の「アイツは使えない」という言葉は、自分勝手な優越感によって部下を見下していたわけで、そこには何の根拠もなかったのです。

もう一つ、部下が使えないなら使えるようにするのが上司の役割で、それをせずにただ相手を非難していたのでは、「マネジメント能力がない」と言われるのは当然ですが、部下やチームをマネジメントするには、相手との信頼関係がなければ成り立ちません。他人を見下す人間が他人から好かれるわけがありませんから、マネジメント能力を発揮するための前提がなかったといえます。これはごく単純な話です。

「自分の方が上」「自分の方ができる」といった優越感は、相手への一方的な批判につながりやすいですが、その優越感の根拠というのは、意外に希薄なことが多いものです。さらに、相手を見下すような態度も、リーダーとしては特に良くないことの一つです。

もちろん自己評価は大事ですし、自信を持つことも必要ですが、そもそも評価というのは他人が決めるものです。そのことを忘れてしまうと、この部長のような振る舞いが往々にして起こります。

部下を戦力化して結果につなげるのが上司の仕事であり、その目的を考えたときに、人を見下す態度は阻害要因にしかなりません。
「見下す」「切り捨てる」というリーダーを見かけることがありますが、それはいつか自分に返ってきてしまいがちだということを自覚しなければなりません。


2018年3月28日水曜日

「やめる」「元に戻す」は解決手段にならなくなっている


最近、暗くなった夜道なのに、無灯火のまま気づかずに走っている車が増えているという記事がありました。
その理由に、最近の車は「自発光式メーター」が増えていることがあるのだそうです。
一昔前の車は、ヘッドライトやスモールライトとメーターの照明が連動していたので、夜間にライトがついていないと、車内のメーターも暗かったので気がつくことができましたが、最近の車は昼間でも自発光式メーターや液晶メーターが光っていることで、自分が無灯火で走っていることに気づかないことが増えているということです。
確かに目の前で見えている状態と、見えていない車外の状態がつながっていないと、見えていない部分で起こっていることに気づくのは、なかなかできないことでしょう。

今、この対策として考えられているのが、周囲の明るさを検知してヘッドライトの点灯と消灯を自動的におこなう「オートライト機能」の義務化だそうで、2020年4月以降に販売される新型車から、これが適用されるということです。現在のオートライト機能にある「手動」はなくなり、オートライトは常にON状態のみとなるそうです。

こういう話を聞くと、私などはついつい昔のように車外のライトと連動させれば問題ないと思ってしまいますが、自発光式メーターの視認性の良さとか、そういうメリットを維持した上での対策を今ある技術と合わせて考えると、こんな対策になるのでしょう。やはり単純に昔に戻すというような話は、妥当な対策にはなりえません。

この話と重ねてしまったのが、最近盛んになってきた在宅勤務をはじめとするリモートワークに関して、マネジメントがやりにくいという声についてです。
一言で言えば、「相手が目の前にいないから、何をしているかがわかりづらい」「ちょっとした声掛けができない」「指示をするのに手間がかかる」などというものが多く、自分の部下には、「正直に言うとできればやらせたくない」といっているマネージャーが今でも結構います。
相手が目の前にいないことで、やっていることが見えづらいことが、今までの職場環境とは違うので、それがやりづらいという話ですが、前述のヘッドライトの話と同じく、確かに自分が見えていない部分についてはわかりづらいので、マネジメントがしづらいというのは事実でしょう。

しかし、ここで私がヘッドライトの話で考えたことと同じような考え方で、リモートワークはやめて昔に戻すということでは、在宅勤務やリモートワークのメリットも無くしてしまうことになります。
今の技術や環境によってできることを考えると、Webカメラ、チャット機能、スカイプその他のテレビ電話機能、その他様々なやり方を考えれば、このやりづらさは軽減もしくは解消することができます。

以前に比べてやりづらいというような問題が起こると、「やめる」「元に戻す」といった話が必ず出てきます。それが良い場合もありますが、最近は「気づきづらいことに気づく」ための方法は技術進歩もあり、以前と違ってたくさんあります。

問題解決の方法は、新しいものがどんどん出てきていることを認識しなければなりません。


2018年3月26日月曜日

相談してきたはずなのに聞く気がない社長の話


コンサルタントは、依頼された会社の問題解決を支援する訳ですが、特に私の場合はその会社の人と役割分担をして、チームとして一緒に活動することが多いです。

中には丸投げですべてのことをやってほしいといわれる場合もありますが、やはりその会社の人が主体となって、自分たちで考えながら物事を進めなければ、なかなか課題解決には至りません。
ですから、私が企業支援をするときには、課題解決に向けたアイデア出しやアドバイスはもちろん、現場に入って実行も支援するなど、できるだけ多くのノウハウを伝えて、最終的には自社内でも対応できるようにすることを目標にします。
その結果として、ものすごく長いお付き合いになることもそうでないこともありますが、当事者意識が高くて私とも対等な立場で自ら動く姿勢がある会社ほど、課題解決は進みやすくなります。医者がどんな素晴らしい治療をしても、患者本人の生活習慣が変わらなければ病気は治らないことと似ています。

また、丸投げとは正反対に、何でも自分の思うとおりに動くことを要求されることもあります。私たちは社外の専門家として仕事を発注される側なので、発注元の要望に応えるのが当然という考え方はありますが、それでは丸投げの場合と同じく、なかなか課題解決に至りません。

これはもう何年も前のことですが、その頃にお会いしたある会社の社長がそういう人でした。知人を介して紹介された人でしたが、とにかく自分の一方的な問題把握と、自分が考えている解決策を延々と説明し、暗に自分が言った通りに動くことを要求してきます。こちらはいちおう相談したいことがあるというので訪ねていますが、相談は何一つなく、こちらからの話もほとんど聞いていません。

私の経験では、こういう場合のほぼすべて、この社長自身の姿勢や態度が一番根本的な問題であったりします。ですから、社長の意見は聞きながらも、社員からの情報を得る機会を作り、より良い方法を社長や関係者の納得を得ながら進めていきます。

しかしこの時は、とにかく社長がこちらの話を一切聞きません。何か他の考え方やアドバイス的な話をしても、「それはできない」「それはもうやったが効果がなかった」など、完全否定ばかりです。
これは私の想像が入りますが、たぶん辞めてしまうのか距離を取られてしまうのか、社内に自分の意図をくんで動く人材がおらず、それを社外に求めようとしての相談という話だったのではないかということです。発注側と受注側の仕事の関係になれば、自分の依頼通りに動くと思ったのではないでしょうか。

この時は、私から「ご自身にも問題があるかもしれないという意識がなければ、解決することは難しい」ということをはっきり申し上げ、それ以上の話を進めることはしませんでした。その後音沙汰がなかったので、他の誰かを探したか、あきらめたのか、単に気分を害したのかはわかりません。

この話はかなり極端な例ですが、ここまでではなくても似たような話は意外に数多くあるものです。ほとんどの相手は話をすればそれなりに理解して頂けますし、そこからはパートナーとして、きちんと話し合いながら物事を進めることができます。

「相談」といいながら話を聞かないのは、こちらとすればすべて丸投げで依存されること以上に問題です。
やはり同じチームのパートナー同士として、一緒に課題に向き合うことが問題解決に向けて一番望ましいのは間違いありません。もちろんいちいち指示されなくても適切に行動するのは、専門家として当然のことです。そうやって社外人材をうまく使ってもらえると有り難いと思っています。