2018年3月16日金曜日

「○○の方法」で安易に解決策を求めていないか



企業の中で経営、組織、人事にかかわる人が口々に言うのは、「“人”に関することは難しい」という話です。難しい理由は単純で、「一人ひとりの考えは違うし、その時々の状況によっても反応が違うから」です。
だから私のように人事、組織を専門とする仕事が成り立つわけで、これまで経験してきたこと、得られた情報の読み取り方や使い方、その他課題に対処する多くの引き出しを持って、それを活用することによって企業のお手伝いをします。

ただ、最近求められることが多いのは、課題解決のための定型的なやり方を教えてほしいというもので、俗にいう「○○の方法」というようなものです。「これをやったら確実に効果がある」など、三段論法での結果を求めます。
実際、世の中に出ているサービスの中にも「人事制度、評価制度を作る」「社員のモチベーションをアップする」「人材確保にコミットする」といった内容でパッケージ化されたものを数多く見かけます。
それはそれでわかりやすいですし、それによって課題解決ができた、効果があったというなら良いことでしょう。私自身もその方がわかりやすいならばと、定型化したサービス作りを考えたことがあります。

しかし、実際の現場では、この定型的な「○○の方法」で課題解決ができた経験は、少なくとも私にはありません。もちろん、ベースになる進め方はありますが、そこにいくつもの方法を組み合わせ、それぞれのやり方を微調整して、実際にやってみて、また方法を見直すというPDCAの繰り返しです。
そこでの専門家としての存在価値は、適切な処方箋を書くことであったり、効く薬や良い治療法、体調管理の方法を提示することであったりします。ある時は医者、ある時はトレーナー、ある時は薬剤師、場合によっては社内で意見を通すための政治家のような役割を担うこともあります。

ですから、定型的な「○○の方法」というものであっても、どこかに必ずオーダーメイドの部分がなければ、たぶん課題解決にはつながりません。定型のものは一見するとお手軽に見えますが、そのままでは効果が薄く、効果を上げようとするとそれなりに手がかかるようになります。
10社あれば事例は10通りになりますから、それぞれに合った形が提示できなければ、せっかくの取り組みがあまり意味をなさなくなってしまいます。

企業の皆さんは、「“人”に関することは難しい」と言うにもかかわらず、その解決には「○○の方法」という単純なものを求めたがります。でも実際には、そんな魔法の杖はありません。

最近よく売れる本のタイトルは「○○に関する〇個の方法」「○○の秘訣」といったものだそうです。私もこういうものに興味をそそられますし、中身を読めばそれなりに参考になることがたくさんあります。
ただ、実際にそれをやろうとすると、本に書いてある通りにはなりません。取り巻く状況や環境が違っているからです。

「難しいこと」を簡単に解決する方法は、基本的にはありません。企業で「人」に関することが難しいのは間違いなく、それを「○○の方法」で解決しようとしても、結果に失望するだけでしょう。
少なくとも私の場合は、その企業の人たちと一緒になって、その企業なりの方法を考えて実行し続けることが、一番結果につながると思っています。


0 件のコメント:

コメントを投稿