2016年12月28日水曜日

もしも自営業者の私に残業規制があったら・・・



私は長時間労働も残業も嫌いです。サラリーマン時代は、周りから比べても残業時間はかなり少ない方だったと思います。特に差し迫った仕事でもない限りは、かなりの頻度で定時近くに帰っていましたし、それであからさまに文句を言われたこともなかったですし、悪い評価を下されたこともなかったので、たぶん仕事の成果としてはそれなりに許容されていたのだと思っています。

そんな環境から独立して自営業者となり、今の労働時間はどうかと言えば、多いようなそうでもないような、あまりはっきりとはわかりません。そう感じる一番の理由は、その場その場でやっていることが、果たして仕事なのかプライベートなのか、明確に線引きすることが難しくなったということがあります。

お客様もしくはお客様候補と食事をしたり飲みに行ったり、様々な交流会や会合に出席したり、ゴルフや旅行といったレジャー的なお付き合いがありますが、これが仕事なのかどうなのか、私の感覚としてはよくわかりません。
たぶん、サラリーマンの立場であれば、限りなく仕事に近いということで業務時間に換算されることもあるのでしょうが、今の立場での自分の気持ちとしては、どちらかと言えば楽しいと思ってやっているので、その場では遊び感覚の方が強いです。ただし、あるタイミングで突然に仕事の話になることがあるので、それは仕事だと言えばそうなのだろうと思います。

実際に仕事をしている時間数ということで考えると、それこそ電通の例であったようなハードワークは一切ないので、それほど多くないと思っていますが、資料作りや原稿執筆といった作業の時間帯が夜中の2時、3時となっていることはかなり頻繁にあります。
もっと計画的に早い時間からやればいいとは思いますが、日中は別の案件で動いていることが多いので、どうしてもそんな時間帯になってしまいます。そのかわり、顧客からよほどの要望がない限り、翌日の始まりがあまり早い時間ではないように調整しますので、本当につらい時は年にほんの数回くらいしかありません。

土日や祝日にそんな作業をやっていることも、結構頻繁にありますが、自分の中では空き時間を使っている感覚なので、あまりつらいとも休めていないとも思っていません。
こんな働き方で、自分の脳としては1日8~10時間くらいの仕事という感覚ですが、その他のいろいろなことを全部含めると、14~16時間は仕事がらみの行動であるとも捉えられます。
労働基準法と照らせば、かなりブラックな働き方となりますが、これを法律に定められた労働時間と合わせるように言われたとすると、かえってやりづらく、仕事が予定通り終わらず、仕事のつらさはかえって増幅すると思います。

最近、音楽業界大手の「エイベックス」が、労基署から長時間労働の是正勧告を受けたという話題がありました。
それに対して社長が「真摯に受け止めて対応する」としながらも、「僕らの仕事は自己実現や社会貢献のような目標を持って好きで働いている人が多い」「(長時間労働を抑制すると)自分の夢を持って業界に好きで入った人たちが好きで働いているのに、仕事を切り上げて帰らなければならないことになる」「好きで仕事をやっている人は仕事と遊びの境目なんてない」「そういう人の『夢中』から世の中を感動させるものが生まれる」など、好きでしている長時間労働を抑制しないでほしいという発言をしていました。

この発言を全面的に肯定しようとは思いませんが、これまで私自身が経験してきた仕事への向き合い方の変化、仕事とプライベートの境界線の変化、自分の裁量の変化、仕事をするペースの変化などを考えると、ある画一的な基準に閉じ込めてしまうと、仕事のつらさがかえって増してしまうようなケースが出てくることは確かです。

過労死も過労自殺も絶対に防がなければなりませんが、その方法はただ枠を決めてそこに押し込むだけでなく、もっと個別の事情に配慮した管理が必要ではないかと思います。
自営業者の私がどんな働き方をしようと、法律的には何の制限もありませんが、今の法律に合わせようとすると、意外に困難が伴います。企業で働く人でも、きっと同じように感じる人はいるでしょう。対策にはもう少し多様性を許容する工夫が必要だと思います

2016年12月26日月曜日

「向いていないし好きな仕事でもないけど辞めない」という新人の話




ずいぶん前から、新入社員の早期離職は「753現象」などといわれて問題視されています。
入社3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象のことですが、このこと自体は最近始まったことではなく、統計資料などによれば30年以上前から同様の傾向が見受けられています。
ただ、このところ少子化に伴って若手の採用が難しくなっていることもあり、「せっかく苦労して採用した人材に、それなりの教育投資をしたにもかかわらず、簡単に辞められては困る」ということから、企業側の問題意識は高まっており、今まで以上に取り上げられることが多くなっているように思います。

ただ、ある有名企業の方から聞いた話で、ちょっと考えてしまうことがありました。
ある一流大学から入社した新入社員だそうですが、すでに現場では「仕事ができない」「やる気がない」「使えない」という評価をされてしまっていて、扱いを持て余しているのだそうです。
当の本人も「自分はこの仕事には向いていない」「好きな仕事ではない」と言っていて、適性がないことを自覚しているようですが、それでも「会社は辞めない」のだそうです。
その理由は「もしかするとこの仕事が好きになるかもしれないから」だそうで、周りから見ると、有名企業のブランドもあるせいか、会社にしがみつこうとしているようにも見えるようです。

そして、「会社は辞めない」と言いながらも、仕事ぶりは相変わらずで、あまりやる気を見せることもなく、積極的な取り組みをすることもなく、いかにも「向いていない」「やりたくない」という様子だそうです。
さすがに周りの人たちは、「もっと自分の適性を活かせる他の仕事を探しては」という話も、ついついしてしまうそうですが、本人にその気はないようです。

これはそもそも適性がない人材を採用した会社にも問題がありますし、まだ新人だからもっと長い目で見て育成するべきという意見も、もっともな話でしょう。頑張っていればいつか花開くという可能性もゼロではありませんし、苦手なことでも続けるという精神性には意味もあるでしょう。会社への定着ということを第一に考えれば、「辞めない」ということは悪いことではありません。

私もこういう見方を否定はしませんが、この話で問題なのは、本人が「この仕事は好きではない」「自分は向いていない」と言っていて、なおかつ自分から立ち向かおうという姿勢がないことです。「何となく続けていれば、そのうち慣れるかもしれない」という安易な態度も感じます。

給料が高いわりに仕事をしない、業績貢献がない、さらに転職しても仕事は大変になって、給料も下がるだけだから会社にしがみつくという中高年社員を指して、「働かないおじさん」という話がありましたが、仕事に向き合うことを避けるという意味で、私はこれと同じようなことを考えてしまいました。

人材投資という面では、世代を問わずに「早期離職」は問題ですが、行動としては正反対の「会社にしがみつく」ということも、同じように問題です。
「つらくても続ける」「向いていなくても辞めない」は、一見すれば真面目な取り組みに見えますが、そうでない場合が含まれることも知っておくべきです。