読売新聞がおこなったアンケート調査によると、政府が「働き方改革」の一環で検討している残業時間の上限規制について、主要企業の47%が業務への支障を懸念する一方、支障がないと考える企業も45%と、意見が拮抗しているというニュースがありました。
もう少し詳細を見ると、主要企業180社のうち、79%にあたる143社が回答し、上限規制で「業務に支障が出る可能性があるか」との問いに対して、「そう思う」が11%、「どちらかと言えばそう思う」が36%で、支障を懸念する企業の合計が47%、逆に「そう思わない」が17%、「どちらかと言えばそう思わない」が28%と、懸念しない企業の合計が45%ということです。
では実際にはどうなのかというと、私はやはり業種や仕事内容によっていろいろではないかと思っています。
ここからはあくまで私個人の想定ですが、特に人が直接行うサービス系の仕事や、できる人が限られるような専門技術系の仕事の場合は、テクノロジーなどを使ってもすぐに効率が向上するものでもなく、時間数はなかなか減らせないという感覚ではないかと思います。
逆に、これは業種や仕事内容を問わず、無駄な時間の使い方があると見ていて、効率化の余地があると考えている企業では、「支障は出ない」となるのではないでしょうか。
ただ、このアンケートの続きを見ると、気になることがあります。
それは、「長時間労働を減らすための課題は?」との問いに対して、“支障あり派”“支障なし派”ともに、一位の答えは「業務量を減らすこと」となっていることです。
これは、多くの企業では長時間労働の大きな要因を「業務量が多いこと」と考えていて、それを減らすことができるかできないかという認識の違いで、“支障あり派”と“支障なし派”に分かれているということです。
この点をもう少し考えてみると、「業務量が簡単には減らせない」という直接的な要因とともに、事業内容によっては、業務量を減らすことがそのまま売上を減らすことも考えられます。
そういう懸念があると、さらに「支障が出る」という考え方が強まり、それがなければ「支障は出ない」となるのではないでしょうか。
私個人としての驚きは、長時間労働の最も大きな原因が「業務量が多いから」と捉えている企業がこれほど多いということです。そういわれてしまうと、「簡単には減らせない」というニュアンスがより一層強まって、長時間労働対策自体が空洞化してしまう懸念を感じます。減らせない口実に使われてしまうのではないかということです。
私もいろいろな企業と一緒に仕事をしますが、その中では「単純なことなのにずいぶん時間がかかる」と感じたり、「そこまでやらなくても良いのでは」「それは無駄なことでは」と思うことが、かなりたくさんあります。
どちらかと言えば大企業の方がその傾向が強く、その中身も上司の承認や社内手続きなどといった、社内事情によるものが多いという印象です。コンプライアンス上の必要性などがあるにしても、効率化する余地はまだまだあると感じます。
長時間労働の主因は、本当に「業務量の多さ」なのか、それは本当に減らすことが難しいものなのか、今一度検証する必要があるように思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿