2016年12月14日水曜日

「プレミアムフライデー」の反対側にいる人たちのこと



経済産業省や経団連、小売、旅行などの業界団体で作る協議会が、毎月末の金曜に消費活動を促す「プレミアムフライデー」を来年2月から実施すると決めたという話題がありました。
買い物しやすいように従業員の終業時刻を早める取り組みも進めるとのことで、月末の金曜日は午後3時をめどに退社できるよう企業に働きかける方針だということです。

この取り組みを歓迎、評価する声がある一方、今の消費低迷の原因は所得の伸び悩みや将来不安であり、これが解決されなければ期待外れに終わるという指摘も多いようです。

私だったらどうするだろうかと考えてみましたが、仕事が早く終わったからといって、その都度出かけてばかりでもないでしょうし、多少の余暇時間として何か買ったり食事をしたりということはあるでしょうが、そういう機会をそれほど増やす感じではありません。
どちらかというと早く帰った分の給料はどうなるのかとか、15時で強制終了ではさすがに仕事は終わらないだろうとか、そんなことの方が気になります。
思ったように「消費が増える」とはならない感じがします。

この取り組みをしている協議会には、小売や旅行の業界団体も名を連ねているようですが、これによって買い物客が増えるとか、週末を使って旅行する人が増えるとか、そんな期待なのだろうと思います。
ただ、私がこういう取り組みに対していつも思うのは、その反対側にいる人たち、小売業やレジャー産業や、飲食店や各種サービス業など、消費を受け負う側の働き手のことです。

こうやって一斉に仕事の早い終業をうながしたり、休日や休暇を増やしたりしても、常にその反対側で働く人たちがいて、最近は特にそういう人たちの割合が増えています。
土日に働く人がどのくらいいるのか、何か統計がないかと思って調べたところでは、なかなか良い資料がなく詳細はわかりませんでしたが、少なくとも20%前後はそういう人たちだという数字がありました。反対側にいる人たちは意外に多いのではないかと感じます。

「プレミアムフライデー」のような取り組みが消費を増やすと言いますが、ここで対象になるのは平日昼間の8時間勤務、土、日と祝日が休みの人たちだけです。逆にそういう働き方でない人にとってはほとんど関係がありません。
小売業やサービス業などの働き手は、こういう制度が増えれば増えるほど、業務時間は増えていってしまうでしょう。その割には売り上げが伸びないなどとなれば、働いても稼げないという悪循環に陥ります。

私は休日や休暇、その他の「余暇時間」を、しかも「一斉に」与えるということで消費が伸びると考えるのは、少し時代遅れな感じがします。
「時間の余裕」よりは、やっぱり「経済的余裕」や「心の余裕」でしょうし、「一斉に」行動することによる非効率やコスト高もあります。
人々の嗜好は多様化しているので、優先順位はみんな違います。時間があるから旅行、買い物となる人ばかりではありません。欲しいものがなければ買わないし、行きたいところがなければ行きません。

私はそれぞれの働き手が、休みたいときに休める、早く帰りたいときに帰れるという環境作りの方が、よほど大切ではないかと思います。これはサービスを提供する側でもされる側でも共通のことですし、繁閑の差が減っていった方がサービスの効率が上がり、利益も生み出しやすくなるでしょう。そこで働く人の環境も向上すると思います。

消費が伸びない理由は、やっぱり所得の伸び悩みや将来不安であり、それが解決されなければ、なかなか変わらないでしょう。そもそも今の日本の成熟した社会インフラと生活レベルの中で、どんどん消費するという時代は、もう来ないのではないかと思います。
それを前提としたビジネスのしかた、働き方を考えていかなければならないのではないでしょうか。
「みんなで休める」よりは「自由に休める」「気軽に休める」の方が、より必要なことではないかと思います。

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