2016年12月19日月曜日

「理念の浸透」「方針の徹底」という時にやるべき一つだけのこと



様々な会社で人事、組織というテーマに関わっていると、経営理念や企業理念といった「理念の浸透」や、経営方針や事業方針などの「方針の徹底」といったことが取り組み課題として挙がることがたびたびあります。

課題として挙がるということは、それぞれ重要だと理解されているにもかかわらず、それがうまくできていないということであり、様々な会社で同じように取り上げられるということは、何かしらの共通した難しさがあるということでしょう。

こういう課題が挙がった時、私はある大企業の社長経験者から教えられたことを思い出し、そのことを伝えるようにしています。
この方はご自分が社長の時代に、組織変革のために、あるキーワードを使った「理念浸透」の取り組みをしたことがあり、結果的には何とかうまく行ったと言えるレベルまで到達したそうですが、そこで実際に取り組んだのは、とてもシンプルなたった一つだけのことだったそうです。
それは、ただ単純に「事あるごとに繰り返し言い続ける」ということでした。

ただし、その取り組みの度合いは、お話を聞く限りではかなりのもので、社員が集まって自分が何か話す機会があるようなイベントやミーティングでは、とにかくその「理念」を繰り返し語り、会社案内ほかのパンフレット類から社員証や名刺、その他社内の印刷物には、必ずその内容を載せたそうです。
ちなみにスローガンのように社内掲示することも考えたそうですが、それは少し社内の美観を損ねるということでやめたそうです。ただ、とにかく利用できる機会を徹底的に利用して「理念」を事あるごとに言い続け、他の役員や管理職にも同じように語り続けることを求めたそうです。

この効果は徐々に表れて、1年ほど経つころには社員の口から「うちの理念は・・・」という言葉が出始めるようになり、仕事をする中では頭のどこかにこの「理念」を置きながら考えるようになっていったそうです。それにつれて、課題があった組織風土も少しずつ良い方向に変わっていったそうです。

会社から、例えば「○○の徹底」といった取り組み指示が下りてくることがあると思いますが、そこで具体的な実施方法まで指示されることは、あまりないのではないかと思います。

そうして行われることは、たぶんその指示があった以降で一度か二度くらい、「○○を徹底するように」などという言い伝えがされるくらいで、もう少し真面目に取り組む人が、節目節目で同じ話を繰り返す程度のものでしょう。それですら話題に上る回数が多いとは言えず、ほとんどの場合は単発で終わってしまうでしょう。
「浸透」や「徹底」と言いながら、それに向けた行動はなかなかできないもので、たぶんそれが、「理念の浸透」や「方針の徹底」という時の難しさということになるのでしょう。

「浸透」や「徹底」などときれいな言葉で表現されても、それは結局は「刷り込み」ということと同じことです。そこで実際にやることといえば、「多くの機会を見つけ、できるだけ数多く、繰り返し言い続けること」しか方法はありません。

「理念の浸透」「方針の徹底」は、ただシンプルに「言い続けること」を本当に続けられるかどうかにかかっているのだと思います。


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