2018年6月29日金曜日

「職人気質だから教えられない」は本当にそうか



最近、それぞれ違う業界の会社ですが、こんな話がありました。
どちらの会社も製品生産や物作りにかかわる技術部門があり、そこでの人材育成が問題だと言います。要は技術者がうまく育っていないのだそうです。
受注生産、オーダーメイドという性格の製品ですが、技術者個人のスキルに委ねる「匠の技」のようなところがあり、それを次世代の技術者に教えていくことがなかなか難しいようです。
そしてその理由を、まったく異なる業界の会社にもかかわらず、異口同音に「職人気質だから」というのです。だから「教えることが苦手」「教えようとしない」といっています。

言いたいことはなんとなくわかりますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
「職人気質」の意味を調べると、「職人に特有の気質で、自分の技能を信じて誇りとし、納得できるまで念入りに仕事をする実直な性質」とあります。また別の辞書では、「職人に多い気質で、自分の技術に自信をもち、安易に妥協したり、金銭のために節を曲げたりしないで、納得できる仕事だけをするような傾向」とされています。人材育成に関するマイナスの意味はありません。

さらに、「職人気質の人に多い性格」というものを調べてみると、確かにその中には「気難しい」「仕事を教えてくれない」という、よくある職人イメージのものがありましたが、こちらも「教えるのが苦手」という話はありません。

こうやってよく考えると、職人と言われる人たちは、確かに仕事へのプライドが高く、仕事に対して自他ともに厳しく、安易に他人に教えようとせず、昔ながらの「見て覚えろ」などはその典型ですが、だからといって、それは「教えることが苦手」なわけでも、「教える能力がない」わけでもありません。その気になれば教えられるのに、本人の仕事観からそれをしようとしないだけにすぎません。

「教える能力がない」のだとすれば、それはその人が「職人ではない」ということを意味します。職人気質だから教えないのではなく、教える能力がないから教えられないのです。
いろいろ聞いていると、どうも「職人気質」という言葉の中に、「教えない人」と「教えられない人」が混同されている感じがします。


もし「職人気質だから教えない」という人ならば、次に世代を育てること、教えることの大切さをよく説明し、納得してもらうしかありません。きっと頑固という特性もあるので、なかなか難しいかもしれませんが、働きかけを続けるしかありません。

これに対して、職人ではなく、ただの「教えられない人」であるならば、その人に指導を任せること自体がダメということになります。できない人ができるふりをしていることを、放置するのはいけません。

「職人気質」といわれる中には、まったく違う性質の人が混じり合っています。
ちなみに最近の「職人」と言われる人たちは、すごく丁寧にわかりやすく、一生懸命に教えてくれる人が大勢います。自分の技術を伝えることの意義や重要性をよく理解しているからです。

人材育成が進まないのを「職人気質」と言ってしまうと、原因を見誤ることがあります。本当の職人は、決して「教えるのが苦手」ではありません。



2018年6月27日水曜日

アドバイスへの反応の男女差


これは、男性だから、女性だからといって、もちろんそうではない人がいますが、私が自分の大学時代あたりから、これまでの人生経験を通じてずっと同じように感じてきたことなので、何かしらの傾向があるのではないかと思っている話です。

それは「他人からのアドバイスに対する反応」が、相手が男性なのか女性なのかによって、結構違っていることです。
男性の場合、これは自分の反省も含めてですが、アドバイスに対して疑い深く、いいと思ってもなかなか行動には移さず、反論したり無視したり、黙って言うことを聞かなかったりします。納得して行動するまでになったとしても、ああだこうだと時間がかかります。
良くいえば「自分なりに考えている」のですが、「プライドが高くて他人の言うことが聞けない」と感じます。

これに対して女性は、他人の話は否定せずに必ず耳を傾けて、いいと思えばすぐに取り入れて行動し、いいと思わなくてもとりあえず言われたことは試してみるというところがあります。
初めから「私は興味がない」「関係ない」ということもありますが、それははっきり言いますし、そうでなければ何かしら自分とのかかわりを見つけて、言われたことをそこに活かそうとします。
アドバイスに対しての反応がおおむね好意的で、プライドなどに左右されずに合理的なのです。
当然ですが、アドバイスをする側にとっては、女性の方がし甲斐があり、応援したい気持ちも強まります。

なぜこんな話を持ち出したかというと、実は最近、女性社員が多い業界で、人事担当者も大半が女性という企業のコンサルティングを何社か続けてする機会があり、この感じを久しぶりに思い出したからです。

私たちコンサルタントの仕事というのは、自分の経験やノウハウ、保有情報をもとに、アドバイスをしたり作業を請け負ったりということですが、提供するノウハウやアドバイスに価値がないと見られてしまうと、それ以上仕事に関わることはできません。
これは私たちが提供するもののレベルが不足しているとか、ニーズを間違えているとか、さらには性格が合わない、人として信頼できないなどということまで含めて、ほとんどが価値を提供するコンサルタント側の質に関する問題です。要はコンサルタントがダメなのです。

ただ、その一方、ごく一部ではありますが、アドバイスを受け取る側の度量、許容度、柔軟性に問題があると感じることがあります。私たちは外部人材なので、そこまで露骨に否定はされませんが、何かと言い訳をして「できない」「やらない」という人たちが確かにいます。
話を聞く気がないなら契約打ち切りでいいと思うのですが、そこまでの割り切りでもありません。そして、そういう人はほとんどが男性です。

実は、これと似た話を、ゴルフのレッスンプロから聞いたことがあります。
一般的に女性の方が、言われたことを素直に受け入れ、そのことに集中して一生懸命取り組むのだそうです。
これに対して男性は、指導に対して否定的な態度をしたり、指導と違う自己流アレンジをしたりする人がいるそうです。読んだレッスン書にこう書いてあったとか、別のプロはこう言っていたとか、自分のうんちくをいろいろとぶつけてくる人もいるそうです。そんなに気に入らないレッスンならやめればいいのに、そうでもないのだそうです。

アドバイスに対する反応には、結構な個人差があり、初めからそれを受け付けない人がいます。属性で決めつけるのは良くないですが、そういう態度はやっぱり男性に多いです。私自身も、コンサルタントの立場を離れると、そんな傾向が出がちなところがあります。

やはり他人のアドバイスには、とりあえず耳を傾けて、とりあえず試してみることが、実は合理的なのだと思います。多くの女性たちの反応と、その後の状況を見ていると、本当にそう思います。