2018年3月7日水曜日

「顧客第一」がただのボランティアになっていないか



顧客へのサービスを重視して、顧客第一をうたう企業はたくさんあります。激しい競争の中でも顧客獲得や維持を考えれば、当然のことだと思います。

しかし、最近まったく異なる業種の企業数社から、営業活動の中での「過剰サービス」「ボランティア化」という話を聞きました。すべてBtoBでビジネスをしている会社ですが、話を聞くと起こっている現象はほとんど同じようなことでした。

それは、自社の営業担当者が、顧客からの要望を過剰に聞き過ぎている、こちらにメリットも投資効果もない一方的なサービス提供を、顧客からの言いなりでやっているというのです。そのほとんどは、特定の営業担当者と一部の顧客との間でおこなわれているとのことです。

ここで営業担当者に話を聞くと、これもどの会社でも似たようなことを言います。
「お客様から自分が頼まれたことは無視できない」「お客様が自分を見込んで要望してきたことにはできるだけ応えたい」など、会社を代表してビジネス上の付き合いをしているというよりは、自分の個人的な人間関係のようにとらえてしまっている様子があります。
「知り合いの頼みはむげにできない」「自分との信頼関係を壊したくない」などということと近い感じです。

そして、これもすべての会社で共通していましたが、本人たちにとってはそれが褒められて当然の良いことで、問題があるなどとはこれっぽっちも思っていなかったことです。顧客第一で常に顧客に寄り添い、要望を聞き、それをできるだけ聞き入れて実行するのが、自分だけでなく会社にとっても良いことだと信じています。
ただお金勘定だけで物をいうのはよくありませんが、そのことによって持ち出しになる自分の時間や経費のことは、この営業担当者たちの意識にはほとんどありません。また、顧客はその状態に慣れてしまい、要望は徐々にエスカレートしていきます。「今までやってくれたのに」と顧客から言われれば、断ることがどんどん難しくなっていきます。

会社にとって、サービスが過剰になっていたり、ボランティア化していたりすることは、顧客が喜んでいるから良いだろうと思ってしまいがちですが、そこには数多くの問題をはらんでいます。
営業担当者が自己判断でサービス提供してしまうと、顧客はそれが会社としてのサービスだと思ってしまいます。今まで何も言わなかったためにサービス提供を受けていなかった他の顧客は、もしその話を知ったとすると、自分たちには手を抜かれたと思うでしょう。言いなりで個別対応をしてしまうことによる問題です。

経費の問題は当然あります。ビジネスは投資と回収で成り立っていますから、回収できない投資や回収した以上のフォローはすべきではありません。もちろんすべてを的確に見極めることはできませんが、個人的な友人関係の場合とはその点で大きく違います。
こういう話がいくつもの会社から出てくるということは、意外に数多く起こっている問題なのでしょう。

私自身も、目先のビジネスだけでの損得はあまり考えませんし、ギブアンドテイクというよりは、3回くらいテイクをするとようやくギブをしてもらえるくらいの感覚でいます。ただし、自分なりに相手は選んでいます。Win-Winでビジネスできない相手は、何度か接触していればその振る舞い方で大体わかります。

提供サービスのボランティア化は、ビジネス上では絶対に避けなければなりません。


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