2018年3月19日月曜日

「一体感を作る」の考え方いろいろ


多くの会社で新入社員を迎える時期となり、関係者はその準備で忙しいことと思います。
そんなある会社から、「新入社員の一体感の作り方」という質問を受けました。
その会社では、新入社員全員を社員寮に入寮させてはどうかという話が出ているそうです。ただ、新入社員とじかに接している担当者は、その話を打診してみたところでの反応のほとんどが前向きでないことから、どうすればよいのかを悩んでいる様子でした。

もし他の会社でも同じ提案があったとして、入寮を採用条件にしているなど、納得が得られる動きをよほどしていない限り、新入社員からの反応は、たぶんほとんど変わらずに否定的なものでしょう。
その理由は単純なことで、どこの地域のどんな家に誰と住むのかということは、プライベートの中でも最も根本の部分にあることだからです。最近は転勤がない一般職や、勤務地限定社員の希望が増えているのも、「住む場所」「家」ということが、プライベートの中でも大事な部分にあたるからです。

こういう話をしたとき、ある人から「強豪校の運動部では、全寮制でも多くの希望者がいるではないか」という反論がありましたが、これも単純な話で、どうしてもその部に入って活動して自分の能力を高めたいという希望があって、そこに初めから入寮という条件が示されているので、それに納得して従っているというだけのことです。
もしも急に「全員が明日から寮生活だ」と言い出したとしたら、それに従えずに退部する者は必ずいるでしょう。要は目的の優先順位と納得性の問題です。

ここで、そもそもの目的は「一体感を作る」ということですが、確かに「単純接触の原理」といって、「顔を会わせたり、話したりする回数や頻度が多いほど、相手に対して好感を持つ」というものはあるので、生活を共にすることで親密度を増す人たちはいるでしょう。その一方、それが全員の一体感につながるかと言えばまた話は別で、親密な人とそうでない人の差が大きくなったり、逆に敵対してしまうことをあり得ます。内心で寮生活に不満を持つとなれば、それは直接退職につながる問題なので、これはもう一体感どころではなくなります。
つまり、チームやグループに「一体感を作る」というために手段としては、かなりリスキーだということになります。

この時の私からのアドバイスは、「単純接触の原理」を、寮生活のようにプライベートに踏み込まずにおこなう工夫をすることです。
少なくとも就業時間は休憩も合わせて1日8~9時間ありますし、その前後の通勤時や終業後に行動を共にする者もいます。1日の半分近くの時間を一緒にいて、それが週5日ある訳ですから、親密さを増す取り組みをする時間はたくさんあります。どんなに時間をかけても気が合わない人は必ずいますし、そういう人の存在と、チームやグループ全体の一体感というのはまた別のものです。

「一体感」というのは主観なので、どうなったら良いと明確に言える基準はありません。それを増すための手段や考え方はいろいろです。ただし、そこに無理強いや強制がなじまないことだけは確かです。


0 件のコメント:

コメントを投稿