働き方改革や労働力不足への対策の一環として、シニア人材の活躍の場を広げようということで、「シニア活躍」に向けた取り組みが、いろいろなところで行われるようになっています。
健康寿命が延びて「人生100年」の時代などと言われ始め、実際にも元気なシニアが増えているところからすれば、こういう人たちに今まで以上に仕事の場面で活躍してもらうということは、必要性が高まっている大事な取り組みです。
実際の現場でも、積極的に取り組み始めている企業が増えていますが、それと同時に見えてくる難しさがあります。やはりシニアの場合は、若手を正社員として、将来性を見込んで採用する場合とは違って、これまでの経験を、いかに今の環境に活かしてもらうかということが重要な観点になりますし、これまでの経験に対するプライドの高さや柔軟性の少なさといった、年齢特有の扱いづらさのようなものも往々にしてあります。
私もこれまでシニア人材の採用には何度もかかわってきましたが、その経験の中で言うと、シニアの場合は過去の経験との類似性が高い環境でなければ、フィットして力を発揮することがなかなか難しかったということがあります。
ただ、その当時は私自身が若かったこともあり、ただ単にシニア人材を活かすことに対する難しさを感じていただけでしたが、最近は自分自身がシニアの入口に差し掛かったところでもあり、そんな中で思うのは、自分自身でアジャストできる範囲が、年令とともに徐々に狭まってきているということです。
今まではあまり意識せずにできていた情報収集、環境順応、その他必要な学びも、若い時以上に意識的にやらなければ、いろいろなことにどんどんついていけなくなります。
なんでもかんでも先端を追い続ける必要はないにしても、意識を持って取り組まなければ、仕事上のごく普通のコンセンサスを得ることすら危うくなっていきます。
そんな年令的な特性を考えると、ここ最近の「シニア活用」に関する施策が、主に会社側の環境作りに力点が置かれているということも、それ自体は正しい方向なのだろうと思います。
そうは言っても、やはりシニア人材である本人が考えて努力しなければならないことは、間違いなくあります。
あくまで私の偏見ですが、「過去の経験だけに頼る、学ばない」「上から目線で、態度が尊大」「新しいものに興味がない、もしくは拒む」「自ら動かない」「細かいことは他人まかせ」といった人は、活躍の場が少ないです。
ただ、こんな話をすると、「私はそこまでして仕事する気はない」とか、「今さら新しいことまで取り組む気はない」というような話が出てくることがあります。なかなか難しいところです。
「シニア活躍」と一口に言いますが、そこで必要なことは、今持っている能力をいかに効率よく発揮してもらうかということであり、能力向上などを含んだ一般的な人材開発、人材育成とは違っています。
「本人がやるべきこと」「会社として取り組むべきこと」「両者で歩み寄って調整すべきこと」がそれぞれありますが、この点は普通の人材開発、人材育成と変わりません。
ただ、今のシニアに「本人がやるべきこと」を要求すると、「そこまでして仕事をする気はない」という人が大勢います。時間の使い方、お金の使い方の優先順位が若い頃とは違うので、勤労意欲の個人差が大きいです。一律に何かやれば、活躍するシニアが増えるというものではありません。
「シニア活躍」の環境作りは、今は「会社のやるべきこと」が中心になっていますが、これから先は「本人がやるべきこと」に対して、いかに本人が取り組むかということに移っていくと思います。
仕事を長く続けたいと考えるシニア予備軍は、今から「本人がやるべきこと」を考えておく必要があると思います。
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