短文投稿サイトのツイッター社を買収したイーロン・マスク氏が、長時間の激務を許容できないならば退職することを求めるメールを社員に送ったという話題がありました。
期限までにメールのリンクで「イエス」をクリックしなければ解雇することを示唆していて、それをしなかった社員には3カ月分の解雇手当を支払うとのことです。
マスク氏自身も猛烈な働き方をすることで知られており、全社員の約半数を解雇することや在宅勤務を認めないことなどと合わせて、社員が働く環境の急激な変化を進めようとしています。
もしこれと同じことが日本で起こったとすれば、そもそも法律的に許されないと思われる点も多いですし、かなり強い批判を浴びるでしょう。一言で言ってしまえばワンマンオーナーのブラック企業であり、個人的にはあまり働きたい会社と思えません。
しかし、少し視野を広げて海外の様子などを調べたり聞いたりしていくと、そんな感覚とは異なったいろいろな見解に触れることができます。
まずツイッター社が赤字体質であり、抜本的な組織改革を考えれば人員削減は避けられないという話があります。それをスピード感が最重要と考えて実行しようとすれば、誰が経営者でもこういうやり方にならざるを得ないのではないかと言われています。
それでもやり方が少し乱暴で一方的すぎるという人もいます。
これは、外資系企業の働き方に関して書かれていたものですが、外資企業の社長になった知人は、入社以来早朝7時から深夜22時までの勤務は当たり前だった一方で、無駄な会議などはなく何でも即断即決、社員の出張はトップクラスのホテルに泊まる決まりで実費精算、長期休暇は必ず取るように指導され、給料は同業他社の状況を調査して、その最上位を下回らない方針が示されていたそうです。かなり激務だったが会社への不満は一度も持ったことがなかったといいます。
日本では長時間労働やサービス残業の問題が取り上げられますが、実はそれ以外の給与水準や福利厚生、その他の働かせ方が貧弱なことの方が問題なのではないかとされていました。
また、他の指摘では、アメリカでは一部のエリートが、日本以上の過酷な環境で猛烈に働いて高収入を得られるが、その他大勢の人は仕事が激務でない代わりに、給料はほどほど、会社の都合で簡単に解雇されて不安定な人生を強いられるとしています。
これに対して日本では、サービス残業のような滅私奉公は相変わらずだが、正社員になれば簡単には解雇できない法律に守られて、能力が低くてもほどほどの安定した生活ができるとしています。
仕事の能力によって、どちらが良いかは違っているだろうし、今のような変化の激しい環境を考えると、人材流動性が高いアメリカのような社会の方が全体最適としては良いのではないかとされていました。
さらに、アメリカのマネジメント層は時間的なハードワークをするが、欧州ではポジションに関係なくみんなが定時で帰るような環境で、それができないのは能力がないと判断されるといいます。
また、社会全体が時間外になるような仕事を依頼しない認識を共有していて、お互い様でサービスをあきらめている、無駄なことをしないなど、仕事の効率化が進んでいるそうです。
私が以前見た調査結果で、働きたい国ランキングというものがあり、日本は残念ながらビリに近い下位でしたが、ここで上位なっていた国は激務だが給料が高いか、ワークライフバランスが整いつつも給料は一定以上の水準に達しているかのいずれかでした。
「激務が嫌なら退職を」という言葉を見ると、ずいぶん威圧的な感じで反感を持ってしまいますが、各国の状況や様々な意見を見ていると、無理強いではなく本人が納得し、相応の報酬や福利厚生が伴ったうえでの激務であれば、必ずしも悪とは言い難いように感じます。
自分のことに置き換えると、選択権のない一方的な激務には絶対に関わりたくありませんが、仕事内容や報酬、期間、その他環境や条件によって捉え方は変わってきます。
何を優先するかは人それぞれで、その選択の自由があることが最も重要なのではないかと思います。
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