ある会社でこんなことがありました。
多くの会社と同じく、次世代人材の育成が課題になっています。「候補者がいない」「成長が遅い」など、いろいろ理由が出てきますが、私から見るともう一つ上のレベルの仕事をやらせていないように見えます。
能力よりも少し上の仕事を経験させて、力量をストレッチしていく取り組みを続けなければ人材は育ちませんが、あまり権限委譲に積極的でない人たちが多いように感じます。
そのことを指摘すると、みんな「必要なことはわかっているのですが…」と考え込み、「でもまだ任せるのは早く感じる」「任せられない」といいます。でも自分たちの感覚よりはもう一歩進めて、「仕事を任せること」を意識していかなければ、人材は決して育ちません。
別の会社で、これとは反対の出来事がありました。
ある社員が、面談の中で「上司が自分に仕事を任せてくれない」といいます。自分でもできると思う顧客との商談や交渉などを、最後は上司がまとめる形になることが多く、「信用されていない」と感じてしまうそうです。ただ、本人の経験年数や性格、顧客とのかかわり度合いといったことを聞いていると、その状況に合わせて適切に任されているように思えます。本人の自己評価が少し過大なのか、それとも任されていないと感じてしまう何かがあるのか、詳しいことまではわかりません。
この「任せられない」と「任せてくれない」のせめぎあいは、多くの会社で見かけます。
本人が仕事を「任せてほしい」と思う気持ちは好ましいことであり、その気持ちをできるだけ満たしてあげることが良いとは思います。
その一方、過剰な負荷にならないようにフォローすることも当然必要で、どこまで任せてどこからフォローするかという線引きには難しさがあります。この点は上司の判断基準次第で、大胆な人も慎重な人もおり、一応できるだけ権限委譲を進めるべきという一般論はありますが、適正な判断基準を一概にいうことはできません。そのさじ加減が本人の気持ちと違っていると、場合によっては「任せてくれない」と感じてしまう可能性はあります。
「任せられない」と「任せてくれない」の対立を解決するには、結局は当事者の上司と部下が、お互いによく話し合って、お互いが歩み寄りながら対応していくしかありません。
任せてほしいという気持ちは大切ですが、任せられないことには「まだ早い」「まだ無理」など、何か必ず理由があります。任せてほしければこの上司の懸念を払しょくして、「任せても良い」「任せてみよう」と思わせなければなりません。
上司は権限委譲の意識をしっかり持つこと、部下は実績作りや日々のコミュニケーションなどから、信頼を得ていかなければなりません。
両者が歩み寄って認識を合わせていくことしか、解決方法はないように思います。
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