2013年10月21日月曜日

“立派過ぎる社長さん”の弊害?


“率先垂範”が大切なことは、いろいろな場面でいわれますが、これは少しそれに反するようなお話です。

その会社は非常に忙しく、仕事の拘束時間も長くなりがちな、俗にいう“キツイ”業界ですが、社長さんがとても立派な方なのだそうです。
誰よりも率先して働き、指示も的確で仕事ができる方です。口先だけのリーダーシップでなく行動も伴っています。誰よりも早く出社し、掃除などの雑用であっても他人だけに押し付けずに一緒にやります。社員たちによく声をかけ、よく人を褒めます。社外では慈善活動にもかかわるなど人格も素晴らしく、みんなに尊敬されるような方だそうです。

「こんな人のもとで働きたい!」という入社希望も多いなど、素晴らしい会社に間違いないのですが、実はこの会社には、 “メンタルダウン”を起こしてしまう社員が非常に多いという問題があります。
その理由として、業界的にも激務であるということとともにもう一つ、この立派過ぎる社長さんにも原因があるようです。

どんなことかというと、例えば、仕事がつらそうだったり行き詰まっている社員がいると、この社長さんは、「君ならできるよ。僕だってやって来れたんだから!」「大丈夫!チャレンジしてみようよ!」などと励ますのだそうです。確かに社長さん自身も努力しているし、率先して行動もしているし、人格も立派です。よくある話の「自分のことを棚に上げて」などと批判もできません。また、そんな社長さんから励まされれば、社員の立場で「いいえ、無理です」「つらいです」「できません」などとは、なかなか言えないでしょう。

リーダーが優れていて非の打ちどころがないがゆえに、周りで働いている社員たちもそのスーパーマンに合わせざるを得ない、要するに「弱音が吐きたくても吐けない」という環境になってしまっていたのだそうです。
自分はつらくても、もっと大変そうで、なおかつそれを実践しているな社長がいることで、とても弱音なんか吐けないから我慢するしかない・・・、そんなことを続けているうちに体と心が悲鳴を上げ、結局働く事ができなくなってしまう・・・、こんなことがあるようです。

この「弱音が吐けない環境」は、言いかえると「本音が言えない環境」となります。また、「自分の弱みが見せられない環境」でもあるでしょう。これはコミュニケーションが悪い組織、助け合いがない組織、ノルマが厳しい組織に起こっていることと、あまり変わらないことになってしまいます。

この社長さんにはまったく悪気はないのだと思いますが、しいていえば、自分は他の普通の人とはちょっと違うということ、多くの人はそんなに何でもできるものではないということの理解が足りないように思います。

行動的でリーダーシップがあって、率先垂範を実践している人格者の社長さん! ちょっとだけ周囲の人たちを見渡して、甘えることも許してあげてもらえれば・・・などと思います。


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