2015年1月12日月曜日

有休取得義務化の議論に感じた「モラル」と「ルール」の問題


企業に対して、従業員がいつ有給休暇を取得するかの時期指定を義務づけ、確実に取得させることを目指す労働基準法改正案が国会に提出されるのだそうです。ワーク・ライフ・バランスの実現を図る狙いだそうです。

従業員からの請求が前提となっていることが、取得率低迷の一因として、付与日数の一部の取得時期を、会社が指定して休ませることを義務付ける内容が議論されるようです。

一見すれば、今までより有給休暇の消化率を上げることにはつながりそうですし、従業員の立場からすれば悪い内容ではないようにも思えます。これが適正なワーク・ライフ・バランスを進める助けになるのであれば、それは良いことだと思います。
ただ、この議論から私が思ったのは、「モラル」と「ルール」の問題です。

ここでいう「モラル」とは、目指すべき中心点のことを言っており、目指す理想に近ければ近いほどモラルは高く、離れれば低いということです。
一方で、、「ルール」というのは、中心点からこれ以上離れてはいけないという境界線のことで、これを超えたらNGという限界を指しています。

今回の議論では、作ろうとしているのはあくまで「ルール」であり、本来あるべき姿ともいえる「モラル」を高めようとはしていない気がするのです。

「ルール」というのは、それを設けると、その境界線ぎりぎりで動こうとする者が多くなる傾向があります。ルールの抜け道を探したり、どこまでなら許されるのかというラインを探そうとしますが、これは本来あるべき姿である「モラル」からは、離れることを容認するものです。

「ルール」を強調すると「モラル」を軽視し始め、「ルールさえ守っていれば問題ない」となり、本来あるべき姿に近づける努力をしなくなります。また、「ルール」が増えると手続きも増え、様々な部分で組織の効率が落ちます。

有休所得に関しての“本来あるべき理想の姿”を考えると、従業員は自分の都合に合わせて休暇を取得でき、会社は誰かが休んだとしても、業務に滞りをきたさず、業績にも悪影響を与えないという状態ではないかと思います。
ただ、今回のような「ルール」を作ることだけでは、きっと抜け道探しや、中にはルール無視という話が横行しそうな気がします。

有休取得が進まない原因は様々考えられます。属人的な作業環境、お互いの業務を補完する体制の不足、休みを取りづらい雰囲気などが良く言われますが、これらを解決する方法は、単なるルール化ではありません。

当面のルール作りの必要性は否定しないものの、その先の「モラル」を高めるためのシナリオ作りも、同時に行うことの必要性を感じます。

今回の議論が、良い意味での初めの一歩になることを望みます。


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