2015年6月10日水曜日

「脳科学から見た様々な差」に関する話から


つい先日の新聞記事で、脳科学者の中野信子さんのインタビュー記事が掲載されていました。
興味深い研究結果が多数語られていて、例えば男女の差についてでは、「脳の左耳上あたりに『上側頭溝』というコミュニケーション能力をつかさどる器官があり、男女で比べると女性が大きく、話をしたり、空気を読んだりという気質は、女性の方が高いと言える」のだそうです。

インタビューしている記者が「自分のまわりの男性には、空気を読みそうな人が多いが?」と尋ねると、「新聞社の男性はマス“コミュニケーション”がなりわいなので、他の職業に比べると、空気を読める人が多く偏って存在するのでは」とのこと。
「科学研究はなるべく偏らないサンプルを多数取って、『男性全体と女性全体で比べると平均的にこう違う』と統計的にデータを評価する」のだそうです。

一連のお話の中で興味深かったこととして、一つは神経伝達物質のセロトニン分泌の男女の違いで、「セロトニンの合成能力は、男性が女性より52%高い」とのことで、「セロトニンが多いと安心感を覚え、減ると不安になりやすいので、将来予測をすると、男性よりも女性の方が暗く厳しくなる傾向がある」のだそうです。

個人をみれば、男性でも慎重な人はいますし、女性でも不安を持たずに挑戦する人がいますが、一般的には男性はイケイケで投資志向、女性は慎重で保守的ということになるようです。

もう一つは、「セロトニンを有効利用しやすい遺伝子の組み合わせを持つ人は、日本人では3%、米国人では32%」という研究結果があるそうです。セロトニンが多いと不安感情が和らぐので、リスクがあっても怖がらず、米国人は日本人の約10倍も挑戦的な人がいると推察されるのだそうです。
日本は、地震のような激甚災害が多いなどということで、慎重な人の方が生き延びる確率が高く、米国人は、リスクを冒して移民した人が多く、セロトニンをうまく使える人の比率が高かったのではないかということでした。

ここから見ると、日本人にはベンチャー企業は難しく、日米間にある起業率の差には、こんな要因もあるかもしれないということです。反対に、日本人は一度生まれた企業を大切に育てて、長く生かしていくことには、向いているかもしれないということでした。

他にも興味深い話がいろいろ出ていましたが、私がこのような脳科学に興味を持つのは、今まで多くの人材や組織を見てきた中で、人に関して感覚的に思っていた傾向と、脳科学的な知見で合致するものが多かったということです。

また、最近の人事、人材開発の世界では、脳科学や心理学のような、科学的知見を取り入れて行こうという方向性があります。個人を細やかに見極めることとともに、研修プログラムやキャリアプラン、組織内の役割、配置といったことに、科学的知見を活かして、より効果を高めて行こうということです。

中野先生も繰り返しおっしゃっていますが、こうした見方はあくまで平均値を統計学的に分析したものであって、個人の努力や個性を否定するものではありません。一般的な傾向や平均的な枠に当てはまらない人はたくさんいるでしょう。
しかし、感覚や都市伝説のような話では、ただのレッテル貼りになりますが、科学的知見があれば、それは一つの根拠になり得ます。

人事、組織という役割で、多くの人と接する上では、脳科学や心理学を理解しておくことは、これからますます必要になってくるのではないかと思います。
感覚を科学と突き合わせることは、自分なりの根拠を得るためにも大事なことだと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿