2017年8月7日月曜日

「上司に言われてどっと疲れが出る一言」を、言った自覚が上司にあるか



養命酒製造株式会社が、「東京で働くビジネスパーソンの疲れの実態」というテーマでおこなった調査の中で、上司の一言で疲れが倍増したと感じた経験を聞いたところ、そういう経験があると答えた人は50.1%と約半数という結果だったという記事がありました。

そのセリフで最も多かったのは「常識でしょ/当たり前でしょ」で13.6%、次いで「そんなこともできないの?」が12.6%、「前にも言ったよね?」と「自分で考えてやれ&勝手にやるな」がともに 12.0%で続いたそうです。
上司の知恵や経験に頼りたいときに「常識」の一言で突き放されたり、うまくできないことや覚えていないことを嫌味のように問い詰められたりして、疲れが増すような思いをした人が少なくないようです。
挙がっている言葉を見ると、いかにも上司が嫌味や皮肉を込めて言いそうな言葉ばかりで、この結果を見て、多くの人が「そうそう」「あるある」と言っているのではないでしょうか。

調査によれば、部下の二人に一人がこういう経験しているということで、それを単純に置き換えると、上司の二人に一人は部下にそういう言葉を投げかけているということになります。この結果を見た上司はどう思うのかが気になりますが、たぶん部下の出来が悪い、仕事ぶりが悪いなど、それなりに言い分はあるのでしょう。

ただ、ここで気を付けなければいけないのは、多くのビジネスパーソンは、「上司の立場と部下の立場の両面を持っている」ということです。会社の中で上司がいないのは社長だけ、部下がいないのは新入社員だけですから、他の人はすべてがこの両面を持っています。

挙げられている言葉は、誰から見ても励ましや元気づけ、アドバイス、育成のニュアンスがなく、あるのは嫌味、皮肉、罵倒、ののしりのようなものばかりです。部下の立場で聞いたら明らかに気持ちを萎えさせる言葉で、それは確実に不快なものであるはずです。
しかし、部下の二人に一人が経験したということは、同じ人が上司の立場になったときに、それを言っている人が大勢いるということになります。
それは、そんな自覚がないままで部下や後輩にそういう言葉を投げかけているなど、自分の言動の問題に気づいていない上司先輩がたくさんいるということです。「自分がされたら嫌なことは他人にもするな」というのは、小さな子供相手にもいうことですが、それができていないということです。

なぜそんな基本的なことができないのか、はっきり言い切るのは難しいですが、考えられるのは上司先輩の側の、心の余裕などの心理的な問題です。人のことまで気にかける余裕がなくなり、それが雑な対応や態度になり、ヒエラルキーとして下になる部下や後輩の扱いに影響しているということです。

こういう言葉があたえる気分に関することは、組織マネジメントの中では些細なことと思う人もいるかもしれません。しかし、このようなメンタルに関わることというのは、なかなか数値化して見えないためにあまり表立った問題にはなりませんが、実はかなり重要なことです。

起こっていることを突き詰めると、「上司からのフォロー不足」が、全階層的につながっているということになりますが、これを解決するにはいろいろな取り組みが必要です。会社全体の環境作りも、適切な目標設定も、社員が心の余裕を持てるような取り組みも、本当にいろいろです。

もしも上司の一言で「あーあ・・・」と心が折れて、手が止まりがちになる時間が仮に一日たった5分でもあったとして、それが社員の半数に波及していると考えたら、やはりこれは大きな問題ではないでしょうか。
いずれにしても、上司が部下にかける言葉は、注意を払わなければいけません。




<追記>
本文掲載後、内容が「部下から目線の一方的な内容に思えた。そのセリフに至るまでの経緯に着目すべきではないか」とのコメントを頂きました。
今回お伝えしたかったのは、上司と部下、お互いが相手の立場も考えて発言すればやる気を失うような発言は減り、もっといい関係が築けるのではないかということでしたが、部下からのアンケート結果を題材にしたこともあり、上司批判のニュアンスが強く感じられてしまう表現になっていたかもしれません。
みんな両面の立場があるとは言っても、管理職は部下に向き合って苦労している場面が圧倒的に多いので、「上司にもどっと疲れが出る一言がある」という点には配慮が足りなかったと反省しています。
 あくまで上司批判の意図はなく、お伝えしたかった相互尊重という主旨をご理解いただければ幸いです。

2 件のコメント:

  1. 興味深く読ませて頂きました。私は中間管理職ですが、大事な事は”対人間”だという事だと思います。今回の記事は部下から目線のの一方的な内容に思えてしまいました。そのセリフに至るまでの経緯に着目すべきかと。
    例えば私の場合、同じ失敗を二度した部下に対し「前にもいったよね?」といった事はありませんが、二度、三度同じミスをし、毎回指導しているにも関わらずまた繰り返した四度目の時には決して嫌味とかではなく、聞いているかいないかの確認の「前にもいったよね?」とつい。
    真剣に指導する日々に対し部下の無責任な仕事ぶりに”どっと疲れて”しまったのです。
    気遣い、思いやりを常に持ち日々指導にあたろうと心がけていますが、言われる経緯がどんなものだったのかも明確にせず、一方的な内容は少し不快に感じました。
    気を長く持ち、かける言葉に注意するよう日々精進ですね

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    1. この度はコメントありがとうございます。
      今回お伝えしたかったのは、上司と部下、お互いが相手の立場も考えて発言すればやる気を失うような発言は減り、もっといい関係が築けるのではないかということでしたが、部下からのアンケート結果を題材にしたこともあり、上司批判のニュアンスが強く感じられてしまう表現になっていたかもしれません。
      みんな両面の立場があるとは言っても、管理職は部下に向き合って苦労している場面が圧倒的に多いので、「上司にもどっと疲れが出る一言がある」という点には配慮が足りなかったと反省しています。
      頂いたコメントに関して、多少言い訳となりますが本文最後に追記させて頂きました。ここでお伝えしたかった主旨についてはご理解いただければ幸いです。
      この度はご指摘ありがとうございました。

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